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Vol.458 おでんの追憶 [韓国の食]

 遂にその日が来た…というか、いつの間にか来ていたらしい。
 ソウル某所にある行きつけの釜山おでん屋がとうとう、消滅した。

 場所が再開発を辛うじて免れたような古い裏路地だったので、ある程度予想はしていたが、突然だった。
 8月に行った時には「冬にはおでん、ごちそうするからね」と女将が語っていたから(夏は単なる飲み屋になる)、なにか突発的な事情があったのかもしれない。
 汚い裏路地といっても、場所は江北の一等地、近頃は「ソウルの最先端を行くオシャレな街」ということで、日本人も異常増殖していたから、大手デベロッパーの魔の手が伸びても不思議ではない。

 定かではないが、そのおでん屋が界隈に店を構えたのは十年以上前のことだと思う。

 格段旨いわけでもなく、店内は異常に狭くて汚くで、知り合いの在韓日本人を連れて来たところ、ちょっと引いていたくらいだったが、その不便さがウリであり魅力だった。
 お店は決して存在を隠している訳ではないが、どこにあるのかよくわからないので、待ち合わせに使うと初めて来る人や、二回程度しか来たことがない人は、必ず軒先を通りすぎて道に迷うという、「幻の店」でもあった。

 基本的には常連ばかりで一種の秘密サロンのような趣きがあり、客層は様々だが、学生からサラリーマン、映画関係者にミュージシャンと、人々と知り合うにもいい場所だった。

 女将はあしらいのうまい人で、客の顔を覚えてくれるから、それで常連になった人も多かったと思う。
 私も、いろいろ図々しいことをやって、時には怒られたけど、それも、このお店のいいところだった。

 メニューはごく普通の冷凍食品その他だったりするが、どういうわけか女将が調理すると非常に美味しい。
 でも、使っている器具はこれまた普通のガスコンロ。
 友人の一人は、このお店のシシャモが好きだったけど、焼き方が非常に上手だという。

 私はおでんよりも、卵焼きが好きで、よく注文していた。
 ほうれん草か何かが入っているくらいで、やっぱり普通の卵焼きなのだが、家庭料理の良さを凝縮したレシピだった。

 日本ではどこにでもあるタイプの飲み屋に過ぎないが、ソウルでは極個人経営のお店がどんどん消滅し、特定大手企業系列に街を占領されてしまうことが増えた今だからこそ、一層、その存在は光ってもいた。
 たぶん、こういうお店は今後、ソウルでは簡単に出てこないだろうし、実際見かけない。

 女将と店の行方がどうなったかは現在不明だが、とりあえず気長に探って行こうと思うのだった。
 (※Twitterでレポートされているので、興味のある方は探して下さい)

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