Vol.346 教大駅を行く Part①/駅前編 [韓国生活]
ソウル・明洞から南東に約8キロ、江南からだと北に約1.3キロのところに位置する、地下鉄3号線「教大駅」。
日本では馴染みのない場所だが、私にとっては新林洞周辺と共に忘れられない街角の一つである。
南部循環路に乗れば通りすぎてしまう半端な地域ではあるけど、私は少しだけここに住んでいたことがあった。
これといって特色がないのが特色だが、閑静で住みやすいところだ。
行政区域からいえば瑞草区、同じく3号線「南部ターミナル駅」と4号線「瑞草駅」は眼と鼻の先で徒歩圏内だ。
ついでにいえば、3号線「良才駅」も近い。
ということは4号線「江南駅」も遠くない、ということになる。
だが、ここら辺を「江南地区」とはあまり言わない。
「教大駅」のランドマークといえば、そのまま「国立ソウル教育大学校」だが、それよりも有名なのが「大法院」とよばれるソウル高等裁判所の巨大な異形だろう。
さらに昔に遡れば、1995年に崩落事故を起こした三豊デパートの最寄り駅だったのも「教大駅」だ。
日本の怖い人たち御用達といわれる「盤浦射撃場」も近い。
西側「瑞草駅」方向に抜ければ盤浦大路に行き当たり、巨大な「芸術の殿堂」が南側に鎮座している。
ここら辺は基本的に住宅地だが小さな会社が沢山あって、そこで働く人達で昼や夜に食堂が賑わう。
「教大駅」で有名なのはコプチャンだが、肉料理関係が昔から充実していて老舗も多く何気で隠れたグルメの街角だったりする。
商業施設が乏しいので買い物がイマイチ不便だが、江南方面には巨大なショッピングセンターが幾つもあるので、車を持っている人には大した問題ではない。
「教大駅」は地下鉄の要所なので、どこに抜けるにも便利だし、街も上品だが庶民的でもあり、ほどほどに高級さと貧乏臭さが混じり合っている。
東京で言えば、渋谷区の桜丘~並木橋~東~恵比寿辺りに雰囲気が近い。
それはある冬の日だった。
たまたま時間が出来たので、久しぶりに「教大駅」に行ってみようと思いつく。
ここら辺は4~5年くらい訪れていなかったので、かつてお世話になっていた下宿がいまどうしているか、知りたかったからだ。
地下鉄を降りて地上に出ると基本的には変わっていない印象だ。
だが、街がどことなく寂れて小さくなってしまった感じがした。
新しい商業ビルが幾つも建ち、以前の庶民的な趣は大分薄くなった。
しかし、高熱を出した時にお世話になった薬局はそのままだし、時折、芸能人が訪れるという有名なコプチャン屋は相変わらず繁盛している。
裏通り角にある中国料理屋も昔と同じ佇まいだ。
だが、裏通りに入って見れば「グルメ街」だった界隈は、かなり様子が激変している。
多彩な焼肉料理屋は軒並み姿を消し、全体的に凡庸な飲み屋が増え、つまらない店ばかりだ。
当時鳴り物入りで新築された立派な三階建てくらいの牛カルビのお店が、建物ごと消えて無くなっているのには驚いた。
よく通ったコンビニもカットしてもらった美容院も既にない。
逆に生鱈スープのお店は場所を移し、巨大化している。
「つまらない飲み屋街」に変貌した裏通りを過ぎて、下宿があった場所へと向かう。
横道に入り、坂を登ればすぐだ。
その下宿は教会の中にあって、管理人がまめでいつも清潔に保たれており、住人も社会人ばかりで住みやすかった。
食事付き、洗濯付きにも関わらず、毎月の家賃が信じられないくらい激安で、当時もそうだが今のソウルではこういう好条件の下宿はもうないだろう。
だが、坂を登ったところにあるその教会がすでに姿を消して久しいことを知り愕然とする。
正確に言えば教会の建物を基盤にして大改装が行われ、珍妙なオフィスビルに変貌していたのだ。
メジャーな宗教施設が消えた、という事実も驚きだったが、立派な教会を無理な改装でヘンテコリンなビルにして再利用しているのも合理的を超えて驚きだった。
教会周辺に幾つかあった被服関連の会社は新しいビルに変わり、看板からするとデジタル系の会社っぽい。
教会があった場所から真っ直ぐ瑞草方面に進むと盤浦大路に出る。
途中にあるムクゲ印のふぐ料理屋はそのままで、相変わらず繁盛しているようだが、残念ながら入ったことはない。
通りに出ると、そこの風景もまた、激変しているのだった…
(続く)
