Vol.335 キム・スロ舞台に初参上!『イ・ギドン体育館』 [韓国俳優]
2010年12月31日から2011年2月26日にかけて、서울、東国大学構内にある이해랑芸術劇場で演劇『イ・ギドン体育館/이기동 체육관』の公演が行われた。
この企画最大の目玉は、キム・スロ(=김수로)にとっての初舞台ということだろう(真実か否か定かではないけど)。
キム・スロもまた、1999年から2000年代初頭にかけてスターになった個性派俳優の一人である。
近頃では『ドラゴン桜』の韓国ドラマ版『공부의 신』で主演を務めていたので、日本でも結構、知名度はあると思う。
彼がブレイクするきっかけになったのは、やっぱり『注油所襲撃事件/주유소 습격사건/アタック・ザ・ガスステーション!』だと思うが、その後、映画でたくさんの脇や準主役をこなし、遂には主演級まで登りつめた。
ただ、脇役としては非常に魅力がある俳優なんだけど、主演級のキャラではないと思っているので、無名時代から彼を応援していた立場からいうと、最近の芸能界におけるステイタスはあまり嬉しくない(そこら辺はイ・ボムスにも共通する)。
演技スタイルは一定というか、世間から求められるパターンをこなしているタイプに見え、それはそれでファンサービスに応えるプロとしての立派な姿勢ではあるのだけど、もっと異なった側面もまた見せて欲しい俳優の一人でもある。
逆に、いまさら『シュリ』なんかを見直すと、当時の若々しさとキャラを表に出さない役どころが新鮮だったりするので、皮肉な気もするのだった。
今回、公演が行われた이해랑芸術劇場は、駅を出てエスカレーターで上り、大学敷地に入ってすぐのところにあった。
見た目は小さいが、中は結構広くて立派な劇場だ。
私が行った日は12月31日初日で、キム・スロ目当てのファンがいっぱい来ているか否か、ちょっと興味があったのだが、あんまりそういう人が来ているようにも思えず、どちらかといえば業界関係者絡みの人々の姿が目立ち、一種のお披露目会のような印象、なにやら熱気も低い。
座席も満席とはいえない状態で、見た目の印象はよくて8割程度。
そんなに入りが悪いわけでもないのだろうけど、スター初出演の初日舞台にしては、なにやら寂しい気もした。
舞台セットはかなり大掛かりで、よくある抽象的・象徴的なものではなく、ボクシング体育館をまんま再現した、映画かテレビのセットのような作りだ。
やや白けた空気が漂う中、舞台は唐突に幕を開ける。
本編とは関係なく、MCによる前説が始まるが、これが結構長い。
大晦日の初日、ということもあるだろうけど、さっそく彼は客いじりを始めた。
「みなさん、どこからいらっしゃったんのですか?」という問いに、私の後ろの男性が「釜山から来ました」と元気よく答えると「大晦日なのにたった独りで?」とおちょくられる。
前方S席には「大阪から来ました」という女性がいて、「えー、そうなんですか!皆さん、拍手!」続けて「テーハンミンググ、チャ、チャ、チャ」と手拍子でおちょくられる。
果たしてこれが仕込みかどうか判然としないが、ちょっと不愉快になる。
ちなみに本編でも「竹島じゃなくて、独島だ!」というギャグがあって、いつもの定番とは思いつつも、いつまでこういうネタを公共の場でやるんだよ、とも思うのだった(日本の演劇で「独島じゃなくて、竹島だ!」なんてやったら、どうなることやら)。
やがて長い前説とオープニングが終わり、早々にノソっとキム・スロが登場する。
彼は働きながらボクシングジムに通う朴訥な青年役で、なかなか適役に見えたが、正直いうとタイトロールには程遠く、スペシャル・ゲスト的な印象が免れない役でもあった。
出番はそれなりに多いのだけど、物語のフォーカスはあくまでボクシングジムに集う人々のドラマだ。
途中、キム・スロは全然出てこなくなったりして、おそらく公演を運営する側は彼の扱いに、かなり気を使っていたような印象を強く受けた。
