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Vol.320 合井洞をゆく [韓国カルチャー]

 今のソウルでどこが面白いかと聞かれれば、「知りません」と答えている。
 なぜなら本当に知らないから。

 かつてのソウルは野蛮かつ素朴な部分がたくさん残っていて、観光ガイドから少し離れただけで愉快な発見があったのだが、ここ5年くらい急速にえせモダンな街になってしまい、現政権下でのおしゃれな街作り推進運動(要はゼネコンと行政が結託した再開発)も「街のつまらない化」に輪をかけている。
 一部古い街並みは残されているけどそれらも昔に比べると生彩に欠け、ただの薄汚いスラム街みたいになってしまった。

 日本でも、韓国・ソウルの印象は「先進的で格好良い街」に変わりつつある。
 もちろん、それに異論と反論を唱える人も多いので相対的には日本人が持つイメージは昔とそれほど変わらないとは思うのだけど、かつての軍事政権下での雰囲気を知っている人と、ここ数年初めて韓国を訪れた人の間では限りなく深い溝がある。

 しかし、今も昔もソウルおよびその周辺で「いいな」と感じていたことは、個人経営のお店はとにかく自己主張が非常に強くて、オーナーのセンスがはっきりと出ていることだ。
 二十年くらい前の状況を思い出してみれば流行の先端であるはずの東京の渋谷、青山、代官山、六本木辺りは意外に保守的で、ソウルやその郊外に展開するお店の方が良くも悪くも無秩序でぶっ飛んでいて面白かった記憶がある。

 バブル経済崩壊後、東京は長引く不況の影響で堅実なチェーンばかりが増えてしまったが、ソウルでもそれは変わらない。
 個性豊かなお店はどんどん姿を消し、無難だがつまらないお店ばかりが増殖中だ。

 かつて「食の都」と呼ばれた全羅北道・全州でも、地元出身の知人から言わせると平均化してしまい、どこにいってもソウルと変わらなくなったと嘆いている始末(経営者の高年齢化で店終いというパターンもある)。
 消えた名店はこぞってソウルに進出してしまったというが、その分ソウルの食レベルが向上したかといえば、とてもそうは思えないのだった。

 ネット通販の盛況ぶりも、横行していたボッタクリ価格を是正したが、街からマニアックなお店を淘汰してしまった。
 韓国において韓国でしか手に入らないようなレアものを探すことはどんどん難しくなっており(というか絶望的になった)、日本人が集まる場所では日本人の韓国幻想にそった商品ばかりが店頭に並ぶという妙な状況になっている。

 そんな「ツマラナイ化」がマキシマム・オーバードライブしている昨今、ちょっとだけ期待しているのが弘大前駅から見て汝矣島方面に位置する合井洞界隈だ。
 ここら辺は昔から閑静な住宅街で(映画関係者もここら辺に何人か住んでいる)、ちょっと前までは家しかないような場所だったが、最近個性的な飲食店が集う街に姿を変えつつある。

 新村や弘大前あたりの独特なディープさはないが、若作りした観光客の集団がガイドブック片手に凄まじい叫び声を上げて練り歩いている江北&江南某所周辺のイカレた光景にウンザリした方には良い場所かもしれない(日本人が経営する店舗もある)。
 仁寺洞界隈なんかよりよっぽど落ち着いていて、どこがお勧めとはちょっといえない押しの弱さはあるものの、隠れ家的なお店が幾つも潜んでいる。

 物価が高めなのは仕方ないが、一部の日本人がありがたがって詣でる江南のどこかよりは懐にやさしいし、それなりに庶民的なお店もたくさんある。
 そして週末でもバカみたいな人混みにならないのが、ここら辺のいいところだろう(今のところ)。

 韓国に憧れてやって来た人には少々イメージがそぐわない場所かもしれないが、独特の折衷感覚が味わえる街角なのであった(ただし、五年後はどうなっていることやら…)

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