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Vol.399 映画化希望!『에어로빅 보이즈』 [韓国カルチャー]

 2012年8月15日から19日まで、大学路にある대학로예술小劇場『제2회 대학로 코미디페스티벌』枠内で限定上演された『에어로빅 보이즈』は、非常に可能性に満ちた演劇である(初演は2011年の11月)。

 대학로예술劇場は大学路でも大きな方で、公演が行われた地下にある小劇場も結構広い。
 フラットな作りで、舞台と客席に段差がなく、奥行きもある。
 関係者割引でチケット確保してもらった座席は、最前列ながらも一番右端という、首が痛くなる場所だったが、だいぶ安くしてもらったので、贅沢はいえない。

 大学路の演劇は日本に比べてチケットが大分お安く、カジュアルに観に来ることができるという点で魅力的なのだが、大きな劇場だとそれなりに高くなるし、最近の物価高も影響して、以前ほど、お得感がなくなってしまったことは、ちょっと残念である。

 物語は、今の韓国を非常に反映した内容だ。
(STORY)
 ライブで演奏活動を続けるヘビメタ四人組최대환(=김동현)、차근호(=김승환)、노웅기(=조영빈)、이승범(=이우진)だったが、既に中年、最近体力が激減して「FUCK、FUCK」な演奏もキツくて仕方ない。
 そろそろ、カタギの人生も考えて行かなくてはいけない時期にさしかかってもいた。

 彼らの面倒を観ているライブハウス経営者、通称“BOSS”(=선욱현)も、かつてはミュージシャンとして鳴らした人物だ。
 彼は不良中年四人組の兄貴分であり、良き理解者でもあったが、経営が苦しい故、フィットネスクラブへ商売を衣替えすることになる。

 BOSSのお情けで、従業員として雇われた四人組だったが、いい歳をして社会性ゼロ、仕事に身は入らず、トラブルばかり起こしている。

 だが、BOSSには勝気で、しっかり者の娘초롱(=박초롱)がおり、彼女はだらしないオヤジ4人組を叱咤激励してリードして行く。
 そこに常連客のおばさん、순옥(=황석정)がメンバーに加わり、エアロビクス全国大会出場を目指すことになる。
 だが、その矢先、彼らの元に届いたのは、BOSSの急死という悲報だった…
 舞台はのっけから、ド派手なヘビメタ演奏のシーンから始まり、全編1970年代ロックの名曲に載って、ドラマは進んでゆく。

 一応コメディではあるが、戯曲の根底にあるのは「挫折からの再生」と「奈落を超えて、どう未来へ繋げるか?」というシリアスなテーマだ。

 韓国の戯曲らしく、とても「ベタ」だが、基本的は乾いており、自分たちの夢を貫けなかった中年オヤジたちが、アイデンティティの危機をどう乗り越えてゆくか、という姿は、日本人にも十二分に共感できる内容になっている。

 描かれるミュージシャン4人組のダメぶりは、そのまま日本を舞台に移し替えても何ら違和感がないものだが、こういう物語が成り立つことは、ここ二十年くらいで韓国の生活が、かなり変わったことの象徴にも見えるし、実際、十年前では、成り立たなかった物語ではないか?

 生活が豊かになり、サブカルチャー分野で夢を羽ばたかせることが出来る可能性が出てきた反面、まだまだ足腰が脆弱な韓国社会を象徴しているようにも見えるし、日本も韓国も、夢に身を託して生きることのリスクは大して変わらない現実を描いているようにも思える。

 この作品、もう一つの見所は、音楽演奏やエアロビクスなど、出演者たちが実演していることだろう。
 皆、そつなくこなしているが、リハーサルが大変だったことは想像に難くない。  しかし、それぞれのパフォーマンスが実に巧みで、演劇を主軸にして活動している俳優たちの技量を高さを伺わせるものだった。

 劇中、四人組の兄貴分であるBOSSは急死するが、その死を象徴する演出も非常に印象的である。
 観客席から笑いが起こってもいたけれど、KISSばりのメイクと衣装で、彼岸を象徴する原っぱで独りベースを掻き鳴らすBOSSの姿は、シュールであり、独特の死生観に満ちた一幕だ。

 最後は、エアロビクス大会でオヤジ4人組と초롱、순옥が大パフォーマンを繰り広げ、栄光を勝ち取って幕を閉じる。
 それは、率直で分かり易い、という点で、韓国演劇の良さを見直すラストでもある。

 今まで韓国の演劇を観て、日本に舞台を移したり、映画化してもイケる、と思う作品に出会ったことはなかったのだけども(というか、そんなに観ている訳ではないが)、この『에어로빅보이즈』は「イケる!」思った、最初の作品でもあった。

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