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Vol.533 消えた男 [韓国生活]

 韓国の知人、A氏とは仕事を通して知り合った。

 身の丈は185センチを超え、恰幅もよく、顔立ちはそれなりに濃い韓国風、いつも黒い服を着ていたので、まるで韓国映画に出て来る組暴のような風体だったが、中身は全く逆で、温和かつ絵に描いたようなジェントルマン、丁寧な気配りができる人物だった。
 OLの奥さんと共働きで、娘が一人いるという。

 高校時代には無理やりニュージーランドに留学させられたが、周りには羊しかおらず、とっても寂しかったと語り、学生時代から筋金入りの野球好きで、社会人になってからも草野球チームで積極的にプレーしていた。

 それほど親しい訳ではなかったが、A氏は筆者が今まで出会った韓国人男性の中で、飛び抜けて「いいヤツ」だった。

 やがてA氏は独立し、会うこともなくなってしまったが、たまに連絡すると仕事自体は順調らしく、新林洞界隈から盆唐の新都市に家を引っ越したという。
 そして彼からの最後のショート・メールには「今、中国にいるので会えません」と書かれていた…

 …A氏と音信不通になって数年後。

 以前A氏を紹介してくれた会社社長B氏とソウルの下町で飲む。
 そこは外国人観光客がやってくるような場所ではないが、再開発が進み、中堅の住宅街となり、新興企業も増えてと、中々活気ある所だ。

 最近の状況をB氏に尋ねると、やはり事業は悪化しているらしい。
 筆者はいつも半分冗談で彼に「いい加減、会社たたんで故郷へ帰れよ」と言ってはいたけれど、その問いかけに対して「今度新しい事業を始める」と答える。
 なにやら中継貿易の仕事で、うまく行けば今より遥かに儲かるという。

 「そんじゃ、新事業が成功したら、お金貸してくれ」半分冗談で具体的金額を言うと、「いいよ!」と二つ返事。

 でも、これは韓国でよくある会話パターン、それ以上は突っ込まず(本気にせず)、以前から心の隅に引っかかっていたA氏について何か知らないか、尋ねてみた。
 なぜならB氏とA氏は長い友人関係にあるからだ。

 「A?彼は消息不明だよ」
 「ええっ!?」
 「…もしかすると中国で暮らしているんじゃないかな?」

 ここまでは、A氏から直接聞いていたので想定内、「やっぱり」という感じだったが、その後の会話に筆者は足を掬われた。
 「中国にいるって、そんじゃ、奥さんや子供はどうしたんだ?まだ娘は小さいし、奥さんは会社勤めだろ?」

 それを聞いて、今度はB氏の方が驚いた。
 「えっ?Aに奥さんと子供がいるって!?、そんな馬鹿な。彼は結婚していないよ。たしか、母親と兄しか家族はいないはずだ」
 「れれれれっ!???」

 でも、考えてみれば、そのB氏同席の場でA氏が家族を話題にした記憶はない。
 A氏の家族の話題が出るのは、いつも他の連中と一緒に飲んでいる時だったような気も…

 結局、A氏は今も不明で、彼の家族についても、その真相は謎のままだ。

 「みんな言っていることが違う」というのは韓国人と付き合う上でよくあることなので、おそらく誰かが嘘をついているか、勘違いしているか、筆者が騙されているだけなのかもしれない。

 それに「他人の金を持ち逃げして外国にトンズラ」という「韓国人あるある」的な噂も聞かないので、とりあえずA氏は誰にも迷惑を掛けてはいないのだろう。

 だから、筆者はA氏の消息を追うのをやめたけど、今もどこかで、彼は元気にやっているのだろうか。
 幻の妻子と共に……

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Vol.525 鍾路三街界隈を考えてみた [韓国生活]

 鍾路三街。
 地下鉄が複数線乗り入れる場所として、今でもソウルを代表する界隈の一つだが、かつての賑わいを失ってから久しいものがある。
 歴史的に古い繁華街であるが、既に時勢から取り残された感が否めない。

