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お久しぶりなソウルです [韓国カルチャー]

 久々にソウルにやってくる。

 一番の目的はシン・ドンイル監督の新作を見ることだったが、これまでの残務処理と現実逃避を兼ねてやって来た次第。

 映画の公開は5月11日からだったが、おそらく10日程度で上映は終わりだろうと見当をつけ、スケジュールを決める。
 これがビンゴ!、だったのだが、それ以上に早く上映終了が決まってしまったので、実は危うく見損なうところだった。

 日本を出る時、巷では北朝鮮の諸問題と文在寅大統領の傾北&反日が取り沙汰されていて、まるで韓国に行くのが背信行為のようなヤバイ空気が濃厚に漂っていたけれど、現地は至ってのんびり、のほほーん。
 北朝鮮の水爆実験当時と全く同じで、いつものノンキな韓国的風景が広がっていた。

 でも、定宿オーナーの話では、北朝鮮ミサイル問題の影響で、ゴールデンウィーク中は日本人のキャンセルが相次ぎ、頭が痛かったという。

 定宿の辺りは、ここ数年、外国人の懐狙いゲストハウスが山のように林立し、「おい、おい、供給過剰だろうが!」と思っていたのだが、今、人けの無いゲストハウス街をぶらぶらしていると、北朝鮮のミサイル騒ぎと韓国THAAD配備問題が、彼の地の観光業にとり、予想以上に風評被害を生んでいるのかなぁ、と、どうしても思ってしまう。

 大騒ぎだった、パク・クネ弾劾後の大統領選挙については、喉元過ぎてしまえば、まるで無かったが如く。
 既に誰が大統領なのか、皆忘れているのでは?みたいな感じ。

 韓国映画絡みだと、個人的にお馴染みだった独立系アートシアターの幾つかが閉館になっていて、長らく続いた「偽インディーズ映画ブーム」も、とうとう限界点を超えたかなぁと、ちょっと寂しくなった。

 そして、一番印象的だったのが、我が物顔で街中を闊歩していた中国人観光客が、嘘のようにソウルの繁華街から姿を消していたことだろう。

 政治を巡る感覚については、日本と韓国、毎度あまりに温度差があるのだけど、今回のような「お得意様(=カモネギ)が来なくて頭が痛いです」という現象は、常々韓国側の問題として、北朝鮮や中国、日本に対する、いつもの優越感と蔑視と甘えが、一連の事態を招いているように見えなくもない。

 だが、この国の人々はそういうことについて、いつも無関心、そして疎い。

 今の私に、そうした彼らを弁護する気力はすでに無いのだった…

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PM20時過ぎ。
初夏の陽の長さが好きです。


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Vol.527 ある俳優の死 [韓国カルチャー]

 2015年6月。
 韓国のマスコミで二人の男優の死が報じられた。

 一人は김운하(=김창규)氏(40)で、ソウル市内にある考試院の一室で病死しているところを、もう一人、판영진氏(54)は、高陽市自宅近くの車中で自殺しているところを発見された。

 なぜ、この二人の死が韓国で少々話題になったかと言えば、共に世間では無名の中年男優であり、恒常的に生活苦を抱えていたらしいということであり、それは「韓流」という虚偽から遠い位置にある職業俳優たちの「リアル」でもあったことが大きいと思う。

 「売れない俳優が生活に困っている」。
 そのこと自体は日本でも珍しくない話だし、スターになればなったで「板子一枚下は地獄」な訳だから、「俳優の生活苦がどうたら、社会福祉がどうたら」といった批判に便乗して何かを言う気はサラサラないのだけど、このニュースがなぜ個人的に衝撃的だったかと言えば、筆者は판영진氏が主演した『나비두더지』(2006年度作品/2008年2月22日 韓国一般公開)を、ソウルの映画館で公開当時観ていたからなのである。

 この『나비두더지』という映画は観客動員数が全国で合計126人(!?)であり、いくら主演でも판영진氏を「映画俳優」と平然と呼ぶには違和感をおぼえてしまうのだけど、ワタクシ的には、その年の韓国インディーズ作品中で確実にBESTな一本でもあった。

 いわゆる「アートフィルム」ではあるが、一種の変形サスペンスであり、ダーク・ファンタジーであり、ロケ撮影を上手に活かした特異な世界観の中で、過酷な地下鉄運転手業務に疲れた主人公を판영진氏は好演していたのである。

