Vol.311 韓国式フィルム・ノワール傑作降臨!!『アジョシ/아저씨/おじさん』 [韓国映画]
2010年8月4日に韓国で封切られた『아저씨/おじさん』は、韓国映画の次の未来を予見させる傑作だ。
ここ十年間に製作された韓国式フィルム・ノワールの中で、もっとも傑出した作品といってもいいだろう。
場末の質屋で働く謎の男、彼を慕う幼い少女、そして悪魔のような闇の組織。
その構図はL・ベッソンの『レオン』を連想させるが、この名作にリスペクトをはらいつつも、もっと救いのない、暗くてハードな世界が展開する。
男には国家の暴力装置として特別な訓練を受けた報われない過去がある。
それゆえに男は全てを失い、孤立無援だ。
そして少女を救うために、封印したはずの戦闘力を再起動させざるをえなくなる。
全編、映画的エモーションに満ちた素晴らしいシーンが連続すると共に、顔を背けたくなるような激しい暴力と残酷描写が美しさをたたえて、過激に炸裂し続ける。
だが、そこに一貫しているのは、洗練された映像美と、諸行無常のハードボイルド感覚だ。
基本的にギャグとメロを廃し、最初から最後まで退廃した救いのない現代社会のプリズム・イメージが交差する。
マンガチックなキャラクター群も秀逸で、ところどころにほのかなユーモアを漂わせるが、理知的な制御は、映画のリズムを決してブチ壊したりしない。
「아저씨」ことチャ・テシク演じたウォン・ビンは、『마더/母なる証明』以来、それまで周囲に引きずらされ続けていた「安っぽいアイドル」イメージから脱却すべく、慎重に役を選び、役を作り上げているが、この『아저씨/おじさん』でまた一歩、前進したようだ。
トータルにいえば、やや役不足であることは否めないし、髪を切った途端、それまでのハードな雰囲気が霧散していつものウォン・ビンになってしまったことは残念だったけど、好演だったことに変わりはない。
監督のイ・ジョンボムは前作『熱血男児/열혈남아』でも、容赦ない無慈悲な物語をメロと優れた映像美とファンタステックですらある韓国の超日常の風景を添えて描いたが、今回の『아저씨/おじさん』はそれらの美徳を全て備えつつも、全く別の形で開花させた。
『熱血男児/열혈남아』では大根役者チョ・ハンソンを化けさせたが、今回それがキム・テフンであったとすれば、俳優の素質を導き出す手腕においても、ちょっと侮れない才能といえそうだ。
一般的な映画論で括ってしまえば、いくらでもケチをつけられるし、韓国嫌いや韓流好き両方からも拒絶されそうな作品ではある。
だが、それゆえ、この『아저씨/おじさん』は孤高の韓国映画として輝き続ける可能性を秘めているのだ。
ここ十年間に製作された韓国式フィルム・ノワールの中で、もっとも傑出した作品といってもいいだろう。
場末の質屋で働く謎の男、彼を慕う幼い少女、そして悪魔のような闇の組織。
その構図はL・ベッソンの『レオン』を連想させるが、この名作にリスペクトをはらいつつも、もっと救いのない、暗くてハードな世界が展開する。
男には国家の暴力装置として特別な訓練を受けた報われない過去がある。
それゆえに男は全てを失い、孤立無援だ。
そして少女を救うために、封印したはずの戦闘力を再起動させざるをえなくなる。
全編、映画的エモーションに満ちた素晴らしいシーンが連続すると共に、顔を背けたくなるような激しい暴力と残酷描写が美しさをたたえて、過激に炸裂し続ける。
だが、そこに一貫しているのは、洗練された映像美と、諸行無常のハードボイルド感覚だ。
基本的にギャグとメロを廃し、最初から最後まで退廃した救いのない現代社会のプリズム・イメージが交差する。
マンガチックなキャラクター群も秀逸で、ところどころにほのかなユーモアを漂わせるが、理知的な制御は、映画のリズムを決してブチ壊したりしない。
「아저씨」ことチャ・テシク演じたウォン・ビンは、『마더/母なる証明』以来、それまで周囲に引きずらされ続けていた「安っぽいアイドル」イメージから脱却すべく、慎重に役を選び、役を作り上げているが、この『아저씨/おじさん』でまた一歩、前進したようだ。
トータルにいえば、やや役不足であることは否めないし、髪を切った途端、それまでのハードな雰囲気が霧散していつものウォン・ビンになってしまったことは残念だったけど、好演だったことに変わりはない。
監督のイ・ジョンボムは前作『熱血男児/열혈남아』でも、容赦ない無慈悲な物語をメロと優れた映像美とファンタステックですらある韓国の超日常の風景を添えて描いたが、今回の『아저씨/おじさん』はそれらの美徳を全て備えつつも、全く別の形で開花させた。
『熱血男児/열혈남아』では大根役者チョ・ハンソンを化けさせたが、今回それがキム・テフンであったとすれば、俳優の素質を導き出す手腕においても、ちょっと侮れない才能といえそうだ。
一般的な映画論で括ってしまえば、いくらでもケチをつけられるし、韓国嫌いや韓流好き両方からも拒絶されそうな作品ではある。
だが、それゆえ、この『아저씨/おじさん』は孤高の韓国映画として輝き続ける可能性を秘めているのだ。
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