Vol.388 ハチャメチャ空軍大戦略 『R2B 알투비 리턴투베이스』 [韓国映画]
(あらすじ)2012年8月14日に韓国で公開された『알투비:리턴투베이스』は完成までに一年かかった労作である(某友人談)。
韓国空軍が世界に誇るエリート部隊「ブラック・イーグル」。
そこに所属するパイロットの태훈(=비こと정지훈)は、これまた韓国が世界に誇る一応、国産のジェット機T-50Bを使ったエアショーでの曲芸飛行中、リーダーの命令を200%無視して、禁じ手の荒業を勝手に行い、民間人を巻き込んで、大騒ぎを起こす。
だが「ブラック・イーグル」を辞めさせられただけで、韓国空軍が世界に誇るF-15Kの所属する21戦2B部隊に編入するだけで済んでしまう。
そこには、堅物過ぎて突っ立ているだけにしか見えない上官철희(=유준상)がいたが、キャラクターが真逆過ぎて対立、だが、俺様天狗の태훈は、模擬戦闘で、철희に完全に負けてしまい、その天狗の鼻はポッキリ。
悔しくて夜も眠れない태훈は、次の技能大会でリベンジするために、可愛すぎて部隊内の野郎どもに悪影響を及ぼしている美人整備士官세영(=신세경)を丸め込み、ブレインにするが、本当の目的は彼女をモノにすることだった。
やる気のない整備部隊のベテラン士官(=오달수)も篭絡した태훈は、세영へのナンパ工作と、「俺様No.1」の悪だくみを進めてゆく。
同じ頃、北朝鮮のエースパイロットが操るMIG29が故障のふりをして韓国に侵入し、ソウルの永登浦上空でF-15Kと空中戦をやって、大騒ぎを起こすが、明らかに死傷者が多数出ている状況にも関わらず、誰も責任を取らないで済んでしまう。
だが、それは、さらなる大迷惑な前兆に過ぎなかった。
北朝鮮内部では、ウォンサンにある大陸弾道ミサイル基地が、クーデターで乗っ取られるという、とんでもない事態が発生していたのである。
韓国側は、アメリカがポヤっとしている隙に、世界に誇るF-15KとT-50Bで攻撃を開始する。
当然、アメリカ側は激怒するが、韓国側は「我々の問題だ!」と逆ギレ。
T-50Bを操る身勝手태훈は、北朝鮮の悪だくみを阻止して、ワールドワイドなヒーローになれるか!?
韓国史上、一世一代のハチャメチャ空軍大戦略が始まった!
元々は古典的名作『빨간 마후라』のリメイクとして起動した企画で、韓国空軍全面協力の下、ご自慢のF-15Kや、自主開発(一応)のT-50Bが轟音を発ててスクリーンを所狭しと飛び回り、実機ではなくCGIだが北朝鮮のMIG29まで出てくる。
そして永登浦上空で空中戦を繰り広げ、最後は北のエースパイロットとのガチンコ対決に、決死のミサイル基地空爆と、消化不良を起こしそうなてんこ盛り状態。
これだけ聞くと、まさに飛行機好きには堪えられない映画に思えるし、全面協力した韓国空軍も、それを期待していたと思う。
だが、残念ながら、映画はハチャメチャでツッコミどころ満載の珍作になってしまった。
韓国空軍エリートたちの青春群像だけを、地道に描いていれば好編になったかもしれないが、北朝鮮の軍事クーデターに、国際平和をリードする韓国軍の勇姿と、やり過ぎ、欲張り過ぎて空中大爆発。
登場する軍人たちは、信じられないくらいデタラメで自分勝手、常識欠如の連中ばかり。
どう考えても、こりゃあ、マズイんじゃないの????
冒頭から、その稚拙な展開に目を疑う。
一般大衆が集うエアショーで、目立ちたがり屋のパイロット、태훈が勝手に編隊を離れて、禁じ手の技で暴走するという、信じられない行動に出るのだが、「ブラックイーグルス」のメンバーから外されるだけで済んでしまう。
ええ!!?
これが現実なら、かなりの上官クラス辞任問題まで発展すること必至。
いくらなんでも「映画だからOK!」というレベルを踏み外している。
태훈を取り巻く、他の連中もデタラメぶりがひどい。
ヤル気がない先輩パイロットたちはまだ、ご愛嬌としても、勤務中に酒を飲んで泥酔する士官が出てくる有様。
しかも、それをけしかけるのが、またあのジコチューな태훈だったりする。
オ・ダルスは特別出演だが、整備中のF-15Kのエアインテークの中で、平気で昼寝してサボっているような、単なる税金泥棒。
韓国空軍のプロパガンダが目的のはずなのに、よくもまあ、こんなシナリオに空軍からOKが出たものだと呆れてしまう。
これじゃ、遠まわしの軍批判。
北朝鮮側との空中戦は、VFXレベルが高いので、MIG29がCGIでも気にならないんだけど(日本の業界人は嫉妬してケチつけるだろうが)、それを差し引いても、永登浦上空の空中戦は、あまりにも配慮が足りない。
なにせ、MIG29が発射した機関砲弾が街の人々に降りかかり、誤射されたミサイルが関係ない自動車を吹き飛ばし、挙げ句の果てに、63ビルに向けて思いっきりジェットエンジンを吹かすので、中にいる人はたまったものではない。
見せ場としては派手だろうが、その陰で起こっている惨事は全てスルー。
でも、そりゃないだろう。
お手本にしたと思われる『トランスフォーマー』だって、ここまでデタラメではなかった。
北朝鮮側も、単なるヒール。
軍内部のクーデターでICBM基地が占拠されても、大した大騒ぎにならないし、相変わらず中国の「C」の字すら出てこない
当然ながら、事態を収拾するためにアメリカ空軍が出てきて、爆撃を主張するのだが、韓国側は独断でF-15KとT-50を攻撃に向かわせてしまうのである。
どうせ北のミサイルで最終的に迷惑を被るのは、日本というオチかい?
とにかく、最初から最後まで、真面目に勤務している軍人その他をバカにしているとしか思えない映画になっているのだ。
このハチャメチャな展開は、マンガだったら許されるかもしれないし、面白かったとは思うのだけど、映画となれば話は別。
そこら辺を企画側は大きく履き違えた。
大スクリーンで轟音を上げて飛び回るご自慢のF-15Kの勇姿はカッコイイ。
だが、客席には誰もいない。
その対比が、とても、とても哀しい、哀しい映画なのだった。
この映画に出てくる飛行機は全て韓国アカデミー科学からプラモデルとして販売されています(結局、税金を使って一番儲けたのは誰??)。
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