SSブログ

Vol.235 誰でもモーレツになれるワケではないけれど [韓国映画]

 イ・ミョンバク現韓国大統領が「現代建設」時代の人生を中心に綴った『李明博自伝(신화는 없다)』を読む。

ミョンバク1.jpg   ミョンバク2.jpg


 一種のビジネス啓蒙書であり、内容も内容だから、嫌いな人には嫌いな本かもしれないが、私にとっては、“もうひとつの韓国現代史”として、なかなか面白かった。
 格別当時の風俗を繊細に綴っているわけではないけれど、奇しくも企業の勃興期と国家の勃興期両方を、トップランナーとして猛烈に突進し続けたサラリーマン一代記として、当時の空気が漂ってくるような本だったからだ。

 この時代、日本における韓国のイメージは物凄く悪くて、今でも当時の市井の暮らしであるとか、風俗だとかを、日本人が皮膚感覚で理解するのは難しい。
 当時、ソウルに日本人留学生がいることはいたが、ホンの二、三十人くらい(経験者から聞いた話)。
 だから、直接その時代で見聞きした韓国のリアルを聞くチャンスはなかなかない。

 そういう日本では分りにくい部分が、この本からは伝わって来たことがまず面白かったんだけど、レース仕様のブルドーザー如く、猛烈に突き進む著者の青春は、かつての明治以降や戦後の日本人たちもまた、こうだったんだろうなぁ、とつくづく感じさせるものがあった。
 私は李明博氏の支持者でもなんでもないし、現代グループにも興味ないが、「モーレツ人間記」として、この本で描かれる人間像に、どこか懐かしい感慨を抱いたのだった。

 また、韓国特有の部下と上司の関係、組織と個人の関係、そこから来る問題など、今の韓国でも相変わらずなものが描かれているので、韓国的人間関係や組織問題を理解する上で、けっこう参考になる部分も多かった。
 それは日本と韓国の、必然的差異でもあるんだけど、韓国に初めて行かれる方は、グルメとショッピングとエステにまみれたガイドブックなんか読むよりも、この本を読んで、地図を片手に(もちろん、漢江北以外がきちんと書かれた地図)街を歩いたほうが、面白い事象に出会えるかもしれない。

 そういえば、2008年の秋に公開されて失敗した韓国映画『고고70(GOGO70)』は、ある意味、この本で欠落している部分を、偶然にも描いていた作品だったと思う。
 映画の出来栄えはたいしたことないが、日本で公開される機会があれば『李明博自伝(신화는 없다)』を事前に読む事をお薦めしたい。

gogo702.jpg

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………

2008年度の記事はこれが最終となります。2009年度もまた、よろしくお願いいたします。 >さるすべり(ソウル某所にて)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。