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Vol.524 サムゲタン考 [韓国の食]

 日本でポピュラーになった韓国料理に参鶏湯(サムゲタン)がある。
 昔から知っている人は知っていた料理ではあるが、「キムチ、焼き肉、参鶏湯」と並んで日本で語られるようになったのは割りと最近のことなのではないだろうか?

 日本のネットでこの参鶏湯についての評価を調べて見ると「美味しい!最高!大好き!」という意見と、「激まず!ゴミ!臭くて食えたもんじゃない!」という風に賛否両論真っ二つに分かれているようだ。

 日本でも韓国の焼酎モドキを絶賛する人がいるくらいだから、参鶏湯を好きな人がいるのはなんらおかしくないし、嗜好は個人の自由だから別にいいのだけど、これが二十年前ならどういう評価になっていたのだろうか?
 たぶん、こんなにウケていなかったと思う。

 そして、この参鶏湯が一部日本人の間で酷評されている裏側には、「日本で韓国の定番料理が認知される度合い」と「韓国において定番料理の質が低下している度合い」が、比例しながら進行している事情が隠れているような気がする。

 つまり、韓国における韓国料理の味が一般的に低下した頃に、韓流という疫病が流行り、日本人の間で韓国料理が広まってしまったことが、韓国料理を必要以上に「不味い」と主張させる原因になってしまっているのではないだろうか?

 ちなみに筆者は参鶏湯が嫌いだ。
 現地で誘われても「え~!参鶏湯?」と態度に出してしまうし、食堂でも嫌な顔をして食べたりしている。
 だが、美味しいかどうかを問われたら、「美味しい」と答えるだろう。

 実際問題、専門店で出される参鶏湯のスープは大抵美味しい。
 おそらく日本で嫌がられる原因の一つは薬臭いことだが、そういう料理は何も参鶏湯だけではないし、カレーなんかは最たるものだ。
 では、筆者の場合、何が嫌いかといえば、その見た目のグロさである。

 切断面をさらした鶏が一羽(もしくは半羽)が器の中にゴロン、と丸ゆでになって転がっているルックスが生理的に受け付けないし、それをぐちゃぐちゃに崩す食べ方が、よりハード・ゴア過ぎてダメ。
 道路で車に轢かれ続けて、原型がなんだかわからなくなっている犬や猫の死骸を思い出してしまう。

 私が参鶏湯を韓国で初めて食べたのは軍事政権の末期、景福宮駅近くにある「土俗村」だった。
 ここは当時からそれなりに名店ではあったが、今のように人々がやたらと押しかけて行列するようなお店ではなく、もっと地味で冴えない店だった。
 当然、メニューは全てハングル表記、日本語対応も一切なし(というか、日本人自体いなかった)。

 昔も烏骨鶏の参鶏湯が名物だったが、その時の目的は漆の参鶏湯だ。
 この漆の参鶏湯、今では希少メニューになっているらしいが、当時でも、そんなにポピュラーではなかったと思う。

 注文時、「かぶれるかもしれませんよ」とお店の人に注意を受けたが、食べて見ると拍子抜けするほど癖のないあっさり味、美味しくも不味くもなくで、肩すかしだった。
 もちろん、かぶれたりはしない。

 「漆って本当に食べることが出来るんだ~」と感心はしたものの、人様の家庭で出てくる普通の鶏スープの方が遥かに美味しかったので、「韓国の外食って、イマイチだなぁ」という印象を刷り込まれた。
 値段はW8000-くらい、今では考えられないくらい安かった(でも当時の韓国の相場だと通常の倍)。

 最後に韓国で参鶏湯を食べたのは、もう十年前くらいになる。
 知り合い夫婦に誘われて行った、新林駅の十字路近くにあるお店である。
 結構古い地元の定番店だったが、味は至って普通で、絵に描いたような平凡な参鶏湯だった。
 不味くはないが、何か+αに欠けていて物足りないのである。
 知人夫婦が器の中で鶏を上手にグチャグチャにしているのを眺めながら、私はあまり崩さないようにして食べた。

 一番美味しいかった記憶のある参鶏湯は、忠武路の古いビル、半地下に居を構えたお店だった。
 老夫婦が経営する街場の食堂で、味は非常に良く、鮮烈さすら感じるシャープな風味の参鶏湯だった。

 材料とスープの煮込み具合が適度で、具材の個性がちゃんと感じられるのだ。
 食材が良かったのかもしれない。

 場所が場所なので、今ならグルメ・ガイドに載るべき味だったとは思うけど、残念ながら十年以上前に姿を消してしまった。

 …とまあ、それなりに彼の国との付き合いは長くても、今も昔も焼き肉と参鶏湯は興味が無いので、これらについて食べた記憶があまり無い。
 物価高が日本を越えてしまった今、なおさら、これらの「定番料理」を食べる機会は無さそうだ。

 でも、久しぶりに「土俗村」へ行ってみようかな??

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