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Vol.187 ポンテギ(번데기)の味 [韓国の食]

 ちょっと前まで日本のTVバラエティーでは、この「ポンテギ(번데기)」が、「タコの踊り喰い」と並んで、韓国の怪奇な珍味としてよく紹介されていた。
 
 こうした番組のフォームは大体決まっていて、「韓国の食べ物は美味しい!美味しい!」と連呼するタレントたちが鍾路沿いの歩道なんかをねり歩き、見つけて大騒ぎするモノ、それがこの「ポンテギ」というわけだ。

 でも、この「ポンテギ」は韓国独自の食べ物ではなく、地域差もあるが、昔の日本でも食べていたものであり、逆に祖父母世代の人に聞いてみてほしい。

 蚕の蛹を煮しめた「ポンテギ」だが、どうも近頃、消えつつあるような気がする。
 昔からの定番物ではあるが、「ポンテギ」の入ったカップを持って歩く人、というのを観た記憶がいまだない。
 でも、まわりに尋ねてみると、全く食べていないわけではないようで、いまだ食料品店には缶詰も並び続けている。

 一昔前はほとんどが韓国産だったらしいが、ここ十年近く、缶詰を見る限りでは、大半が中国産になってしまったようだ。
 缶詰では「韓国産20%、中国産80%」といったモノは存在するが、それさえ、年々発見が困難になっているような気がする。
 おそらく、韓国内養蚕産業が衰退している影響ではないかと思うが、それよりも韓国人自身の大幅な嗜好変化が大きいのだろう。

 十年ほど前、私はこの「ポンテギ」を、酒のつまみとして、よく食べていたことがあった。

 露天で買って持ち帰るわけにもいかないので、もちろん缶詰。
 この「ポンテギ」、見かけは不気味で、キチン質独特の臭いもきついが、味は極めて淡白、ボソボソしていて、大豆の絞り滓を食べているよう。
 心なしか絹っぽい風味を感じ、森永製菓あたりが出している純動物性プロティンのような味に思えなくもない。

 それは決して不味いわけでもなく、特に韓国ビールには非常に適したおつまみであった。
 ただ、原料産地の関係なのか、蛹の味に大きな差があったりした。
 そして、この缶詰版「ポンテギ」最大の特徴は、予想外に他との組み合わせや味付けと合わない、不思議な食材、ということであった。

 酒肴の組み合わせとしての相性を列挙してみると、

 ●韓国焼酎=まあまあ。なんとか許容できる程度

 ●日本酒、日本の焼酎、日本のビール=絶対合わない!!

 ●ウィスキーなどハードリカー系洋酒=上に同じ!!

 と、見事なくらい、韓国ビール以外に合わない、おつまみなのである(ちなみに、ワインはまだ試していない)。
 肝心の、ポンテギによく合う韓国ビールも、日本人酒飲みの間で昔から悪名高い、独特のションベンビールであり、逆にまともな日本のビールでは合わないのである。

 味付けに関しても、醤油煮であるとか、バター炒めが合いそうに思えたのでやってみるが、全然美味しくない。

 どうやら、そのキチン質の表皮が、ポンテギの中まで調味料の浸透を妨げてしまうようで、蛹の中身もたんぱく質が熱で凝固した物質であり、味が浸透しない。

 それに加え、ポンテギは熱を加えても、ちっとも変化しない。
 柔らかくも硬くもならず、膨れ上がったりもしないのだ。
 カレー味にしたり、油で揚げることも考えたが、あまりの変化の無さぶりに、つまらなくなって、興味を失ってしまった。
 聞いた話では、このポンテギを入れたチゲもあるらしいが、正直、美味しくないと思う。

 「ポンテギ」とは食材というよりも、単純にたんぱく質を摂取するための薬みたいなものなのであろう。
 食料供給もままならない時代、産業廃棄物を再利用する意味もあった合理的な食べ物だったと思うのだが、今ではその役割を終えつつあるのかもしれない。

 昆虫食、というものは昔から画期的な動物タンパクとして一部の学者が研究している対象ではあるが、意外に料理への応用が効かない気もする。
 虫の味を尊重すれば万人向けではなくなるし、誰でも食べることが出来るように加工すると、単なる無味乾燥な調味料に過ぎなくなる。
 そんな応用性の無さを如実に感じさせた食材が、この「ポンテギ」の缶詰なのであった。

 韓国ではイナゴも油で揚げて食す習慣が一部あったというが、これは美味しそうな気もする。
 しかし、今では秋口あたりに、田舎に居候でもしないと食べる事は難しいだろう。

 ちなみに、田舎育ちの二十代韓国人女性(在SEOUL)にこういったことを聞いてみたところ、「食べません!」

ポンテギ.jpg

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