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Vol.443 これも一種の産学共同体 『렛 미 아웃』 [韓国映画]

 2013年8月15日の夏休みに公開された『렛 미 아웃』は、貧相ながらも愛すべき好編である。
 上映枠が小規模だったのは残念だが、低予算インディーズでありつつ、商業作品的な内容でウケを狙うという、ちょっと前に流行りかけたタイプの作品だ。
 当然ながら、不当にギャラのバカ高い有名スターは誰も出ておらず、アイドル出身の박희본と임권택監督の次男坊권현상がちょっと顔を知られている程度だが、その他個性的な無名の若手たちによる好演が魅力的な映画になっている。
(Story)
무영は映画学科に通う大学生だ。
プロデビューするには在学中に作品を一本撮る必要があったが、シナリオは出来ても資金目処が立っていない。
だが成功した先輩OB“양익준”監督が講演に来た時、彼に不遜な発言をしたことがきっかけで、逆に製作費助成金W500万をもらえることになってしまう。
무영はゾンビ映画『렛 미 아웃』のシナリオを手に、同級生아영をヒロインに据えスタッフを招集、製作を開始するが、무영のこだわりは아영の反発と降板を招き、撮影は停まってしまう。
아영がいなくなった現場から次々と主なスタッフが離れてしまう中で、孤立無援の무영を再起動させたのは、ゾンビを演じる俳優たちの意外な言葉だった…

letm.jpg
 製作は、OBにチャン・ジン一家を多数輩出して、今じゃ有名校のソウル芸術大学が直接行っているので、映像的には決して貧困ではなく、韓国でよく称される「インディーズ」とはちょっと印象が異なる作品かもしれない(アメリカでもほぼ同時期公開済である)。

 主な撮影は当然、同大学内で行われたと思われるが、設備がなかなか充実していて、日本で公開された暁には、それを羨ましく感じる人もいるのではないかと思う。
 物語はストレートな内輪受け話に過ぎないが、独特の緩いリズムとサラリとしたユーモア、出演陣の魅力が合致して、こういったネタが陥りやすい排他的な内容にはなっていない。
 ありがちな映像テクに走らず、被写体にきちんと向き合っている演出にも好感が持てる。

 무영演じた권현상は劇中、妻夫木聡風のルックスがキュートだが、生真面目さを感じさせ、日本でもそれなりに受けそうな俳優だ(でもウケないで欲しい)。
 今回は見た目はチャラ系だけど、中身は堅物といった風情がうまくマッチしている。
 現在はだいぶ緩いルックスに変わってしまったらしいが、ちょっと今後に注目しても、いいかもしれない。

 ヒロイン演じる박희본は美人なのか、そうでないのか、よく分からないルックス、「なんだかハッキリしない」タイプなので、それが個性としてして昇華できればもっと面白い女優になれるのではないかと思う。

 脇役は非常に個性的だが、その中で一番衝撃的なのが、撮影監督を演じた이혁だ。
 見た目のインパクトに加え、業界の雰囲気を纏っていたので、本物の撮影監督に見えるが、立派なプロの俳優である。
 彼が実質、この『렛 미 아웃』を引っ張っていたようなところもあり、特異な個性派として、これからも活躍の場を広げて欲しい。
 当人は映画監督も目指しているという。

 この作品が、世間一般で陽の目を観なかったことは残念であるけれど、「低予算インディーズ枠で普遍的なエンタティメントがどこまで出来うるか?」という点において、一石を投じた作品だったのではないだろうか。

 「低予算インディーズ」といえば、どうしても「暗くて小難しくて地味で退屈」な作品ばかりが並びがちでもあり、ブロックバスター系作品に対抗させる意味合いでのみ、高評価を与えようとする向きもあるだろうけど、『렛 미 아웃』のような作品もまた、インディーズ系一つのあり方だと思う。


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