Vol.242 『神のアグネス 2008年度版』観劇記 [韓国カルチャー]
2008年暮れ、ソウル・恵化にある「정美소」劇場で、演劇『神のアグネス 2008』を観る。
『~2008』と付いているのは、Jonn Pilmererが書いた『神のアグネス』という戯曲が、約25年前から、何度も韓国で舞台化されているからだ。
「정美소」劇場は、今回、Dr.リビングストンを演じた女優윤석화がオーナーでもあり、韓国放送通信大学の裏に場所にあるものの、学校の敷地を大きく迂回しないと行けないので、結構わかりにくい。
윤석화は舞台女優として有名であり、『神のアグネス』が初めて上演されたときに、アグネスを演じていた。
大変格好いい人で迫力がすごくある。
「韓国人」という看板を外して、個性そのもので外国の作品でも勝負できそうな女優だ。
アメリカのTVドラマ「ダメージ」の、グレン・クロースに近い感じ、といえばわかりやすいだろうか。
当然だが、「韓流」とは無縁の人である。
私は観た時、アグネスを演じていたのは、박혜정(ダブルキャストになっている)。
まだ若い子だったが、演技に器用な印象を受けた。
しかし彼女は元々、プロの俳優ではなく、舞台スタッフだったといい、今回の大抜擢にあたっては、演技うんぬん以前に、とにかく徹底して発声練習をやらせられたらしい。
オーラを感じるタイプではないし、舞台を降りると、ホントにそこら辺にいる女の子だったが、その影の薄さは、案外、大化けするかも、という予感も感じさせた。
『神のアグネス』は、1985年にジェーン・フォンダ主演でノーマン・ジェイソンが映画にしているから記憶にある人もいるだろうけど、現在DVDはなし、絶版VTRのみで、原作の日本語訳もないという、あまり日本では恵まれていない作品である。
物語の背景には、キリスト教の思想が色濃く渦巻いているため、日本人よりも韓国人の方に受け入れやすいのかな?といった感じだ。
舞台の構成は極めてシンプル、シーンを変えつつも、基本的には二人の人物によるダイアローグ中心で物語が進んでいく。
お話はサスペンスでもあって、修道院で起こった、若い修道女の出産と子殺しを、精神科医である主人公が暴いてゆく、という内容だが、神という存在と人間の関わりの限界、というものを同時に描いているようにも思えた。
この舞台を演出したハン・ジスンは、映画『エンジェル・スノー』やTVドラマ『恋愛時代』で日本では知られる人物だが、フィルム的というか、フレームを繋ぐ感覚が、かなり舞台には反映されている。
あえてインターミッションを入れずに、ぶっ通し、暗転時間が他の舞台の半分くらいしかなく、暗くなったと思ったら、あっという間にシーンが替わる。
俳優たちはバラけるタイミングが、さぞかし大変だったろう。
そして、時にはシーンとシーンの間に一瞬暗転を挟んだりと、出来うる限り映画の感覚が取り入れられていて、映画好きや映像編集の経験がある人なら、けっこう、ニヤッとさせられる工夫が凝らされていた。
だが、今回の舞台でもっとも賞賛すべきであり、印象に残るのが、リビングストンが燻らすタバコの煙だ。
とにかくリビングストンはタバコを吸いまくるのだが、それが刻々と変化するオブジェクトとなって、独特の空間美を舞台の上に描いていく。
彼女と対峙する修道女たちは当然タバコを全く吸わないので、舞台は真っ二つの対象的な空間に割れて対立するのである。
ハン・ジスン作品はいつもディティールが細かく、ゆっくりのったりと、起伏も緩やかな印象が強いんだけど、彼が舞台のキャスト、スタッフたちと作り上げた今回の『神のアグネス』は、シュールながらもアクション映画のような趣きすら感じさせる世界観に彩られていたのだった。
『~2008』と付いているのは、Jonn Pilmererが書いた『神のアグネス』という戯曲が、約25年前から、何度も韓国で舞台化されているからだ。
「정美소」劇場は、今回、Dr.リビングストンを演じた女優윤석화がオーナーでもあり、韓国放送通信大学の裏に場所にあるものの、学校の敷地を大きく迂回しないと行けないので、結構わかりにくい。
윤석화は舞台女優として有名であり、『神のアグネス』が初めて上演されたときに、アグネスを演じていた。
大変格好いい人で迫力がすごくある。
「韓国人」という看板を外して、個性そのもので外国の作品でも勝負できそうな女優だ。
アメリカのTVドラマ「ダメージ」の、グレン・クロースに近い感じ、といえばわかりやすいだろうか。
当然だが、「韓流」とは無縁の人である。
私は観た時、アグネスを演じていたのは、박혜정(ダブルキャストになっている)。
まだ若い子だったが、演技に器用な印象を受けた。
しかし彼女は元々、プロの俳優ではなく、舞台スタッフだったといい、今回の大抜擢にあたっては、演技うんぬん以前に、とにかく徹底して発声練習をやらせられたらしい。
オーラを感じるタイプではないし、舞台を降りると、ホントにそこら辺にいる女の子だったが、その影の薄さは、案外、大化けするかも、という予感も感じさせた。
『神のアグネス』は、1985年にジェーン・フォンダ主演でノーマン・ジェイソンが映画にしているから記憶にある人もいるだろうけど、現在DVDはなし、絶版VTRのみで、原作の日本語訳もないという、あまり日本では恵まれていない作品である。
物語の背景には、キリスト教の思想が色濃く渦巻いているため、日本人よりも韓国人の方に受け入れやすいのかな?といった感じだ。
舞台の構成は極めてシンプル、シーンを変えつつも、基本的には二人の人物によるダイアローグ中心で物語が進んでいく。
お話はサスペンスでもあって、修道院で起こった、若い修道女の出産と子殺しを、精神科医である主人公が暴いてゆく、という内容だが、神という存在と人間の関わりの限界、というものを同時に描いているようにも思えた。
この舞台を演出したハン・ジスンは、映画『エンジェル・スノー』やTVドラマ『恋愛時代』で日本では知られる人物だが、フィルム的というか、フレームを繋ぐ感覚が、かなり舞台には反映されている。
あえてインターミッションを入れずに、ぶっ通し、暗転時間が他の舞台の半分くらいしかなく、暗くなったと思ったら、あっという間にシーンが替わる。
俳優たちはバラけるタイミングが、さぞかし大変だったろう。
そして、時にはシーンとシーンの間に一瞬暗転を挟んだりと、出来うる限り映画の感覚が取り入れられていて、映画好きや映像編集の経験がある人なら、けっこう、ニヤッとさせられる工夫が凝らされていた。
だが、今回の舞台でもっとも賞賛すべきであり、印象に残るのが、リビングストンが燻らすタバコの煙だ。
とにかくリビングストンはタバコを吸いまくるのだが、それが刻々と変化するオブジェクトとなって、独特の空間美を舞台の上に描いていく。
彼女と対峙する修道女たちは当然タバコを全く吸わないので、舞台は真っ二つの対象的な空間に割れて対立するのである。
ハン・ジスン作品はいつもディティールが細かく、ゆっくりのったりと、起伏も緩やかな印象が強いんだけど、彼が舞台のキャスト、スタッフたちと作り上げた今回の『神のアグネス』は、シュールながらもアクション映画のような趣きすら感じさせる世界観に彩られていたのだった。
タグ:韓国映画
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