戯曲そのものは血湧き肉踊る、といったエンタティメントではなくて、暗くグチグチしている芝居が延々と続き、結構シンドい。
それなりのパフォーマンスを魅せる部分もあるが、ドラマの部分は総じて退屈至極。
もちろん言葉の壁も大きいのだけど、それを理由にすべきではないだろう。
魅せる舞台は言語なんて関係ないのだから。
途中観ていてハタッと気がついたことがあった。
舞台設計に、演出をする上での大きな問題があるのでは?という疑問だ。
横長の舞台にデデーンとフルセット作ってしまったばかりに、芝居をやる領域がカミテとシモテに視覚上、真っ二つになってしまっている。
しかも、芝居を片方に絞ってやっていればいいのだが、両方でやっているから、非常に見づらく集中し辛い。
セットをもっと中央に配し、美術も簡素にして俳優の芝居を集約しないと、無駄な情報量ばかりが増えてしまってダメ、という見本かもしれない。
さて、肝心のキム・スロだが「無難」という域は超えず、残念ながらあまり感銘はうけなかった。
長尺の台詞と難しいアクションをミスなくこなし、それなりに見せてくれていたから、決して悪くはない。
でも華が無く、とにかく地味、演じた役そのまんま、という感じだ。
映画でのキム・スロは、いつもあざといキャラばかり演じているけれど、地は寡黙で大人しい性格なんじゃないかといつも感じていたのだが、今回の舞台でその印象をさらに強くした。
でも、この華の無さ、地味さは彼のキャリアに決してマイナスではないだろう。
逆に「個性派」というステレオ化された世間の看板をブチ壊す、よいきっかけになってくれれば、とも思う。
劇が終了すると、初日のサービスなのか、出演者と観客の記念撮影会が始まった。
でも、キム・スロだけがいない。
それが一番残念なことだった。
私にとっても、他の観客にとっても…
この企画最大の目玉は、キム・スロ(=김수로)にとっての初舞台ということだろう(真実か否か定かではないけど)。
キム・スロもまた、1999年から2000年代初頭にかけてスターになった個性派俳優の一人である。
近頃では『ドラゴン桜』の韓国ドラマ版『공부의 신』で主演を務めていたので、日本でも結構、知名度はあると思う。
彼がブレイクするきっかけになったのは、やっぱり『注油所襲撃事件/주유소 습격사건/アタック・ザ・ガスステーション!』だと思うが、その後、映画でたくさんの脇や準主役をこなし、遂には主演級まで登りつめた。
ただ、脇役としては非常に魅力がある俳優なんだけど、主演級のキャラではないと思っているので、無名時代から彼を応援していた立場からいうと、最近の芸能界におけるステイタスはあまり嬉しくない(そこら辺はイ・ボムスにも共通する)。
演技スタイルは一定というか、世間から求められるパターンをこなしているタイプに見え、それはそれでファンサービスに応えるプロとしての立派な姿勢ではあるのだけど、もっと異なった側面もまた見せて欲しい俳優の一人でもある。
逆に、いまさら『シュリ』なんかを見直すと、当時の若々しさとキャラを表に出さない役どころが新鮮だったりするので、皮肉な気もするのだった。
今回、公演が行われた이해랑芸術劇場は、駅を出てエスカレーターで上り、大学敷地に入ってすぐのところにあった。
見た目は小さいが、中は結構広くて立派な劇場だ。
私が行った日は12月31日初日で、キム・スロ目当てのファンがいっぱい来ているか否か、ちょっと興味があったのだが、あんまりそういう人が来ているようにも思えず、どちらかといえば業界関係者絡みの人々の姿が目立ち、一種のお披露目会のような印象、なにやら熱気も低い。
座席も満席とはいえない状態で、見た目の印象はよくて8割程度。
そんなに入りが悪いわけでもないのだろうけど、スター初出演の初日舞台にしては、なにやら寂しい気もした。