 その理由はいろいろ考えられるが、ソウル市自体の裾野が広くなり、わざわざ鍾路三街に来る理由を多くの人たちが失ったこともその一つだろう。
 古い街故、闇の利権が複雑に絡み合い、問題解決が図れない、ということもあるのかもしれない。

 十数年前は平日でも人でごった返す光景が普通だったが、今では閑散としていることが多く、外国人観光客ばかりが目に付くようになった。

 老舗のゲイ・タウン、「ソウルの新宿二丁目」として以前から有名な場所でもあったけど、それを表立って観光ビジネスに結びつける度量は残念ながら今も韓国社会にはない。

 鍾路三街から乙支路を通って忠武路に至る道筋は、かつてソウルにおける映画興行の中心でもあったが、その面影はすっかり失われた。

 中心だったソウル劇場に昔のステイタスはなく、旧ピカデリー劇場の跡地に建てられた団結社も、鍾路三街の奈落ぶりを象徴するような空きビルと化して久しい(一応、現在は貴金属専門のビルとして営業再開中)。
 ロッテシネマ傘下となった新生ピカデリー劇場が息を吐いているくらいだが(2017年現在はCGVチェーンである)、かつてここが韓国映画界で権力を振るっていた某氏の持ち物だったことを知る人はあまりいないだろう。

 私がこの地を初めて訪れた時、地元ヤクザが鍾路三街や乙支路界隈の映画館前で幅を効かせ、チケット窓口で客を仕切っている姿に驚かされたが、それもすっかり懐かしい情景になってしまった。

 鍾路三街は、屋台街としても有名だったが、これもまた過去の話、今は夕方から夜にかけて、許可された場所で開店するポチョンマチャの群れが、その面影を微かに引きずるだけだ。

 鍾路三街には、そそられるような美味しいお店が無いことも、困ったことである。
 いや、正確に言えばあるのだが、韓国料理にすっかり飽きてしまった私にとって、多くのお店がピンと来ない。
 だから、結局、宿の自炊飯になってしまったりする。

 仮に鍾路界隈の再開発を行うにしても、大掛かりなインフラ基幹整備から行わないと本当の再生は難しいだろう。
 特に水廻りは大きなアキレス腱だと思う。

 古いソウルの空気を湛えているという意味で、鍾路三街は重要な場所かもしれないが、「街」に寿命があるとすれば、そのこともまた、如実に表している哀しい場所なのかもしれない。

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Vol.523 大学路から [韓国生活]

 通称「大学路」がある恵化洞界隈は意外なほど、明洞や鍾路三街といった江北の有名観光地区へ近い位置にある。

 観光案内的に言えば地下鉄4号線を使うのが定番かもしれないが、実はこれが一番効率が悪く、場所(移動先)によってはバスか、思い切って徒歩の方が合理的で早かったりする。

 筆者はこの恵化洞界隈で遅くまで飲んだ後、宿まで歩いて帰る事が多いのだが、そっちの方が時間的に無駄がないからだ。
 でも徒歩で帰る一番の理由は、昌慶宮路から栗谷路に沿った道のりが好きだからでもある。

 昌慶宮路と栗谷路は大きな道路なので、夜中でも結構車が走っているが、住宅街を過ぎてしまうと真っ暗な上、全然人気がなかったりする。

 でも、タクシー代その他をケチる人はどこにもいるから、一見物騒な暗い道であっても、時折独り歩きとすれ違ったりするし、たまに女性の独り歩きを見かけたりするくらいだ。

 途中、ソウル大学病院だとか弘化門があったりするが、昼間とは様相がまるで異なるので、とても面白く感じられたりする。

 正直、犯罪に巻き込まれても仕方ない状況ではあるのだけど、繁華街からこんな場所まで後をつけてくる韓国のワルは、あまりいないような気がする。

 とはいっても、ここ数年、韓国における性犯罪率は急激に高くなっているらしいので、女性にオススメはできなのだが、連れがいるなら暗い夜道を一緒に歩いてみるのも一興だと思う。
 ただし、送り狼に要注意なのは言うまでもない。