 劇中の彼は地味で華のない人だったけど、演技は味があったし、なによりもうらぶれてしまった中年男の辛さと孤独がよく滲み出ていて、地下鉄4号線がエンドレスで高架上を走り続ける不気味なラストシーンがとても印象的だった。

 판영진氏の俳優としての経歴はよく分からず、自宅が高陽市だったことから察すると、おそらく俳優業とは別の仕事をしていたか、家族・親戚筋から援助を受けていたのではないかと想像している(実際、主演クラスでも副業で生活を立てている人は珍しくない)。

 김운하氏の孤独死については、かつて筆者が考試院で生活していた経験から考えれば、まさに「韓国のリアル」であって、俳優として基本的に舞台の人だったという話を聞くと、これもまた切なく哀しく思うのだった。

 映画出演本数は김운하氏の方が多いようだが、皆端役であり、その何本かを筆者はソウルで観てはいても、残念なことに誰が彼であったのか、全く記憶に無い。

 二人の死を報道した韓国マスコミ本当の狙いの一つが、毎度おなじみの現政権叩きにあったとすれば、それは別の意味で不幸なことではあるのだけど、なによりも亡くなられた二人のご冥福を祈りたい。

 合掌。

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판영진氏唯一の主演作


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김운하(=김창규)氏、最後の出演作と思われる


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Vol.521 安重根義士記念館を行く [韓国カルチャー]

 徳寿宮前から市内バスに乗って、南山中腹にある安重根義士記念館へ向かう。
 南山図書館前で下車して、図書館の脇にある林を抜ければ、2010年にリニューアル・オープンした記念館の建物裏側に出る。

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 前の記念館は、朝鮮様式に沿った瓦葺きの建物だったが、今はソウルの街中にゴロゴロしているつまらない現代様式、こういうのを見るたびに、行政の裏にいるゼネコンの影を感じる。
 全面ガラス張り、長方形をした4棟の奇妙な建物からなっていて、いかにも光熱費が無駄にかかりそうだ。

 ちなみにここからソウルタワーまでそれほど遠くはなく、料金の高いケーブルカーを使いたくない人や、麓から山頂上までは歩きたくない人にも、中々、合理的なルートかもしれない。
(「南山行き」といえば専用の循環バスが存在するが、これがとんでもない代物、時間を無駄にしたくない人は使わない方がよい)。

 記念館近くには、お決まりの上着を翻す安重根の像があり、その他にも至る所に指を詰めた手形がシンボル化されて配置してある。

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 最近日本で目立ち始めているお手軽な反韓・嫌韓派にとって、のっけからツッコミどころ満載だが、真面目な右翼の人たちからすれば、意外と敬意を持って向き合える雰囲気も漂っているのではないだろうか。

 この建物は、ソウル市特別教育研究情報院およびそれに隣接する広い駐車場が隣接しており、ソウルタワーに向かうための中継基地のような場所になっていて、人影こそ多いが、その流れは記念館とは全く反対方向だ。

 記念館に入ってみると、非常に静かである。
 そういうことを求められる場所でもあるけれど、それ以前に人がいない。

 ボランティアらしき学生の案内で、ルートに沿って展示場に進むことになるが、まず対面するのが鎮座する安重根を描いた、白く巨大な像だ。

 とりあえず、像の前で黙祷するふりをして先に進む。

 内部は意外と狭く、4棟全てが展示場に割り当てられている訳ではないようだ。
 展示場として機能しているのは2棟だけといった感じで、後は何に使っているか、謎である。
 まあ、安重根の歴史研究施設があるということにしておこう…

 エスカレーターを上がり、表示に従って先へ先へと行く。
 筆者が訪れた時、先行している入館者は幼児を連れた若い夫婦のみ。
 そこに剣呑な空気はなく、何かのついでに訪れたといった感じである。

 展示内容は、韓国この手の施設、お約束の展開だ。
 そこに日本人として怒りを感じるか、呆れるか、失笑するか、はたまた賞賛するかは人それぞれだろう。
 
 筆者第一の感想は、基本的にここが、歴史を考えたり、伝えたりする場ではない、ということである。

 これは西大門刑務所や民族独立記念館も似たようなものだが、史実うんぬんというより、韓国独自のカルト教義を教授する施設であって、その教典を展示している場所、と考えたほうが外国人には分かりやすいかもしれない。