舞台セットはかなり大掛かりで、よくある抽象的・象徴的なものではなく、ボクシング体育館をまんま再現した、映画かテレビのセットのような作りだ。
やや白けた空気が漂う中、舞台は唐突に幕を開ける。
本編とは関係なく、MCによる前説が始まるが、これが結構長い。
大晦日の初日、ということもあるだろうけど、さっそく彼は客いじりを始めた。
「みなさん、どこからいらっしゃったんのですか?」という問いに、私の後ろの男性が「釜山から来ました」と元気よく答えると「大晦日なのにたった独りで?」とおちょくられる。
前方S席には「大阪から来ました」という女性がいて、「えー、そうなんですか!皆さん、拍手!」続けて「テーハンミンググ、チャ、チャ、チャ」と手拍子でおちょくられる。
果たしてこれが仕込みかどうか判然としないが、ちょっと不愉快になる。
ちなみに本編でも「竹島じゃなくて、独島だ!」というギャグがあって、いつもの定番とは思いつつも、いつまでこういうネタを公共の場でやるんだよ、とも思うのだった(日本の演劇で「独島じゃなくて、竹島だ!」なんてやったら、どうなることやら)。
やがて長い前説とオープニングが終わり、早々にノソっとキム・スロが登場する。
彼は働きながらボクシングジムに通う朴訥な青年役で、なかなか適役に見えたが、正直いうとタイトロールには程遠く、スペシャル・ゲスト的な印象が免れない役でもあった。
出番はそれなりに多いのだけど、物語のフォーカスはあくまでボクシングジムに集う人々のドラマだ。
途中、キム・スロは全然出てこなくなったりして、おそらく公演を運営する側は彼の扱いに、かなり気を使っていたような印象を強く受けた。
戯曲そのものは血湧き肉踊る、といったエンタティメントではなくて、暗くグチグチしている芝居が延々と続き、結構シンドい。
それなりのパフォーマンスを魅せる部分もあるが、ドラマの部分は総じて退屈至極。
もちろん言葉の壁も大きいのだけど、それを理由にすべきではないだろう。
魅せる舞台は言語なんて関係ないのだから。
途中観ていてハタッと気がついたことがあった。
舞台設計に、演出をする上での大きな問題があるのでは?という疑問だ。
横長の舞台にデデーンとフルセット作ってしまったばかりに、芝居をやる領域がカミテとシモテに視覚上、真っ二つになってしまっている。
しかも、芝居を片方に絞ってやっていればいいのだが、両方でやっているから、非常に見づらく集中し辛い。
セットをもっと中央に配し、美術も簡素にして俳優の芝居を集約しないと、無駄な情報量ばかりが増えてしまってダメ、という見本かもしれない。
さて、肝心のキム・スロだが「無難」という域は超えず、残念ながらあまり感銘はうけなかった。
長尺の台詞と難しいアクションをミスなくこなし、それなりに見せてくれていたから、決して悪くはない。
でも華が無く、とにかく地味、演じた役そのまんま、という感じだ。
映画でのキム・スロは、いつもあざといキャラばかり演じているけれど、地は寡黙で大人しい性格なんじゃないかといつも感じていたのだが、今回の舞台でその印象をさらに強くした。
でも、この華の無さ、地味さは彼のキャリアに決してマイナスではないだろう。
逆に「個性派」というステレオ化された世間の看板をブチ壊す、よいきっかけになってくれれば、とも思う。
劇が終了すると、初日のサービスなのか、出演者と観客の記念撮影会が始まった。
でも、キム・スロだけがいない。
それが一番残念なことだった。
私にとっても、他の観客にとっても…
(追加公演情報/2011.4月現在) ☞2011/04/22 ~ 2011/04/24
MBC 롯데아트홀(부산시) ☞2011/05/07 ~ 2011/05/08
대구학생문화센터 대공연장(대구시)
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