日本では馴染みのない場所だが、私にとっては新林洞周辺と共に忘れられない街角の一つである。
南部循環路に乗れば通りすぎてしまう半端な地域ではあるけど、私は少しだけここに住んでいたことがあった。
これといって特色がないのが特色だが、閑静で住みやすいところだ。
行政区域からいえば瑞草区、同じく3号線「南部ターミナル駅」と4号線「瑞草駅」は眼と鼻の先で徒歩圏内だ。
ついでにいえば、3号線「良才駅」も近い。
ということは4号線「江南駅」も遠くない、ということになる。
だが、ここら辺を「江南地区」とはあまり言わない。
「教大駅」のランドマークといえば、そのまま「国立ソウル教育大学校」だが、それよりも有名なのが「大法院」とよばれるソウル高等裁判所の巨大な異形だろう。
さらに昔に遡れば、1995年に崩落事故を起こした三豊デパートの最寄り駅だったのも「教大駅」だ。
日本の怖い人たち御用達といわれる「盤浦射撃場」も近い。
西側「瑞草駅」方向に抜ければ盤浦大路に行き当たり、巨大な「芸術の殿堂」が南側に鎮座している。
ここら辺は基本的に住宅地だが小さな会社が沢山あって、そこで働く人達で昼や夜に食堂が賑わう。
「教大駅」で有名なのはコプチャンだが、肉料理関係が昔から充実していて老舗も多く何気で隠れたグルメの街角だったりする。
教育大学正門
商業施設が乏しいので買い物がイマイチ不便だが、江南方面には巨大なショッピングセンターが幾つもあるので、車を持っている人には大した問題ではない。
「教大駅」は地下鉄の要所なので、どこに抜けるにも便利だし、街も上品だが庶民的でもあり、ほどほどに高級さと貧乏臭さが混じり合っている。
東京で言えば、渋谷区の桜丘~並木橋~東~恵比寿辺りに雰囲気が近い。
それはある冬の日だった。
たまたま時間が出来たので、久しぶりに「教大駅」に行ってみようと思いつく。
ここら辺は4~5年くらい訪れていなかったので、かつてお世話になっていた下宿がいまどうしているか、知りたかったからだ。
地下鉄を降りて地上に出ると基本的には変わっていない印象だ。
だが、街がどことなく寂れて小さくなってしまった感じがした。
新しい商業ビルが幾つも建ち、以前の庶民的な趣は大分薄くなった。
出入口14番を出た辺り
しかし、高熱を出した時にお世話になった薬局はそのままだし、時折、芸能人が訪れるという有名なコプチャン屋は相変わらず繁盛している。
裏通り角にある中国料理屋も昔と同じ佇まいだ。
だが、裏通りに入って見れば「グルメ街」だった界隈は、かなり様子が激変している。
多彩な焼肉料理屋は軒並み姿を消し、全体的に凡庸な飲み屋が増え、つまらない店ばかりだ。
当時鳴り物入りで新築された立派な三階建てくらいの牛カルビのお店が、建物ごと消えて無くなっているのには驚いた。
よく通ったコンビニもカットしてもらった美容院も既にない。
逆に生鱈スープのお店は場所を移し、巨大化している。
異形を誇る大法院のツインタワー
「つまらない飲み屋街」に変貌した裏通りを過ぎて、下宿があった場所へと向かう。
横道に入り、坂を登ればすぐだ。
その下宿は教会の中にあって、管理人がまめでいつも清潔に保たれており、住人も社会人ばかりで住みやすかった。
食事付き、洗濯付きにも関わらず、毎月の家賃が信じられないくらい激安で、当時もそうだが今のソウルではこういう好条件の下宿はもうないだろう。
だが、坂を登ったところにあるその教会がすでに姿を消して久しいことを知り愕然とする。
正確に言えば教会の建物を基盤にして大改装が行われ、珍妙なオフィスビルに変貌していたのだ。
メジャーな宗教施設が消えた、という事実も驚きだったが、立派な教会を無理な改装でヘンテコリンなビルにして再利用しているのも合理的を超えて驚きだった。
教会周辺に幾つかあった被服関連の会社は新しいビルに変わり、看板からするとデジタル系の会社っぽい。
教会があった場所から真っ直ぐ瑞草方面に進むと盤浦大路に出る。
途中にあるムクゲ印のふぐ料理屋はそのままで、相変わらず繁盛しているようだが、残念ながら入ったことはない。
通りに出ると、そこの風景もまた、激変しているのだった…
(続く)
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