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Vol.389 愛することさえ許されない 『두 번의 결혼식과 한 번의 장례식』 [韓国映画]

 
(あらすじ)
総合病院に勤務するゲイの若手医師민수(=김동윤)はフランス留学から戻った後、家族や周囲への建前上、韓国男子として生きてゆくために、同僚の女性医師でレズビアンの효진(=류현경)と偽装結婚をする。
민수は実質フリーだったが、효진には、서영(=정애연)という大学時代からの連れ合いがいた。
민수には、よく通う女人禁制のゲイバーがあり、ママの경남(=이승준)の元、常連達が集い、愚痴をこぼしている。
ある日、민수は階段ですれ違ったミュージシャンの석(=송용진)に運命の出会いを直感し、やがて二人は恋人として付き合い始めるが、석には結婚を控えた弟(=유연석)がいて、彼は兄がゲイであることを激しく非難していた。
やがて、민수と서영の間にも危機が訪れる。
효진と서영の夫婦関係が嘘ではないかと、病院内で噂になってしまったのだ。
同性愛者が迫害される韓国に嫌気がさした민수は、석に一緒にフランスに行くよう迫るが、석はそれを拒否する。
傷心の민수は、泥酔した夜、友人の티나(=박정표)の元に泊まる。
티나は優しい性格だったが、パートナーに恵まれず、いつも傷ついていた。
何事もなく一夜を過ごした二人だったが、민수がiPhoneを置き忘れたことから、思わぬ悲劇が訪れる。
 2012年6月21日に韓国で公開された김조광수監督の新作『두 번의 결혼식과 한 번의 장례식』は、韓国で生きるゲイピープルの喜怒哀楽を独特のタッチで朗らかに描いた作品だ。

一回葬式二階結婚.jpg

 厳密にいえば、韓国で酷い偏見と差別にさらされる彼らの苦悩を切実に描いているが、決して深刻に、憂鬱に陥ること無く、明るい未来志向にあふれた物語になっている。

 日本でもそこそこ反響があった前作『친구 사이?』は、一時間を切る中編であり、兵役に就く社会人未満の若者が主役だったが、今回は106分の長編、登場するキャラクターは、社会的地位のある大人たちだ。
 
 物語の焦点はあくまでも男たちなので、女性たちの描き方はどうしても弱いが、효진役の류현경の小悪魔ぶりと、서영役の정애연のボーイッシュな魅力は、映画が単調になることを防いだ。

 だが、この『두 번의 결혼식과 한 번의 장례식』で一番の忘れがたいキャラだったのは、やはり박정표演じる、티나だろう。

 티나は心優しく朗らかだが、その容姿ゆえ、恋人に恵まれず、本当はひどく傷ついてもいる。
 家族も決して彼のことを理解しているわけではなく、愛犬광수だけが心の拠り所だ。
 彼は姉の雑貨屋を手伝っているだけの貧しいフリーターに過ぎず、相手を探してゲイバーで使うお金の捻出だって、決して楽ではないはず。

 一方、彼の友人である主人公の민수は、その티나と対照的な位置にいる。
 なぜなら、彼らは医者という仕事に就き、いつでも韓国を捨てることが出来る裕福なインテリだからだ。

 最初は単なる笑わせ役かと思われたテナだったが、物語が進行するにつれて、この『두 번의 결혼식과 한 번의 장례식』という作品が、セクシャリズムの問題を超えた、人の平等・不平等も描こうとしていたことに気付かされる。

 考えすぎかも知れないが、ここにもまた、ジェンダーの問題を超えて、韓国の格差問題が見え隠れしているのである。

 さて、この作品を観た当日、監督の김조광수がゲストとして劇場を訪れ、ディスカッションを行った。
 近所に事務所があるらしい。

 鉄腕アトムが描かれた真っ赤なTシャツを来て現れた、モジャモジャ頭の彼は、写真で観るよりも男っぽく、落ち着いた佇まいだ。

 海外でもゲイ恐怖症の人々が韓国に劣らずいることや、初めて監督として参加した釜山交際映画祭では煌々たる巨匠に囲まれ、びびった話などを面白おかしく語るけど、基本的には真面目な感じの人であった(でも基本はオネエです)。

 困ったことに、彼が語る時間は、どんどん伸びて行き、21時から始まって、一時間程度で終わるかな?と思っていたのだが、23時30分過ぎても終わらない!
 そして、そんな김조광수の姿を見ていると、あるデジャブが襲いかかる。

 誰だっけ?誰だっけ?誰だっけ?どこかでよく見かけたような…
 そうだ!
 楳図かずおだ!

 そう、김조광수という人は、漫画家の楳図かずおに、キャラクターが、よーく似ているのだ。

 劇場から退出する際、観客の一人ひとりに「ありがとうございます」と謙虚に頭を下げる彼を見ながら、楳図かずおと対談やったら、面白いなぁ~などと、どうしても考えてしまうのだった…
(ちなみに、観に来た男性客は三人程度、内二人が私を含めて外国人、後は女性客ばかりでした)

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