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書かれている意味は日本のそれと違うんだろうな…

 日本人として興味を惹かれるのは、やはり当時の日本語資料だろう。

 ガラス・ケースの中にしまわれている文書の多くはレプリカと思われるが、普通の日本人ならそこそこ内容が読めるものなので、これじゃ、韓国人にとって逆に都合悪いのでは?なんて気もする。

 だが、今の韓国、ごく一部の専門家や日本語使い以外は、何が書かれてるか読めないと思われるので、韓国人相手であれば問題にならないのだろう。

 各フロアは安重根に関する各エピソード別に分けられていて、あるフロアでは逮捕された安重根が如何に不当な裁判を受け、さっさと処刑されたかが強調されて説明されている。

 が、そこにある日本語資料を読むと、その主張とは逆の印象も受ける。
 それは当時、我々日本人が思う以上にまともな裁判が行われ、日本側には彼を公平に扱うよう主張する人たちが少なからずいたようにも解釈できたりするのだ。
 昔の裁判を現行と照らし合わせて文句たれるなら、それは安重根に限らず、別の事件で捕まった当時の日本人だって同じようなものだったのでは?
 
 例の十五箇条も紹介されているが、これもまた精読すると逆効果といった感じだ。
 だからこそ、展示前半の部分で伊藤博文が、大陸征服の個人的野望をたぎらせる【悪の頭領】如く扱われているのかもしれないが…

 この施設に子供たちを伴って訪れた大人の中で、展示された資料をちゃんと理解し、きちんと説明できる人が、果たしてどのくらいいるのだろうか?(…といいつつ、それは日本でも大して変わらないか)

 個人的に最も興味を惹かれたのが、暗殺当時、安重根が使ったことになっているM1900ピストルのレプリカと伊藤博文の検死所見だ。(ちなみに、以前の記念館ではブローニング・ハイパワーが展示されていた)

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 伊藤博文に打ち込まれたという弾丸の写真もあって、ご丁寧なことに弾頭には十文字が彫ってあったりするけど、変形していないし、線条痕も付いていない。

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展示は写真のみ

 伊藤博文暗殺については、当時から【安重根=実行犯にあらず】説が根強く囁かれていて、その証拠として遺体からはフランス製カービン銃の弾頭が摘出されたという話があったので、そこら辺について何か説明されていないかと期待していたのだが、さすがにそれは見当たらず、ちょっと残念。
     
 あくまでも安重根が32ACPを伊藤博文にぶち込みました、という前提だったが、詳しい人が日本語で書かれた検死所見を読めば、何か別のものが見つかるかもしれない。

 その他にも「断指同盟」結成の際に切断した指先のレプリカとか、安重根が収監された監獄の再現などがあって、ハードゴア系好きなら、そそられそうな展示物がおいてある。

 でも、筆者的には「こうして記号ばかりが残され、そこから憎悪が増幅され、次の世代へ捻じ曲げられて継承されてゆくんだろうな」という、悪い見本にしか思えない。

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 展示を全て見終わると出口直前にお土産物屋があって、「安重根」印のネクタイやら湯のみやら、その他小物がやる気なさげに置かれていて、購入できるようになっている。

 筆者が建物を出る直前、入り口の安重根像の前には見学に来た小学生と思われる一行が来ていて、引率者になにやら説明を受けていたけど、それを眺めながら、彼らのうち一人でもいいから、展示内容に疑問を抱き、カルト的くびきから離脱した立場で歴史を学ぼうとするきっかけに、この施設がなってくれればなあ、と切実に願うのだった…

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Vol.516 くるりと上着を翻し [韓国カルチャー]

 昨年(2014年)、しばらく日本のマスコミで取り上げられていた「ハルビン・安重根記念館騒動」を覚えている方は多いと思う。

 だが、「安重根」に限らず、韓国では義士だとか烈士、殉士という称号の英雄たちが沢山いて、その数は増えるばかりだ。
 英雄たちを賞賛する市井の人々の多くが、「史実がどうたらこうたら」ということよりも、付随して語られる「感動の物語」の方に、自己陶酔しているだけなのでは?と感じてしまうことがよくある。

 日本で言えば、戦国武将や幕末の志士に憧れを託す様子に近いかもしれない。

 ある韓国の知人はネットに反日ネタをアップし、他の反日ネタには「いいね!」を連発、光復節になれば感涙を流して、抗日烈士を讃え、日本は大嫌いと言いつつ、日本人は友達とも語り、日本文化や日本人女性に対して並々ならぬ興味を持っていたりする。