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Vol.522 大学路にて [韓国生活]

 ソウルの恵化洞こと通称『大学路』近辺は、高級住宅街でもあるが、江南辺りとやや違うのは良い意味で古い土着臭がそこかしこに漂っていることだろう。

 街自体は小さいが、適度に時間を潰せるお店が揃っているし、スーパーマーケットも複数あり、その品揃えは悪くない。

 映画館は旧ファンタシウム、今のCGV大学路だけになってしまったが、かつては映画館が幾つもあって、それなりにミニシアターの街として機能していた時代もあった。
 宿泊施設がイマイチなことだけは外国人にとって欠点かもしれない。

 「大学路」は演劇の街として日本でも最近は有名だ。
 それこそ大小様々な劇場がひしめき合い、夜遅くになると飲み屋は演劇関係者ばかりになる。
 だからか、大スターになってもこの場所に愛着を抱き続け、常連として馴染みのお店に通う人達もいる。

 「スターに逢いたきゃ、夜の狎鴎亭に行け!」ではあるけれども、業界人たちにとって江南界隈はあくまでもビジネスの場であり、江北界隈はそれに比べると一部の人々にとっての原点なのではないか。
 これは恵化洞のみならず、かなり廃れてはしまったが忠武路こと筆洞辺りにも言えることだ。

 両者に共通するのは古いソウルの情景がまだ残っていることであり、そこに過去の貧乏臭さが垣間見える、ということであり、そしてこれらがソウルで失われつつある一種の安心感に繋がっていると思うのである。

 恵化洞に隣接する明倫洞には有名私立「成均館大学」があるが、その周辺はあまり学生街の香りがしない。
 もっとも、この大学の現主力であろう理系キャンパスはスポンサーたるサムスン財閥のお膝元、郊外の水原市に展開しているので仕方ないのかもしれない。

 「大学路」という名称は日本の旧帝大一翼を占めていた「京城大学」がかつてここにあったことに由来する訳だけど、光復節後、もう少し他の大学が集まっても良かったんじゃないかと思う。

 ソウルで「大学街」といえばどうしてもサブカル系な新村界隈か、ちょっと南に下がってバンカラっぽいソウル大周辺というイメージが筆者にはあるのだけど、恵化周辺にはこれらの界隈にはない、足が地に着いた趣きがあるといつも思うのである。

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Vol.518 宿の追憶 [韓国生活]

 筆者はソウルに行く時、基本的に定宿に泊まるようにしている。

 しかし、「定宿」といっても何か特別契約をしているわけではないから、他の人たちと部屋取り競争をやらなくてはいけない。

 これが結構シンドくて一番嫌なワケだが、宿のスタッフが顔を覚えてくれれば、ある程度、こちらを考慮してくれるようになるので仕方ない。

 また、場所や値段など、筆者の要望に沿った宿は本当に少ないので、そういった場所を見つけたら、経営者が変わるようなことが無い限り、使い続けることになる。

 今使っている宿は設備こそ大したことはないが、価格が安い上、外国人向けに特化していて、困った時など色々頼りになるし、なによりも場所がいい。

 バスと地下鉄両方共、ルートの選択肢が多く、主要な場所までほとんど一本で行くことができ、特に恵化から徒歩で20分程度なので、大学路で飲んだ時は終電を一切気にしなくていいし、演劇を観覧する際も便利である。

 その他にも、ソウル中に散らばった主要なアート系映画館へのアクセスについて便利性が極めて高い。

 筆者が最初定宿に使っていたのは、筆洞にある中級の、昔は映画関係者御用達で有名なホテルだった。

 サービスもよく、値段も安く、外国人対応と、ソウルの安い宿泊施設の中では非常に気に入っていたのだが、ワールドカップを境に物凄い値上がりした上(もちろん大改装もやった)、それまでお世話になっていたスタッフの多くが解雇されてしまったので使うのを止めた。

