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Vol.319 団成社、ひとつの終焉 [韓国映画]

 2010年8月末、ソウル・鍾路三街にある映画館「団成社」が幕を下ろした。
 5年の儚い生涯であった…

 …なんて書くと大仰だけど、ここはすでに一度不渡りを出していたわけだから二度目の死である。
 もっとも、正確にいえばビルを大改装し、内容重視の小さな劇場として2010年中に再オープンする予定ではあるが、黒い欲望渦巻く鍾路の街で果たして、そのもくろみはうまくいくのだろうか。

 かつて、この十字路から乙支路界隈を抜けて忠武路に至るまでの場所は、ソウルにおける映画の花道だった。
 ただ、経営体質は古く、けっこう最近まで「こわーい人たち」がもぎりやっていたりと、なにやらご時世からずれてもいた。

 ここら辺の特徴は、ろくでもない劇場が多かった、ということだろう。
 とにかく客を詰めるだけ詰め込み、回転数を少しでもよくするためにプリントを途中で切っちゃうなんてことを平気でやっていたし、約10年前から大手企業のシネコン参入が本格化、シネコン同士の熾烈な争いが始まってからも「のほほ~ん」とお山の大将をしていた。

 立派な建物に作り直しても、内装やら設計やらコスト重視があまりにも露骨で、やっぱり客のことなんか考えていない。
 劣悪な環境を嫌う若い客が「CGV」や「MEGA-BOX」に流れてしまうのは当然のことであった。

 新生「団成社」が建てられたビルは、「ソウル劇場」と並んでここら辺のランドマークであった旧ピカデリー劇場が建っていた場所である。
 旧ピカデリーは取り壊されて再開発が始まるが、何年経っても工事中、完成した頃は既に韓国映画バブルは弾けてしまっていた。

 なんでこんなに時間がかかったかというと、たぶん一等地再開発で毎度巻き起こる「こわーい人たち」とディベロッパーたちの利権争いがあったんだと思う。
 新林駅前十字路の再開発も一時停まっていたことがあったが、やっぱり「こわーい人たち」との調整が大変で停めざるをえなかったという話を聞く。

 新しく建てられた「団成社」は、一足早く完成した忠武路の「大韓劇場」に負けず劣らず、心のこもっていないひどい劇場だった。
 器がでかいだけで、中身はスカスカ。

 結局、劇場はオーナーの考え方次第なんだろう。
 かつてカン・ジェギュの会社が『シュリ』で得た莫大な資金で江南にあった古い劇場を買い取り、改装してちょっとだけ運営していたことがあったけど、内装が映画鑑賞とは別方向に凝りすぎていた。
 でも、それの方が観客に対してまだ良心的だ。

 結局、「団成社」に足を運ぶことはほとんどなかった。
 落ち穂拾い的に一番館落ちの作品を観に行ったくらいで、同じロードショーを江北方面で観るのなら、東大門「MEGA-BOX」や龍山「CGV」にいった方がお得感があるからだ。

 「団成社」向かいにあった地下深くにあるシェルター然とした映画館「プリモス・ピカデリー」もいつの間にか新興勢力のロッテシネマ傘下に入ってしまった。
 同じく鍾路三街にある凶悪な老舗「ソウル劇場」も、いずれ大きな決断に迫られるのではないかと思うけど、一番早く建て直すべきは、こっちの方だったんじゃないのだろうか?
 
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