Vol.348 コプチャンの味 [韓国の食]
久しぶりに、女性の知人と夕食に行く約束をする。
彼女は会社が江南某所にあるので、それに合わせて江南方面に赴き、時間を調整する。
そして落ち合う場所を決めようと連絡したところ、「明洞がいい」と、のたまう。
「げっ、ミョンドン?」と思わず言葉に出してしまった。
三成洞のおでんバーを狙っていたのだが…
でも、どうせ宿泊先は江北だし、たまには明洞でもよかろうと、再び街を北上する。
明洞駅前で落ち合えば、今度は「コプチャンに行こう」と、最近購入したiPadの画面を見せられた。
「げっ、コプチャン?」とはたまた思わず言葉に出してしまう。
そう、私はコプチャンが嫌いなのだ。
不味い、美味しいの問題ではなくて、あのギトギトの脂が嫌だし、体が臭くなるからだ。
だが、ここは良くも悪くも明洞のド真ん中。
正直、私好みのお店はない。
ここから別の街に移動するのも面倒だったので、南山麓側にある、その店に向かった。
そっち側は昔、「旨い」と評判の中国料理屋に連れて行かれて以来だ。
そのコプチャン屋は路地に入ってすぐのところにあった。
通り過ぎそうになったくらい目立たないが、店内はそこそこ広く、綺麗だ。
早速、店自慢のコプチャンを注文する。
場所が場所なので、さぞかし日本人でごった返しているかと思えばそうでもなく、日本語メニューも一切ないので、案外、いいお店なのかもしれない。
ただ、普段は日本人が沢山くるという。
お店の主人らしき初老の男性が調理をしてくれる。
とっても都会的な佇まいで、ソウル人、という形容がよく似合う。
日本人が沢山来る場所なのに、日本語のメニューは置かないのですか?と尋ねると、食べ物だから言葉は問題ないんですよ、と答える。
メニューはシンプルなので、そういわれればそうだし、ヘタに日本人向けに特化して、大切な地元客に敬遠されるのも、店にすれば都合が悪いのかもしれない。
使われている内臓肉は非常に新鮮で、日本のお店の方が素材の良さを生かせそうな感じだ。
つきだしの生レバーを鉄板の上で少し焼く。
そうすると純生で食べるよりも、美味しいのだ。
女性や若い人はこういうものを嫌うけど、焼いたレバーを知人に薦めてみる。
一応食べてはくれたが、やはり抵抗があるようだ。
このお店は味付けがちょっと変わっていた。
焼肉系というものは寿司と似たようなもので、素材が良ければなんとかなってしまう部分がある。
だから、野菜やキムチにこだわるとか、味付けに独自性を追求するとか、良心的なお店はそこら辺に工夫を凝らすのだが、ここはどちらかといえば後者のほうだ。
例の甘辛い醤なんだけど、どうやら隠し味にマヨネーズを使っているらしい。
たくさん食べるのはシンドイが、ちょっとしたおつまみ程度ならいい感じだ。
コプチャンをつつきながら、知人に最近の仕事の状況を尋ねる。
至極うまくいっていることを明るく語るが、重責なので、本音はまた別だろう。
地方生まれで大学を出ていない彼女が、江南にある大手系列のおしゃれな会社で、流行りものの企画・開発の主任として働けることは、韓国社会で幸運としか言いようがない。
元は別の会社にいたのだが、ちゃんと見てくれている人はいるもので、引き抜かれたのだ。
しかし、こういうことは滅多に起こりえない。
理解ある旦那にも恵まれ、ちゃんと家庭と両立させていることも、同年代の女性たちからみれば羨ましい限りだろう。
そのことを話すと、「そうなんだけど…」と、明るい口調ながらも、少し言葉を濁した。
なぜなら、これ以上の出世は、学閥、地方閥の後ろ盾がない自分にとって、おそらく無理だし、家庭との両立も、母親が犠牲になってくれているから、いつも申し訳なく思っている、と語る。
確かにそうかもしれない。
隣の芝生の裏側は、本人たちでないとわからないものだ。
美味しいコプチャンを食べ終わり、店を出る。
しかし、ここは明洞、お茶するにもロクな所がない。
さて、どこに行こうか…
