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Vol.339 いつの間にやらナンパの場 [韓国カルチャー]

 韓国でCDやDVDが売れなくなってから久しい。
 最近では本も売れなくなってきているようで、市場が狭い韓国においては、「韓流」印を付けたコンテンツが日本で売れるかどうかが、関連企業の大きな命題になっているようだ。

 売れなくなった原因は色々考えられるが、マニア市場の絶対的な浅さと狭さは、今後とも韓国コンテンツ業界のネックではあるだろう。
 そんな訳で、韓国映画のOSTやDVDの現物入手が、年々渋くなってきているが、逆にダウンロード販売は盛んになり、「エッ!こんなものまで出ているの?」みたいな展開もあるにはある。
 でも、外国人が気軽に購入するには敷居が高いので、そこら辺をなんとかして欲しいのだった。

 かつてソウルにおいて、韓国映画に関するOSTやDVDを入手するには、鐘路三街駅から世運三街方面に並ぶ専門問屋街が一番確実だった。
 店舗の規模は小さくても、アニメやホラーに強いとか、TVドラマが揃っているとか、値段が一番安いとか、それなりに各店の特色があって、韓国映画以外でも結構使える一角だったが、ここ数年、次々とお店が消えてしまい、すっかり寂れてしまった。

 そんな中、日本人観光客向けに「韓流芸能人グッズ」準専門店へ異色の衣替えをして、結構うまく行っているように見えるのが「X」というお店である。
 韓国映画OSTの品揃えについては、今でもここがソウル1だとは思うので、時間があると行くのだけど、取扱い商品を衣替えしてからは、だいぶ客層が変わったように思える。

 この店は昔から外国人客をよく見かけたが、今は日本人女性客ばかりという感じになってしまった。
 もちろん、本来の商品が目的の地元客もいるにはいるが、奇声を上げて騒いでいる日本人客の群や、沢山並べられた安っぽい「韓流芸能人グッズ」に抵抗をおぼえるのか、めっきりその姿は少なくなった。

 しかし、韓国では元々、芸能人関連のグッズというものは少なくて、日本人が大挙して来るような場所にはあまり流通していなかったワケだから、韓国内で音楽CDやDVD需要が頭打ちなら「日本人が欲しい物を売って、銭を絞り取れ!」になるのは、健全なビジネス的発想かもしれない。

 最近、この店で物色していると、あることに気がついた。
 お店の人の接客態度の温度差である。
 相手が日本人女性だと、相手が若いか、そうでないか、独りか、複数かで、けっこう接客スタンスが変わるのである。

 それなりに年季が入った女性客(といっても三十代後半から四十代くらいだけど)や、二人以上の客だと、ビジネスライクな親切さが基本。
 でも、明らかに二十代くらいの可愛いフリーの日本人女性客だと、あからさまにナンパを始めるのだ。
 以前は日本語対応なんかしていなかったので「韓流芸能人グッズ」を扱うにあたって、勉強したんだろう(こういう所はエライです)。

 商品案内をしつつ、「独りですか?」→「結婚していますか?」→「恋人はいますか?」と続き、やがて「お茶に行きませんか」→「食事どうですか」とエスカレートして行く。
 相手にその気がないとそれで終わりだが、日本人女性がちょっと返事に窮している様子が伝わって来るので、「次なる展開は如何に?」と、こちらまで、やや緊張してしまう。
 しかし、おばちゃんのシングル客だと、いくら若作りでカワイ子ぶっても、やっぱりドライな対応だ。

 半分は店員の冗談ノリなんだろうけど、ここ五年くらいの韓国人男子のモテ方は異常なので、おそらく、美味しい思いをしたことがあったんだろう。
 でも、ナンパをやっているのはイケメンには程遠い、ただのオッサンだったりするのが、ちょっとユーモラスで笑えるのだった。

 日本人女性を恋人にすることは、今も昔も、一部韓国男性にとって大きなステイタスらしいけど、実際にプライベートで知り合う機会は案外少ない。
 特にオッサン世代ともなれば一層そうだろう。

 韓国で男女がステディな関係になるきっかけは、「友人の紹介」というパターンが昔からの王道、店頭で赤の他人の日本人客をナンパしても、うまく行く確率は決して高くないと思ってしまうのだけど、たぶん、私の与り知らぬところで状況は大きく変化しているのかな?

NANPA.jpg
余計な美化政策のおかげで、寂しい通りになりました。

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