 次の定宿に使っていたのは、舎堂駅近くにある古ぼけたホテルだ。

 どうやら、ある一家が物件を買い取って経営していたらしく、フロントにいるのは、いつもおばちゃんやおじいさんだった。

 そこは外国語が全く通じないホテルではあったが、あんまり筆者が頻繁に泊まるので、フロントに顔を出せば、ツーカーで分かってくれるようになり、一度火事になり焼け出されたが、良くも悪くも家族的だったので、その後も舎堂に用事がなくなるまで使い続けた。
 あの一家は今もフロントにいるのだろうか。

 その次は新林駅近くにあるモーテルだった。

 基本的にはラブホだが、そこだけはビジネスホテルの色合いが強くて、当時のソウルでは希少なタイプの宿だった。
 値段は安いが設備がよく、部屋も綺麗だった。
 かなり分かりにくい場所にあったが、モーテルが乱立する新林駅界隈でも人気があったようで、週末は満室になることが多かった。

 その後、三成洞にあるモーテルに宿を変えたが、なぜかというと江南界隈での用事が増えたためである。

 当然、狎鴎亭辺りの宿なんか高すぎて使えないので、微妙な場所にある、そこそこ安いモーテルを探して使うようになった。

 個人的にはそこを気に入っていたが、経営者が地下にあるサロンに力を入れ始めたらしく、改装後えらくサービスが悪くなり、泊まるのをやめてしまった。

 幽霊が出たのは、このモーテルのことである。

 そんなこんなと、いくつかの遍歴を経て、今の宿に落ち着いたワケだが、貧乏ツーリスト向けの安宿は、どうしても安かろう悪かろうで、やはりアタリは少ないように思う。

 韓国の物価上昇が著しい今、ビジネス向けに特化した安い宿泊施設が、ソウルで、もっと増えて欲しいことは変わらない。
 個人的にはレジデンス形式の宿が理想的だが、どこも高すぎるし、安いところは予約競争が激しい上、設備がひどかったりする。

 一度、上げ膳据え膳の高級ホテルに泊まってみたいとは常々思ってはいるけど、安いホテルとの差額で出来ることを考えれば、とてもではないが、韓国で一泊W100000-相当を超えるようなところに泊まる気にはなれない。

 もっとも、そんな予算はいつもないというのが一番の理由だけども…

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ああ、舎堂

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Vol.514 COEX MEGA BOXもリニューアル! [韓国生活]

 COX MALLに行ったついでに、MEGA BOXにも立ち寄ってみた。

 大改装が始まっても、ここは長期休館することなく営業を続けていたが、リニューアルに合わせた大幅な改修が既に行われていて、かなり様相が変わっていた。

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 昔のいかにも【韓国のシネコンです】的な雰囲気はだいぶ薄くなり、映画館というより多目的ホールのよう、全体的に開放感のある、おしゃれな雰囲気になったが、なぜかバーガーキングだけは同じ場所で相変わらず営業を続けていた。

 キャパシティの大きい劇場がある地下2F(…でいいのかな?)と、小さな劇場が連なっていた地下1F(…でいいと思うんだけど)を繋ぐエスカレーターは廃止され、一般大衆系は地下2F、小金持ちは地下1Fで、というように、コンテンツと客層を分けたようである。

 さすがは韓国、どこでも何でもヒエラルキーを持ち込みたがる。
 
 地下2Fはロビーと劇場の仕切りが無くなり、フラットに繋がっているような構造に変わったが、これは中々いい設計だと思う。
 おかげで、この手の映画館特有のすえた雰囲気がかなり和らいだ。

 そして、注目すべきは、劇場内に用途不明の滑り台が設置されたことだ(非常用か??)。

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写真右側に滑り台が見えます

 「なぜ、二つも?」という不可解さもあるけれど、別に邪魔な訳でもなく、空間プロデュースとして考えれば、これはこれでアリだろう。
 大勢の家族連れが順番を待って並んでいて、映画館とは別に大盛況だ。