 そんな矛盾だらけの彼の言動を見ていると、韓国英雄群像の筆頭に立つ「安重根」とは、韓国的混沌の暗喩なのかもしれないとも思うのだった。

 ところで、かなり前のことだが、ソウルで「安重根」を絶賛する韓国人ならぬ日本人と会ったことがある。

 戦中派の方らしく、現在は地方で農業を営んでいるという。
 韓国は観光でよく訪れるようで、彼の地の素晴らしさを誇らしげに筆者に話した後、安重根義士記念館を訪れて感動したことを強く主張し始めた。

 「あなたたち戦後生まれには、この私の気持は分からないでしょう?」

 この言葉のしつこい繰り返しにはうんざりさせられたが、「なぜ、安重根は偉大なのか」という肝心の説明は一切なく、ただ、ただ、賞賛が続くばかり。
 そこに、この人が幼い時に叩きこまれたであろう、日本における戦時中の愛国教育が垣間見えたような気がした。

 ちなみに筆者の両親はその人とほぼ同じ位の年齢だが、韓国や北朝鮮、それに関係するものを毛嫌いしている。
 なぜかと言えば、日本で紹介される彼の国の愛国的・反日的主張は「戦中の日本を思い出すから」という。

 だが、「韓流」なるものに熱を上げたり、韓国をやたらと持ち上げて讃える同じくらいの年齢の日本人も結構いた訳だから、人間なんて、いい加減なものである。

 でも、それが一番怖いことなのでは?

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南山中腹で、なぜか上着を翻すヤッさんの勇姿…


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Vol.515 臥龍洞を行く [韓国カルチャー]

 ソウルの江北にある、臥龍洞(서울 종로구 와룡동)は、安国洞に隣接する小さな一区域である。

 有名な仁寺洞界隈から徒歩で7,8分程度だが、寂れた空気がいつも漂っている。

 秘園の脇に沿って、鍾路三街まで伸びる狭い裏路地には韓式の平屋が林立し、昔のソウルをちょっと忍ばせる雰囲気がある(道端に転がる犬のウンコには注意しましょう)。

 近所にソウルの代表的観光スポットが幾つもあるのに、街には活気がない。
 だが、それがここ独特の落ち着きを生んでいるともいえる。

 いつも人影はまばら、まだまだ古い旅館にラブホテル、生活臭が漂う個人経営のスーパーがあったりと、観光客を呼びこむような明媚さとは程遠い場所だが、急速に失われつつある「リアル・ソウル」の一端を見るようでもある。

 ここ数年、旧家屋や宿泊施設を改造した外国人向けのリーズナブルなゲストハウスが急増し、それに伴って外国人観光客の姿が一応増えた。
 時には地元の人よりも外国人の方が多く街を闊歩しているように見えるくらいだ。

 だから、表通りにはそういった客層を狙ったお店が随分増えたが、どうみても商売繁盛に見えなかったりするのが、やはり、この街らしい。

 臥龍洞から北西へ10分ほど歩いたところに今ではおしゃれな地として再生した北村洞があるが、ここと比較すれば、臥龍洞は昔ながらの町並みを観光資源として活用し損なったようにも思える。

 でも、仁寺洞や北村洞界隈が外国人向けのつまらない街角になってしまったことを考えると、昔の記憶がそのまま停止しているような臥龍洞には、それゆえの魅力があり、その程よい汚さと貧乏臭さには、なにやらホッとさせられるのであった…

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Vol.494 テコンV再び!にならなかったけど [韓国カルチャー]

 2011年末、『ロボット テコンV』の大型フィギュアがリペイント、リニューアル版として再販売された。
 筆者が記憶する限り、大型ソフビ版の発売は、これが三回目である。

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実際の量産品はポスターとは違い、仕上げが雑です

 最初に販売されたバージョンは、模型屋だとかキャラクターショップの店頭にわりと普通に並んでいたが、かなり高額で手が出せなかった(日本¥のレートも低かった)。
 色は暗めのブルーが主体で、ポスターなどのイメージに近い。

 二回目に発売された限定版は予約通販のみであったため、その存在すら知らず、たまたま韓国のコレクター氏が持っているのを偶然見て知ったレア製品であった。
 特徴としてはキム・チョンギ監督のサインが箱に入っており、『テコンV』本体の色が明るいグレー中心にペイントされていて、劇中の設定に近い。

