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Vol.435 謎の巨大な“歴史文化公園” [韓国生活]

 오세훈元ソウル市長時代に東大門運動場の撤去が公約、やがて実施され、その跡地に「歴史文化公園」なる謎の施設の建築が始まり、今も続行中であることは日本でも多くの方が目撃、ご存知のことと思う。
 これに伴って地下鉄『東大門運動場』駅は『東大門歴史文化公園』駅へと名前が変わり改装工事も行われて、かつて残っていた数少ないソウルオリンピックの残滓は、ほぼ姿を消した。

 公共施設の取り壊しと建て直しは時代の趨勢だから仕方ないが、どうも気持ち悪いのは「東大門歴史文化公園」というものが、果たして必然性がある施設なのか、ということであり、その目的があやむやでも確実にゼネコン周辺にはお金が沢山入る、ということだろう。
 それは外国人でも明らかに「無駄じゃないの?」と指摘せざるをえないものだ…

…というわけで東大門近辺に行ったついでに前から気になっていた、この謎の施設を覗いてみた。
 まだまだ建設中なのでその全貌は明らかではないが、公園と博物館、そしておそらく何らかのホールを兼ねた建築物らしい。

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 向かいビルの上から観るとそれほど大きく感じなかったが、実際に敷地に足を踏み入れるとかなり広く巨大な施設群で、完成の暁には周りにランニングコースでも設ければ?と思うくらいである。
 だが、その大きさこそ、この施設の怪しさを助長させている。

 中は文字通り公園になっていて、かつて旧・漢陽を囲っていた城壁やら水門やらが掘り起こされ修復されて、歴史的遺構として見学できるようになっているが、歩道の配置が複雑で移動効率が悪い上、無用な昇り降りばかり、気軽に休めるところも少ない。
 これでは疲れた人やお年寄り、体があまり自由でない人にとっては「憩いの場」というよりも「疲れるだけ場所」である。

 福祉の充実がより叫ばれる今の韓国、広大なだけで休むことがロクにできず疲れをもたらすばかりの公園が建設されていることに訪れた多くの人々は不可解さを感じるのではないか。
 どうせ「公園」ならば、全部広場にしてしまった方が良かったのではないだろうか。
 それとも、この微妙に疲れる構造は「韓国が世界に誇る李氏朝鮮の遺構を見学しながら体力増進に努めましょう」という巧妙かつ高尚な韓国エリートたちの企みなのだろうか?

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 建物の幾つかはすでに開館していて定期展示を行なっているが、残念ながらまだまだ仮の展示なので大したことはない。
 現在展示してあるのは写真やパネルを使ったものと、城壁周辺から出土した陶器や道具(正確にいうと生活ゴミのようなもの)であるが、イマイチ貴重な感がないので後生大事に展示している様子には無理があった。

 これまた韓国が世界に誇るデジタル機器を使った展示もあるが(でもプロジェクターにはEPSONと書いてあったりする)、見学者の操作する機材はデカくて重いだけだし、そこから映し出されるものは「別に紙のパネルでいいじゃないか」。
 ショボすぎる展示物に施設案内所のお姉さんもやるせなし、という感じだが、世界に名だたる大都会ソウルでも就業が困難な今、業務に贅沢は言えないからお気の毒である。

 せっかく入れ物は巨大に作ってしまった訳だから、どうせならソウルのあっちこっちに散らばっている博物館と称するものをここにある程度集約すれば、まだマシかもしれないが、龍山のグレートな国立博物館からすれば「こっちに併合しろよ」ということかもしれない。

 敷地内には取り壊された東大門運動場記念館と共にカクテルライトタワーが1基だけ「ちょこん」と残されているが、もう一つ面白いものが野外に展示されていた。
 巨大なカイチ(해태)像である。

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 よく見ると廃棄されたペットボトルで作られており非常に良く出来ている。
 日本でも一時期一部で大人気だったマッコルリのボトルが沢山使われており、こういうのを見ると優れたクリエイターがまだまだ韓国には隠れているんだな、なんてちょっと得した気分になるが、外国のマスコミなんかがこれを取り上げるようになると「我が民族は~」なんていう宣伝をやり始めるんでしょうね。

 だけど、このカイチ像は完全な野ざらし状態。
 「元はゴミなんだから早々に灰塵に帰すべきである」という、これまた高尚な思想の元に企画されたのかもしれないけど、もし環境問題の象徴でもあるのなら、ちゃんと美術館の中とか光化門大通り広場とか、市庁辺りに置いた方がいいんじゃないの?とも思う。
 それの方がより社会的なテーマを汲み取れるというものだ(外国人にも注目されるし)。

 この「東大門歴史文化公園」、完成まで当分掛かりそうなのでいくらフラフラ歩いてみてもその実像をレポート、評価することは現時点ではまだまだ無理だが、それでもやっぱり「他に作るものはなかったの?」という感想にたどり着く。

 選択肢として東大門運動場を立て直すことだって「アリ」だったはずだ。
 なにせ江北の一等地、外国人は沢山来るし、よく知られたソウルの著名な街角でもあるから韓国の行政や企業が大好きな国際的イベント会場に持ってこいだろう。
 江南なんかでやるよりも対外的にはウケそうだし。
 そうすれば国策に沿った、より良いアピールが出来たと思うんですけどね。
(案の定、民間団体がこの『東大門歴史文化公園』を無駄遣いであると最近騒ぎ出しているそうです)

KAKUTERU.JPG

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