 もう一つの大きな変化は、チケットカウンターの位置が大きく変わり、発券窓口と自動発券機が増えたことだろう。

 ここで、改悪なのでは?と感じたことが二点あった。

 まず、自動券売機が増えたのはいいのだが、現金が使えない。
 つまり、筆者のような実質イチゲンさんの外国人客は端から対象外であって、逆に利便性が悪かったりする。

 韓国の映画館で自動券売機が現金非対応なのは、何もここに限った話ではないけれど、行ってみないとわからないから困ったものである。
 やはり、何台かは現金対応にして欲しいなぁ…

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自動券売機も人でいっぱい

 その日は油断して予約をしておらず、マジで焦る。

 というのも、この自動券売機、現金購入が出来なくても、座席の空き具合は確認できるからで、その時に観ようと思っていた作品は、開場時間まで二時間近くあるのに、空きが数席しか残っていなかったのである!

 仕方ないので、慌てて整理券を取り、発券カウンターの方を使うことにしたのだが、これまた、待ち人数が80人…!!

 日にちが悪かっただけかもしれないが、しばらく来ていなかったので、COEX MEGA BOX特有の落とし穴をすっかり忘れていた。

 でも、トラブルはそれで終わらない。

 スタッフが直接対応する発券カウンターは処理もテキパキ、すぐ順番も回ってくるのだが、担当窓口がどこかは直前まで分からず、整理番号を表示する電光板をいっぺんに見渡せるポジションも無い。
 あっという間に別の番号へ変わってしまうので、全く気が抜けないのだ。

 こういうのはホントに嫌…

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分かりにくいのですが、以前と位置が異なります

 第二の問題点とは、この発券カウンターの処理能力が増した為、スピードについて行けない年配者や初めてやって来た事情の分からない客にとって、逆に購入し辛くなっているのでは?ということである。

 なぜ、こんなことを書くのかというと、かくいう私も待った挙句、状況が理解できていない上京組と思われる爺さんに、堂々と横はいりされたからだ。

 韓国は元々、日本よりも「順番を守る」だとか「並んで待つ」といった概念が相当薄い社会ではあるけれど、今のソウルは大分改善されている。

 だから、今頃まさかとは思ったのだが、考えてみればここは天下のCOX MALL、都会の流儀を全く理解できない人たちが大勢やって来ることを、すっかり失念していたのである。

 その爺さんはもしかしたら、ややボケていたかのかもしれないが、カウンターの女性がいくら丁寧に横はいりであることを説明しても、全く理解出来ないらしい。

 ちなみに、最近のソウルにおける大手シネコンは、スタッフ教育が行き届いているので、日本のシネコンより、顧客対応はマトモだったりするのだが、横はいり爺さんの耳に担当の説明は全く届いておらず、うつろな表情で作品名を呆けたように繰り返すだけ。

 やもなく彼女は筆者に目線で詫びつつ、その爺さんに発券対応を始めたが、そこでまた先に進まなくなる。

 爺さんが要求する大ヒット作の座席なんて、開場間際にそうそう都合よく空いているわけもなく、担当者は詫びながら要望の応じられない旨を伝えているのだが、この爺さんは、それが理解できない。
 ディスプレイで空席状況を見せても、うつろな表情で同じ言葉を繰り返している。

 「これはマズイ!」と筆者が焦る矢先、運良く隣の窓口が空き、事情を察した他のスタッフが早急に対応してくれたからいいようなものの、この時ばかりは、いくら韓国とは言え、殺意を覚えた。

 韓国で暮らしていれば、こういうイライラは日常茶飯事、失笑して終わりなのだけど(本気で怒っていたらやってられない)、あいにく今の筆者は刹那な一時滞在者に過ぎない。

 どうも、彼の地にしばらく来ない間に、「自分がよければ全てOK」という、韓国の「俺様ルール」をすっかり忘れていたようだ。

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Vol.513 新装開店!COEX MALL、でも… [韓国生活]