 最初に販売されたものと、今回の製品は原型が同一であるかどうか不明だが、リニューアル版には肩と腕にラチェット式ジョイントが内蔵されて動くようになっている。

 このリペイントされたバージョンはかなり早くから模型店などで予約が始まっていたが、既に『テコンV』ブームが過ぎて久しく、あまり話題になっていなかったような気がする。

 私もすっかり物欲が失せていて、購入の機会を逃していたのだが、発売から半年以上経っても普通に通販で購入できる状態、かなり割引された価格だったので買ってみた次第。
 想像するに、あまり売れなかったのではないか?(この製品の紹介が遅れたのは単なる筆者の怠慢です)。

 映画『ロボット テコンV』第一作の復元版が話題になった当時を振り返って見れば、確かにこのシリーズとキャラクターは今だに韓国内で知名度があり、固定ファンもいるが、強力なフランチャイズネタとして多角的展開させるには、色々と運が悪いコンテンツだったとも思う。

 復元版が韓国でスマッシュヒット、「次は『テコンV』を世界に売り込め!」状態だった頃ならいざ知らず、ソル・ギョング主演の実写版も頓挫した今(日本で報道されるかなり前から頓挫状態だった)、まだまだ、高級おもちゃが大人の趣味として浸透していない韓国で、こんなにデカくて高額な自国産キャラのフィギュアが発売されても、「時すでに遅し」といった感は免れず、韓国のマニアからすれば、ガンダムのパーフェクト・グレードでも買った方がマシかもしれない。

 フィギュアを手にしてまず目を引くのが、韓国の製品らしく、外箱がとにかくデカイということだろう。

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左の定規は40センチ

 開けてみると人形自体は全高40センチなので、もっとシンプルな包装でもよかったと思う。
 なぜなら、韓国の住宅事情は日本と大して変わらないからだ。

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左がソフビ版、右が合金版


 『テコンV』本体の造形は、元がアニメーションキャラなので賛否両論別れるだろうけど、前に販売された合金製よりも個人的にはアニメーションのイメージに近いと思うし、ソフビ成形ゆえ、モールドや仕上げが荒くてもそれが味になっている、という点では得をしている。

 全身に施されたディテールは、おそらく現在オフィシャルになっている設定に準じたものらしく、合金製のものとよく似ているが、スーパーロボットとしては、解釈の方向が違っているような気もする。

 腹部はハッチのモールドがそれらしく彫られているが無可動、頭のドームも開かない。
 ここら辺は『テコンV』におけるメカニック設定の肝でもあったと思うので、何かひと工夫欲しかった。
 こういった点、日本のキャラクター製品は芸が秀でている。
 
 肩から腕にかけてはそこそこ動くが(関節はユルユル)、手首は外れず、形状も拳のみでオプションは無い。 

 下半身については無垢・無可動だ。
 このサイズで「ネリチャギ」などの蹴りを自由に取ることが出来る仕様は現実問題として、おそらく無理だったと思われる。

 『テコンV』の合金版も下半身は無可動になっており、「蹴り」の姿勢はとれず、その少し前に出たフル可動のフィギュアだけが「蹴り」のポーズを取れる唯一の製品であったが、これは材質が軽く、サイズも小型だったからだ。

 だから、大型ソフビ版が「でくのぼう」同然に成らざるをえないのは仕方ないのだけど、せめて手首くらいは外れるようにして、他にチョップなどのオプションを付けて欲しかった。
 「ロケット手首!(※)」遊びが出来ないのは、至極残念である。
(※)『ロボット テコンV』では作品時期により、「ロケット手首」「ロケットパンチ」と異なった呼び方をします。

 顔の造形については、否定的な意見もあるだろうけど、これはこれでいいと思う。
 『テコンV』の頭部も鉄腕アトムの頭同様、矛盾に満ちたデザインであり、面取りがよく分からない構成になっているから、こんなものだろう。

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 ちなみにオマケとして「ヤカン・ロボット(깡통로봇)」の立像が付いてくる。
 このヤカン・ロボットは『テコンV』シリーズにおける、もう一つのアイコンなので、フル可動仕様の製品化を、敵メカ「コムド・ロボット」などと並んで、切望したいキャラである。

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これだけなら単品でも入手可能(右は合金版付属のもの)