彼女は会社が江南某所にあるので、それに合わせて江南方面に赴き、時間を調整する。
そして落ち合う場所を決めようと連絡したところ、「明洞がいい」と、のたまう。
「げっ、ミョンドン?」と思わず言葉に出してしまった。
三成洞のおでんバーを狙っていたのだが…
でも、どうせ宿泊先は江北だし、たまには明洞でもよかろうと、再び街を北上する。
明洞駅前で落ち合えば、今度は「コプチャンに行こう」と、最近購入したiPadの画面を見せられた。
「げっ、コプチャン?」とはたまた思わず言葉に出してしまう。
そう、私はコプチャンが嫌いなのだ。
不味い、美味しいの問題ではなくて、あのギトギトの脂が嫌だし、体が臭くなるからだ。
だが、ここは良くも悪くも明洞のド真ん中。
正直、私好みのお店はない。
ここから別の街に移動するのも面倒だったので、南山麓側にある、その店に向かった。
そっち側は昔、「旨い」と評判の中国料理屋に連れて行かれて以来だ。
そのコプチャン屋は路地に入ってすぐのところにあった。
通り過ぎそうになったくらい目立たないが、店内はそこそこ広く、綺麗だ。
早速、店自慢のコプチャンを注文する。
場所が場所なので、さぞかし日本人でごった返しているかと思えばそうでもなく、日本語メニューも一切ないので、案外、いいお店なのかもしれない。
ただ、普段は日本人が沢山くるという。
お店の主人らしき初老の男性が調理をしてくれる。
とっても都会的な佇まいで、ソウル人、という形容がよく似合う。
日本人が沢山来る場所なのに、日本語のメニューは置かないのですか?と尋ねると、食べ物だから言葉は問題ないんですよ、と答える。
メニューはシンプルなので、そういわれればそうだし、ヘタに日本人向けに特化して、大切な地元客に敬遠されるのも、店にすれば都合が悪いのかもしれない。
使われている内臓肉は非常に新鮮で、日本のお店の方が素材の良さを生かせそうな感じだ。
つきだしの生レバーを鉄板の上で少し焼く。
そうすると純生で食べるよりも、美味しいのだ。
女性や若い人はこういうものを嫌うけど、焼いたレバーを知人に薦めてみる。
一応食べてはくれたが、やはり抵抗があるようだ。
このお店は味付けがちょっと変わっていた。
焼肉系というものは寿司と似たようなもので、素材が良ければなんとかなってしまう部分がある。
だから、野菜やキムチにこだわるとか、味付けに独自性を追求するとか、良心的なお店はそこら辺に工夫を凝らすのだが、ここはどちらかといえば後者のほうだ。
例の甘辛い醤なんだけど、どうやら隠し味にマヨネーズを使っているらしい。
たくさん食べるのはシンドイが、ちょっとしたおつまみ程度ならいい感じだ。
コプチャンをつつきながら、知人に最近の仕事の状況を尋ねる。
至極うまくいっていることを明るく語るが、重責なので、本音はまた別だろう。
地方生まれで大学を出ていない彼女が、江南にある大手系列のおしゃれな会社で、流行りものの企画・開発の主任として働けることは、韓国社会で幸運としか言いようがない。
元は別の会社にいたのだが、ちゃんと見てくれている人はいるもので、引き抜かれたのだ。
しかし、こういうことは滅多に起こりえない。
理解ある旦那にも恵まれ、ちゃんと家庭と両立させていることも、同年代の女性たちからみれば羨ましい限りだろう。
そのことを話すと、「そうなんだけど…」と、明るい口調ながらも、少し言葉を濁した。
なぜなら、これ以上の出世は、学閥、地方閥の後ろ盾がない自分にとって、おそらく無理だし、家庭との両立も、母親が犠牲になってくれているから、いつも申し訳なく思っている、と語る。
確かにそうかもしれない。
隣の芝生の裏側は、本人たちでないとわからないものだ。
美味しいコプチャンを食べ終わり、店を出る。
しかし、ここは明洞、お茶するにもロクな所がない。
さて、どこに行こうか…
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