 2014年11月、ソウル・三成洞にある巨大な地下商業施設「COEX MALL」が二年近い改装期間を経て、遂にリニューアル・オープンした。

 近頃、ここら辺界隈は筆者にとって縁遠い場所になっていたが、思い出深い場所でもあるので、わざわざスケジュールを組んで訪れてみた。

 かなりの大工事を行っていたので、相当変わっているかと思っていたが、施設の基本構造にそれほど大きな違いはなく、昔の面影はかなり残っている。

 だが、以前あった店舗のほとんどが撤退するか、場所を変えたので、指標となるものが無くなり、どこに何があるか、さっぱり分からなくなった。

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駅寄りの出入口付近…

 「リニューアル・オープン」とは言っても、筆者が訪れた時分はまだまだ工事の真っ最中で、あちこちからドカチン音が轟いている。
 でも、ここはオープン当初から年がら年中どこかで工事をやっている場所でもあったので、営業している限り、改装は永遠に終わらないのかもしれない。

 地下街の基本構造が変わらないといっても、通路が増えた分、どこの通路がどこに繋がっているかが、かなり分かりにくくなっており、全体的に白を基調とした空間デザインもまた、訪れた者の方向感覚を狂わせ、迷路ぶりに拍車をかけている。

 とりあえず「韓国を代表する、おしゃれな地下街」という役割を担っているので、勘違い系外国人観光客や地方からのお上りさんにとっては眩しく輝いて見える仕様になっているとは思う。
 だが、買い物効率を求める人にとっては改悪と指摘されても仕方ない。

 巨大なタッチパネルが汎用フロアガイドとして随所に置かれているが、これがまた使いにくく見難くて、なぜオーソドックスな看板形式にしなかったんだろう、と疑問に思った(もっとも、苦情が殺到すれば、すぐ改修されるでしょう)。

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左側の黒いところに名物トイレがありました…

 これはあくまでも推測だが、意図的に客が迷いやすい構造にすることで、増床した商業スペースに足を運ばせる戦略になっているのではないだろうか。

 今回、訪れて一番ビックリしたのは、新しく出来た地下フロアに、かなりの店舗面積をとって、ガンプラ専門店「GUNDAM BASE」がオープンしていたことだろう。

 ソウルの三成という、韓国の成金や見栄っ張りが集まるような場所で、「GUNDAM BASE」なんて、ちょっと前なら異常事態である。

 でも、よーく考えてみれば、ここ数年の韓国におけるガンプラの展開は、「おしゃれな韓国男子のおしゃれな高級ホビー」というマーケティングを行っている節があったりする。
 だから、意外とこの店はCOEX MALLのコンセプトに沿っているのかもしれない(でも、モビルスーツ並べて「おしゃれ」と言われてもねぇ…)

 改装前のCOEX MALLは、韓国伝統の大衆的な地下商店街を継承しつつ、見栄を張りたい人にも、そうでない人にも対応しているバランス感覚が魅力の場所だったが、大改装後は、お金と暇のある韓国内外裕福層が顧客対象、といった感じが露骨になり、何かあれば韓国内左派勢力から叩かれそうだ。

 正直、昔から広く浅くで面白いものを置いてあるような地下街ではなかったけれど、今回の大改装で一層、「韓国ならでは」といった、いい意味での「カッコ悪さ」を失ってしまったような気がしないでもない。

 今後、ますます足が遠のくことを予感をさせる、ちょっと寂しいリューアル・オープンだった…

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以前フードコートがあったところ…

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Vol.504 カチの群れ [韓国生活]

 韓国の街中で頻繁に見ることが出来る「カチ(까치)」(和名 カチガラス)は、韓国を象徴する鳥と言われているが、正式の「国鳥」という訳ではない。
 カケスの一種でかなり賢く、人手で育てるとかなり懐くらしいが飼われているのは見たことがない。

 かつて韓国では保護が行き過ぎてやたらと増えてしまい、駆除の対象になったこともあってか、昔に比べると随分減った気がするが、それでも市街地に植えられた樹木の梢に残された大きな巣をよく見かけるから、今も街中で沢山暮らしていることがよくわかる。