 『テコンV』を日本のアニメキャラに負けない国際的なフランチャイズに育てるという、いかにも韓国らしい野望が挫折した現在、『テコンV』関係の高品質製品が新たに発売される可能性はそうそう無いとは思うけど、どうせなら日本のメーカーで一から十まで開発できれば(※)、韓国のファンも嬉しいのではないかと、この無駄にデカイ『テコンV』を箱から出すたびに、いつも思うのだった。
(※)1/42スケールのポリストーン製(樹脂石膏製)胸像の開発は日本となっています

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Vol.484 恐怖の地下道 [韓国カルチャー]

 今では過剰な宣伝が控え目になった韓国の美容整形だが、かつては「整形前、整形後」の写真広告が、それこそ壁一面に貼られていた場所があった。
 地下鉄三号線「新沙駅」の出入口に繋がる地下道だ。

 元々、この駅周辺には美容関係の病院が集まっていたことから、その手の広告が多めだったが、行政が医療観光に力を注ぎ始めてからは、歯止めが効かないくらいエスカレートし、凄まじい光景が広がっていた。
 あまりにも醜悪なので、私は密かに「おばけ屋敷」と呼んでいた。

 だが、モデルになった女性たちがよくここまで自分を晒すことが出来たな、と実は感心もしていた。
 広告塔になることで、なんらかの見返りがあったとは思うのだが、こうも生々しい「整形前、整形後」を堂々とさらす様子には圧倒されるものがあって、壮快さすら、漂っていたのである。

 どの顔も「整形前、整形後」両方に同じような特徴があって、似通った顔立ちが多く、総じて顎と目、鼻に手を入れていた。

 顎の周辺を手術している場合、顔の輪郭が変わっているので、かなりの大手術だったことは想像に難くなく、これでは死亡者が出ても不思議ではないし、後遺症に苦しんで薬の依存症になるのもうなずける。

 目の形状には流行りみたいなものがあるらしく、綺麗に可愛く整形したのはいいものの、皆同じような形になっていて、整形モロばれ、みたいな顔。
 これでは化粧や髪型で大きくカバーしないと誰が誰だか分からなくなりそうだ。

 これらの広告は一種の「美容整形カタログ」も兼ねていて、韓国の女優やタレントには不自然な整形が多いことがよく分かったりもしてしまうのだが、個性を活かしたブサイク系やカワイイ系の台頭が目立つようになってきているのは、整形に対する批判を回避する意味があるのかもしれない。

 ただ、芸能人がある程度、美容整形に依存するのは、やもをえないことだろう。
 男優も例外ではなく、プチ整形や美顔、ハゲ隠しは普通のことだが、これは仕方ない。

 一般論として美容整形は、手術したのが分からないことに価値があると思うのだが、韓国はとにかくアピールすることと、プロセスよりも結果が第一なので、バレたとしても開き直って言い訳すれば、それでオシマイだし、成功のチャンスを得られるのなら、それもまた方法論の一つである。

 私の周辺には、露骨な美容整形を感じさせる美人も美男子もいないので、施術を受ける人たちの本音はよく分からないのだけど、韓国における美容整形とは、韓国の「見栄文化」が行き着いた一つの形とも言えるかもしれない。

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いまは以前の面影なし。


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Vol.480 とっつあん坊やがデスメタります!『내 심장의 전성기』 [韓国カルチャー]

 時は現代、舞台はインチョン。
 そこは年中派手なTシャツに黒い革ジャン、ジーンズで身を固めたロックなおっさんが経営するロックなライブ&伝統居酒屋だった。
 厨房を預かるのも髭のロックな野郎だ。
 だが、ある夜、そこにプロを目指す高校生のパンクバンド「カルシウムとマグネシウム」の面々が訪れ、腹の突き出た冴えないオヤジを巻き込んで騒ぎを起こしたことから、男たち再生のドラマは幕を開ける。
 社長최광현こそ、1980年代に若者たちの間でカリスマとして人気を誇った伝説のヘビーメタル・バンド「核爆発」のボーカルだった!

