Vol.372 歌う安重根 ミュージカル『영웅(英雄)』 [韓国カルチャー]
2011年12月6日から翌年の1月7日まで、ソウルにある国立劇場해오름劇場で、純韓国製(と言っていいかな?)ミュージカル『영웅』の公演が行われた。
この劇場で上映される演目は大掛かりだったり、著名な公演だったりするので、入場料は高いけど、結構、要チェックだったりする。
ソウルはかなり前から、東京の次くらいにミュージカルが上演されている街と言われていたが、いまでは、おそらく逆転していると思う。
ただ、ちょっと残念というか、イマイチ、パッとしないのは、韓国人の手で書かれた、韓国らしいオリジナルをあまり見かけないなぁ、ということだろうか。
『영웅』は、今後、そうした穴を埋めるべき定番になる可能性もある作品なのだが、日本人から観てやっぱり特異なのは、ナショナリズム丸出しのテーマを、それと矛盾しているようなバタ臭い手法で描いていることだ。
そして、イマドキの韓国人にとっては、耳タコ状態の「ウンザリ」歴史ネタかと思っていたのだが、公演当日、送り迎えのシャトルバスは、満席の大混雑。
若い観客が大勢いたのは驚いたけど、家族連れも目立つので、おそらく興行側は、団体向けマーケティングを展開したんじゃないだろうか。
私は外国人割引で予約を入れていたので、チケット売り場で日本のパスポートを提示しなければいけなかったが、当然ながら、なんの問題も起こらない。
座席に着いて舞台に目をやれば、巨大な緞帳には「영웅」とタイトルが投影され、何やらゴーン、ゴーンと鐘の音が鳴り続けている。
上演が始まると、女の子を中心としたグループが奇声を上げながら、一斉に大騒ぎを始めた。
どうやら、安重根演じる정성화の追っかけらしい。
なあるほど。
妙に若い観客がウロウロしていたのは、これも大きな理由なんだろう。
このミュージカル『영웅』で描かれるものは、光復節後の韓国で「常識」として語られている歴史観であって、日本人として新しい発見は何もない…というよりも、発見しようがない。
舞台美術や、衣装デザイン、肝心の音楽も、お金はかかっているが、意外と地味で凡庸だったりする。
街中で抗日の英雄たちを追い回す「日帝の犬ども」は、まるでB級アクション映画に出てくるゲシュタポか、KGBみたいなので、ちょっと笑ってしまったが、彼らが高らかに歌いあげる「♪ちょうせんじ~ん(日本語です)」という歌詞が、日本人として、ちょっと気になった。
韓国語の台詞と歌詞は英訳されて、舞台両脇の電光掲示板に同時進行で流されるようになっているが、どうせなら、日本語字幕や中国語字幕も付けるべきなんじゃないのか??
でも、この掲示板、トンデモな位置に掲げられていて、字幕を読もうとすると、舞台で何をやっているのか、全然見えなくなる。
これじゃ、一部韓国人の大好きな、英語圏観客が来ても困るだけだろう。
劇中の伊藤博文は準主役の扱いで、ちゃんとソロで歌う幕も用意されているが、その姿は「悪の首領+すけべな爺さん」。
対する安重根とその仲間たちは、最初から最後まで「高潔な人物」だが、立派過ぎてなんだか、よくわからない。
その不自然で硬直した様子は、街角で佇むカーネル・サンダースの人形を連想させた。
あくまでもお話は、安重根や伊藤博文、その個々の人生や人間性よりも、別の目的に偏向したゴリゴリのお約束に沿って、進んでゆくのだった。
このミュージカルを観た韓国の子供たちの多くは、これが「真実」だと思い込み、「立派」な大人になっちゃうのかな…
今の韓国ならば、若くて野心的で、気骨と才能を備えたクリエイターたちがいるはずだから、全く別の角度で、新しい安重根と伊藤博文、そして歴史的背景を描くことが、いくらでもできるんじゃないかと思うのだけど、それはやってはいけない、ヤバイ事なんだろう。
でも、それならそれで開き直って、「韓国のブレない信念&方針」ということで、このまま堂々とTOKYO公演でもやれば?とも思うのだった。