 ここ十年ばかり、ソウルではこの「カチ」がまた増えてきているように思えるが、同時に人間に対して以前よりも物おじしない個体が増えているようだ。
 昔は数が多くても人に対するパーソナル領域がシビアで、接近して写真を撮ることが案外難しかったのだが、最近の個体はちょっとそこら辺が無神経になって来ている。

 決してフレンドリーではないが、そこそこ近寄ってカメラを向け続けてもパッと飛び立つことが少なくなった。
 人に対してもっと激しい警戒心を抱くようになってもおかしくないのだけど、カメラが無害であることを学んだのだろうか?

 韓国はどうも留鳥の種類が少ないようで、どこに行ってもカチばかりがゲーゲー鳴いている。

 ツバメもスズメもあまりいないし、カラスは見たことがないしで、後はドバトばかり。
 時折、郊外や地方で固有種と思われる鳥を見かけることはあるが、大概は小型で動きが素早く、隙を見せないので観察が難しく、どのような種類なのかよく分からない。

 時期と場所によってはカモやツルの仲間が大量に飛んで来るし、ソウル市内だと清渓川で大きな雁が戯れていたりするが、日本のように地域ペット化しているのは見たことがないので、韓国では野鳥に対する一般の関心が低いのかもしれない。

 そう言えば、韓国の伝統的な結婚式で使われる小道具に雁のデコイがあるが、かつては生体を使っていたらしいので、その当時は扱いが結構大変だったんじゃないだろうか。
 野生種だから暴れるだろうし、力があるし、噛まれればかなり痛い。

 以前現地の知人に「あの雁って昔はどうしたの?」と尋ねたところ、「多分食べるんじゃないのかな…」とはっきりしない答えが返ってきた。

 昔の人が雁をペットにしていたとは考え難いから、食材にするのが一番合理的な答えなんだろうけど、カモ肉というのは臭かったりするから、外れるとかなり不味い。

 デコイが使われるようになった裏にはそんな事情もあったりして…?

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Vol.497 集う [韓国生活]

 最近、ソウルを訪れるたびに知り合いに呼びかけて、「某監督の集い」というのを開いている。
 と言っても別に大したことをやっている訳ではなく、某映画監督を囲んで皆グダグタと酒を飲みながら最近観た映画の話だとか業界の噂だとか、その他どうでもいいネタを話しているだけだ。
 集まる人々は様々なのでお気軽な「異業種交流会」の側面もある。

 こうしたグダグダな集まりの一番よいところは韓国側のナマ声を聞けることだろう。
 時々日韓問題を振ってみたりするけど、余計なフィルターを通さない意見を交わせることはいいことだし、何よりもこの集いを通して韓国人同士が新しいチャンスを見出してくれれば幸いだと思っている。

 韓国で難しいことの一つに複数の友人・知人を作ることがある。
 一人、二人はまあいいとして、それ以上の人脈を拡げるには想像以上にコネが重要かつ必要だったりするし、自分が外国人であることを積極的に利用しなければいけない場面も多い。
 これは日本人にとって結構シンドい。

 あくまでも筆者の見解だが、韓国はいつでもどこでも、そして子供から老人まで順列づけ(マウンティング)を求めてくるし、どの勢力に属しているかを非常に重要視する社会なので、一見お気楽な友達関係に見えても、その裏側ではヒエラルキーを巡る争いが絶えずドロドロと渦巻いていたりする。

 だから、年齢、性別、肩書、学歴、出身地、縁故などの条件が恒常的に個々人の交流を妨げているし、友人・知人関係も「似たもの同士、都合の良いもの同士」で完結してしまい隘路に陥りやすい。
 日本人が韓国人側の発言に個性やオリジナリティを感じにくいのは、そういったことが大きく関係しているのではないだろうか。

 もちろん、そういう韓国的な「枠=呪縛」から逃れて自由で多様な生き方を目指している人達もいるが、そういう人たちと「韓流好き日本人」が知り合う機会はあまりないと思う。
 共通のスポーツや趣味の分野で知人・友人を作るのも良い方法だが、これはこれで他グループとの敵対関係に巻き込まれる可能性がある。