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 2014年4月3日から6月1日まで、ソウル・恵化の대학로 자유극장で上演された손병호主演の『내 심장의 전성기』は、日本では分かりにくい韓国の音楽シーンを垣間見せてくれる楽しい作品だ(日本で売られているK-POPが主流だと思ったら、それは大変な誤解です)。
 映画で言えば이준익監督の『라디오 스타』や『즐거운 인생』なんかに重なる物語でもある。

 舞台はのっけから仮面を被ったミュージシャンがドコドコと重低音を響かせて派手なパフォーマンスをかましてくれる。
 おそらく、ライブ用のアンプとスピーカーも使っているのだろう、床も座席も揺れまくり、舞台の上では仮面のボーカルが飛び跳ねる。
 そして歌い終わって仮面を脱げば、その男はあの손병호なのだ。
 やがてソロでバラードを歌いだすけど、日頃のイメージとは180度異なる今回のキャラクターに観客は大喜びだった。

 손병호も映画のバイプレーヤーとして売れるにつれて、演劇からは自動的に遠ざかってしまった一人だろう。
 まったくやめた訳ではないけれど、中々その舞台を観ることが叶わない俳優だったのである。

 歳もそれほどとっているわけでもなく、まだまだおっさん盛りといった風情だが、映画では老け役かつ静的な役が多いので、今回の舞台は多くの観客にとって驚きだったと思う。
 実際、映画とは雰囲気も演技も全く別物で、韓国映画業界は彼のことをホントは上手に使えていなかったのでは?とも思った。

 ちょっと驚いたのは、メタルもやるけど、オーソドックなギターも、ちゃんと弾けることだ。
 音楽で食べてゆくにはイマイチのレベルなんだけど、こんなに音楽依りの俳優とは予想外だった。
 かつて音楽ドキュメンタリー映画『좋아서 만든 영화』で、あるバンドの路上演奏ぶりに感心し、彼がメンバーにいきなり話しかけるというアクシデントが描かれていたが、あれって、そういうことなんだと、改めて納得。

 腕の良いディレクターと組めば歌によってはそれなりの仕上がりになりそうな感じだ。
 韓国の舞台俳優は一般的に歌が上手というイメージがあるが、それをミュージカルではなくても惜しげもなくさらけ出してくれるのは、とてもいいことだと思う。

 主人公を支えるかつての仲間たち演じる面々も味があっていい俳優ばかり。
 決してメジャーではないが、ちょこちょこと映画で活躍している人たちだ。
 特に전일범演じる박社長が正体を晒して、ベースギターをかき鳴らす様は感動的である。

 若手の中では飲み屋で働く정유役の윤충が印象的、非常に声が良く、体も鍛えており、個性も演技力もある。
 韓国では割りと普通にいるルックスではあるけれど、スターとしてブレイクしてくれると嬉しい。

 紅一点、主人公の娘보람演じた이아이は、残念ながら最も俳優として未熟で、不要に思えるキャラでもあったから、違和感がある。
 まあ、周りが周りなので、今回はベテランの胸を借りました的なキャスティングだったんでしょう。

 話自体はおっさんのヘビメタに女子ボクサーと、以前どこかで観たような内容、同じヘビメタ物でも『에어로빅보이즈』の方が遥かに面白いが、出演者が一体になって繰り広げる音楽パフォーマンスはこちらの方が楽しい。

 손병호くらいのスターになると、公演スケジュールは本人が自由自在に決められるとのことだが、最近はあまり映画にも出なくなって来ているので、彼もまた積極的に舞台に戻って来てくれると、いいなぁ~と思うのであった。

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Vol.472 ゲストハウスが大増殖中 [韓国カルチャー]

 ここ何年か、韓国ではキモ入りで観光事業に力を入れたせいか、ソウルにおける外国人向けのリーズナブルな宿が一気に増えた。
 料理屋跡だとかラブホを改装した施設である。
 こうした宿泊施設が少なかったことがソウルの欠点でもあったし、幾つかは日本から直接予約できるようになったので、外国人としてはとてもありがたい時代になったと思う。

 かつて韓国を訪れる外国人は銭を持っているだろうという暗黙の前提が受け入れる側にはどうもあって、平気で高額なホテルや模範タクシーを斡旋されたものだが、「ケチな外国人ビジター」が増えて久しいので、そういうことも無くなった。

 私がよく使う宿もいわゆるゲストハウス系なのだが、年々近所には似たような宿が増殖しており、「ゲストハウス村」の様相を呈し始めている。
 逆にここまで増えてしまうと初めての利用者は混乱してしまうだろうし、評判のいい宿が過当競争で経営難に陥ったらどうするんだろう、なんて心配をしてしまうくらいだ。

 この種の宿は昔から「旅館」という名前で幾つかあって、コアな韓国旅行者がよく使っていたが、再開発余波で一挙に姿を消し、逆に長期滞在型のヴィラが増えた。
 だけど、このヴィラ、設備はいいけど、とてもじゃないが高すぎて使えない。

