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Vol.190 柔らかき韓国インディーズ映画の砦たち [韓国映画]

 ここ二、三年の韓国映画興行風景において、もっとも変化があったことのひとつに、独立系やアート系といった作品を、国内外のものか否か関係なく上映するミニシアターが増えた、ということがある。

 韓国映画がバブルでこの世の春を謳歌していた時分、国内で上映される映画が、ハリウッドメジャーと、韓国製純商業映画一色になりかけたことがあった。

 この異常な状態を危惧する国内の声は、当時もちろんあったが、そんなことより世間は「韓国映画の市場占有率の高さ」に酔いしれて、浮かれているばかりだった。

 だが、それがいつまでも続くほど韓国は狂った社会ではない。
 こうした偏った市場状況を経て、その反動のように、今ミニシアターが拡がっていることは、韓国映画バブルが生み出した予想外の皮肉かもしれない。

 ミニシアターの尖兵として、ソウルでもっともお馴染みなのが、光化門の「シネ・キューブ」、仁寺洞近くにある「フィルム・フォーラム」、ソウルに三軒ほどある「スポンジハウス」だろう(他にもあるが、場所が不便なので割愛)。

 その中でも、元々、海外のアート系作品の配給を細々と手がけていた㈱スポンジが運営する「スポンジハウス」は、今や韓国マイナー映画の砦になりつつあるといっても、いいすぎではない。

 あのキム・ギドクの新作も、このスポンジハウスがあるから、昔のように「あっという間」に劇場から消えなくなったワケだし、それは他の作家主義を旨とする監督たちの作品にとっても同じ事だろうと思う。

 韓国内最大手の配給・製作会社CGVは、自前の劇場チェーンにいくつか「インディー館」を設けてはいるものの、実際は有名無実化して久しく、ラインナップも投げやりで、魅力に乏しい(イベントだけは派手なんですけど…)。

 シネカノン明洞も、アート系作品を積極的にかけてくれる方だが、私はあの場所が好かないのであまりいかないし、ここはどちらかといえばシネカノン経由の日本映画専門館という性格が強い(などといっているうちに閉館…)。

 現在、スポンジハウスはその主軸を、清渓川鍾路側にあった旧シネコアから、乙支路側の中央劇場に移して興行を続けているが、その他にも、光化門と狎鴎亭に劇場がある。

 この二つは、十五年くらい前の渋谷系ミニシアターによく似た雰囲気の劇場で、端から「興行は二の次」的な装いが、韓国ではちょっと珍しい。

 どこにあるのか、非常にわかりにくく、狎鴎亭は特にひどい。
 まるで「関心のない人はこなくていいよ」とあからさまに表明しているような映画館だ。

 鍾路から乙支路に移動したスポンジハウスが現在、プログラムの一部を企画している中央劇場は、元々、江北では老舗の映画館としてよく知られた劇場だった。

 老朽化が著しく、この先どうなるのかな?と思っていたが、ここ一年ばかり、アート系作品に強い劇場へと、変貌を遂げつつある。

 今の韓国・SEOULは、スポンジハウスなどの躍進したおかげで、ちょっと前だったら、映画祭にでも行かないと観られないようなインディーズ系韓国映画を確実に観ることができるようになったことは、とてもいいことである。

 中には、「金をとって上映する価値があるのか?」と疑問に思うような作品もあるにはあるが、ここ最近は、スターの出ている一般的商業作よりも、こうした低予算インディーズの方が、きらきらと輝き始めていることは事実だ。

 明確に断言できないことではあるが、日本の一部ズレた人たちが「韓流、韓流、韓流」と口から泡を吹きながら、騒いでいる内に、韓国映画界のコアな部分に「アンチ韓流、そして韓国インディーズ」な黄金期がやって来る時は、案外早いかもしれない。

 中央劇場の「インディースペース」では本編上映前に、ちょっとしたアニメーションが流されるが、これが素朴でとてもいい作品だ。

 ぜひ、きちんと紹介したかったのだが、いくら問い合わせても梨のつぶてなので、機会がある方は是非、劇場で見て欲しい。

シネカノン.JPG

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