NYじゃなくてね。
この劇場で上映される演目は大掛かりだったり、著名な公演だったりするので、入場料は高いけど、結構、要チェックだったりする。
ソウルはかなり前から、東京の次くらいにミュージカルが上演されている街と言われていたが、いまでは、おそらく逆転していると思う。
ただ、ちょっと残念というか、イマイチ、パッとしないのは、韓国人の手で書かれた、韓国らしいオリジナルをあまり見かけないなぁ、ということだろうか。
『영웅』は、今後、そうした穴を埋めるべき定番になる可能性もある作品なのだが、日本人から観てやっぱり特異なのは、ナショナリズム丸出しのテーマを、それと矛盾しているようなバタ臭い手法で描いていることだ。
そして、イマドキの韓国人にとっては、耳タコ状態の「ウンザリ」歴史ネタかと思っていたのだが、公演当日、送り迎えのシャトルバスは、満席の大混雑。
若い観客が大勢いたのは驚いたけど、家族連れも目立つので、おそらく興行側は、団体向けマーケティングを展開したんじゃないだろうか。
私は外国人割引で予約を入れていたので、チケット売り場で日本のパスポートを提示しなければいけなかったが、当然ながら、なんの問題も起こらない。
座席に着いて舞台に目をやれば、巨大な緞帳には「영웅」とタイトルが投影され、何やらゴーン、ゴーンと鐘の音が鳴り続けている。
上演が始まると、女の子を中心としたグループが奇声を上げながら、一斉に大騒ぎを始めた。
どうやら、安重根演じる정성화の追っかけらしい。
なあるほど。
妙に若い観客がウロウロしていたのは、これも大きな理由なんだろう。
このミュージカル『영웅』で描かれるものは、光復節後の韓国で「常識」として語られている歴史観であって、日本人として新しい発見は何もない…というよりも、発見しようがない。
舞台美術や、衣装デザイン、肝心の音楽も、お金はかかっているが、意外と地味で凡庸だったりする。
街中で抗日の英雄たちを追い回す「日帝の犬ども」は、まるでB級アクション映画に出てくるゲシュタポか、KGBみたいなので、ちょっと笑ってしまったが、彼らが高らかに歌いあげる「♪ちょうせんじ~ん(日本語です)」という歌詞が、日本人として、ちょっと気になった。
韓国語の台詞と歌詞は英訳されて、舞台両脇の電光掲示板に同時進行で流されるようになっているが、どうせなら、日本語字幕や中国語字幕も付けるべきなんじゃないのか??
でも、この掲示板、トンデモな位置に掲げられていて、字幕を読もうとすると、舞台で何をやっているのか、全然見えなくなる。
これじゃ、一部韓国人の大好きな、英語圏観客が来ても困るだけだろう。
劇中の伊藤博文は準主役の扱いで、ちゃんとソロで歌う幕も用意されているが、その姿は「悪の首領+すけべな爺さん」。
対する安重根とその仲間たちは、最初から最後まで「高潔な人物」だが、立派過ぎてなんだか、よくわからない。
その不自然で硬直した様子は、街角で佇むカーネル・サンダースの人形を連想させた。
あくまでもお話は、安重根や伊藤博文、その個々の人生や人間性よりも、別の目的に偏向したゴリゴリのお約束に沿って、進んでゆくのだった。
このミュージカルを観た韓国の子供たちの多くは、これが「真実」だと思い込み、「立派」な大人になっちゃうのかな…
今の韓国ならば、若くて野心的で、気骨と才能を備えたクリエイターたちがいるはずだから、全く別の角度で、新しい安重根と伊藤博文、そして歴史的背景を描くことが、いくらでもできるんじゃないかと思うのだけど、それはやってはいけない、ヤバイ事なんだろう。
でも、それならそれで開き直って、「韓国のブレない信念&方針」ということで、このまま堂々とTOKYO公演でもやれば?とも思うのだった。
NYじゃなくてね。
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