 だから、韓国において付き合う先が特定の属性や階層に限られてしまうのは仕方ないとは思うのだけど、そんな状況で知人・友人の輪を拡げる有効な方法とは、おそらく「誰かに誰かを紹介してもらう」というやり方なのである。
 実際、他の日本人を見ていても「紹介、紹介、紹介、これまた紹介」で韓国内における友達の輪を広げている。

 ただ、この「紹介作戦」の難しいところは、「韓国のTVドラマが大好き!」だとか「韓国人の恋人が欲しい!」と言った、ありがちな枠を自発的に超える努力をしないと輪の展開が容易ではないことだ。
 そして、それをやらないとタチの良い韓国の知人・友人を得ることは難しいと思うのである。

 また、韓国の人々は往々にして飽きっぽく薄情と言えるくらい現実主義なところがあるから、相手との関係が利益(=お金)にならないと見るや、すぐに離れてしまう事は珍しくない。
 しかし、これもまた自虐的歴史観を植え付けられた日本人にとっては理解し難いことなのかもしれず、いつまでも相手との関係を「友情」と勘違いし続けていたりする。

 歳を重ねるたびに韓国というものがシンドく疲れる場所へと変わってゆく理由は、そんなところにあるのかもしれない。

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ソーシャル・ネットワークに勤しむ某監督氏

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Vol.492 対話とはいつになっても難しい [韓国生活]

 子供の時分、新聞のコラムに、ある印象深い記事が書かれていた。
 当時、世界中で人々を困らせていた「ノーキョー」の団体旅行を揶揄した内容だ。
 日本のエジプト駐在員がピラミッドの近くで「ノーキョー」と遭遇したので、日本語で「日本からいらしたのですか?」と問いかけたところ、無言で睨まれ、更に話しかけると「No!No!」とひたすら拒否されたという話である。

 今、そういう事はあまりないだろうけど、似たような光景を「韓流ブーム」のソウルで目撃したことがある。
 某所にあるアート系シアターに映画を観に行ったのだが、そこには母娘連れらしき女性ばかりの日本人グループがいた。
 「こんなマイナーで分かりにくい場所にも来るようになったんだなぁ」と妙に感心しつつ開場を待っていると、グループのリーダー格と思われる中年女性に近くに座っていた初老の韓国人女性が話しかけ始めた。
 もちろん、綺麗な日本語である。

 韓「どこからいらしたのですか?」
 日「…?イルボン、イルボン」
 韓「そうですか、私は済州島から来たんですけどね」
 日「イルボン、イルボン、イルボン」
 韓「今日は映画をご覧になるのですか?」
 日「イルボン、イルボン、イルボン」

 おそらく、日本人女性としては「日本人なので韓国語はできません」と言いたかったのだろう。
 だけど、相手はちゃんとそれなりに日本語を喋っている。
 その日本人グループにしても、ガイドや通訳なしでわざわざ、こんなマイナーな映画館に来ている訳だから、韓国に対して積極的にアプローチしようという気持ちがあるとは思うのだが…

 もう一つは、ある郷土料理屋での事。
 裏路地の分かりにくい場所にあるが、有名な観光地なので、最近は結構、日本人が来る。

 そこで名物料理を一人食べていると、どやどやと、日本人の中年女性グループが三人ほど入ってきた。
 リーダー格の人は滑らかな韓国語を話している。
 だが、席に着いて注文する段階になると、壁のメニューを見て何やら騒ぎ出した。
 「게장って何!게장って何!게장って何!」
 韓国語の発音は上手だし、ハングルも読めているはずなんだけど、日本語メニューが置いてあるお店ばかり利用していた弊害なのだろうか?
 というか、それ以前に辞書を引けばいいだけの話なんだけど…

 対話とは本当に難しい。

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「架け橋」という言葉の虚しさが胸に染みます…

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