 だから、安いゲストハウスが増えたことはとてもいいことなのだが、やっぱり問題は個人の零細経営で不安定ということだろう。
 宿代を上げれば客は減るだろうし、サービスの質を落とせば、やっぱり減る。
 従業員は最低でも英語・日本語・中国語必須だが、言語能力が高くてホスピタリティの志を持つ人材を安いギャラでそんなに簡単に雇えるわけもない。
 そして必ずつきまとうのが場所柄、再開発による立退きの可能性だ。

 開発の遅れた場所だから宿代も安く抑えられる訳だが、再開発工事はいつも突然が始まる。
 韓国ではみんな年がら年中引っ越しばかりしているので、開発に伴う移転や廃業はあまり気にならないんだろうけど、日本人にとってはその落ち着きの無さもまた、彼の国でストレスが鬱積する原因の一つかもしれない。

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Vol.464 八面六臂!な박철민 『그와 그녀의 목요일』 [韓国カルチャー]

 2013年11月29日から2014年1月19日まで、大学路にある「대학로 문화공간 필링」で『그와 그녀의 목요일』のアンコール上演が行われた。
 今回主演の一人정민を演じたのは조재현と박철민、정은표のトリプルキャストだったが、私は박철민の舞台を一度観たいと思っていたので、彼の出ている回を選ぶことにした。
 俳優として個性がかなり異なる三人なので、同じ戯曲でも정은표版と조재현版では全く違った印象ではないだろうか。

 上演が行われた「대학로 문화공간 필링」は大学路の山側に沿った方の裏通りにあり、以前『笑の大学』を観たのもここであった。
 上演が行われた地下にある一館は設備がなかなかよくて、座席前スペースがもう少し広ければ、という感じだ。
 大人の男性にはかなり辛い狭さだが小劇場のようにパイプ椅子でない分、まだマシかもしれない。

 当日は割引デーだったので良い席をかなり安く入手できてラッキーだったが、意外と客がいなかったのもこれまた意外だった。

 最近韓国の演劇チケットは総合通販サイト「Inter Park」を通して一部日本でも直接購入できるようになり、その事自体はとてもありがたいのだけど購入できる演目が偏っていて、『그와 그녀의 목요일』のような作品は当然ない。
 仕方ないといえば仕方ないが、日本向けマーケットが都合よく情報統制されているようにも見えるから、ちょっと、いや~な気もする。
 2013年末は例のミュージカル『영웅』も公演していたが、当然日本向け「Inter Park」の画面では紹介すらされていない。

 今回の『그와 그녀의 목요일』は非常にシンプルな舞台美術から成っていて、椅子が幾つかと巨大なテーブル一つ、後はホリゾントに投射されるイメージのみ。
 
 物語はある中年男女の関係を学生時代から現在に至るまで、それぞれの愛と葛藤、人生の軌跡を交差させて描く内容だ。
 ひたすら回想をカットバックさせる構成に、コテコテの人間模様は典型的な韓国らしい現代劇と言えるかもしれない。
 主人公たちが全羅南道出身ということになっているので、当然ながら光州事件が重要なファクターになっていたりする。

 主演の박철민が故郷・光州に大変こだわっていることは有名な話であり、どうして彼がこの舞台に出演しているのかは結局そういうことなんだろうと思う。
 日本ではテレビや映画にちょい役でやたら出ている人みたいな印象が強いかもしれないが、実際は主演を張れるステイタスとキャリアを持った俳優である。

 舞台上の彼は映画やTVで見せるイメージそのまんま。
 だから私のようにスタイルの違いを求める観客にとってはちょっと肩透かしだったかもしれない。
 もちろん演技そのものは非常に安定していて、ぶれは一切ない。

 一方、良くも悪くも想定内の박철민と対照的だったのが相手役연옥を務めた정재은だ。
 これがまた、実にカッコいい人なのである。
 彼女に限らず演劇を中心に活躍している40歳代以降の韓国女優陣には、とてもカッコいい人が多い。
 そこら辺が余計な情報操作のせいで日本に伝わりにくいことは、ちょっと残念な気がする。

 上演を終えてロビーでファンに囲まれた박철민のリアクションは舞台そのままだ。
 快くファンらと一緒に写真に収まる様子を見ていると、チケットがバカ高いどこぞの舞台では決して観られない観客と俳優のGIVE &TAKEを改めて感じるのだった。

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