SSブログ

Vol.397 チャン・ジン、鬼の乱れ打ち第3弾!演劇『허탕 (2012年版)』 [韓国カルチャー]

 2012年6月15日から9月2日まで、동숭아트센터小劇場で、장진作&演出の演劇『허탕』が上演された。
 昔、無名時代の정재영が出演していたこともある。

HODAN.jpg
 
 今年(2012年)、韓国で上演される장진作品は、これで三本目。
 異例の連続公演であり、彼のファンにとっては嬉しい限りかも知れないが、正直、ゲンナリしなくもない。

 前回の『서툰 사람들』と同じ劇場だが、建て込みはうって変わって前衛的、国籍不明、時代不明の最新式刑務所が舞台になっていて、アメリカのTVドラマ『OZ』の世界を、30年前のNHKがドラマで再現したような感じである。

 客席から高い位置にディスプレイが多数設置されていて、それぞれCCTVを通して別のアングルから同じ舞台を映しだすという、実験的なセットになっており、客席も二種類用意されていて、一般席と囚人席がある(今回は囚人席を購入)。

 だが、両者には一般的なS席とA席ほどの違いもなく、囚人席は舞台に肉薄している分だけ、かなり観づらく、一般席の方が高い位置にある分、どう考えても観やすそうだ。
(STORY)
どこにあるともしれない、第一級監獄。
全てが自動管理されており、職員は一切姿を現さない。
そこに強姦罪で収監された中年の「囚人1」は、たった独りの獄中生活をそれなりに楽しんでいた。
なにせ三食昼寝付き、嗜好品も密かに豊富に取り揃え、礼拝堂まで作っている始末。
悩みといえば、神経性の下痢に悩まされていることくらい、日課は脱走に備え、真夜中に鉄格子を削ることだ。
ある日、そこへ、革命を企てた罪で若い「囚人2」が放り込まれて来る。
事情が把握できず、右往左往する攻撃的な性格の「囚人2」は、「囚人1」の自由な暮らしぶりに肩透かしを喰らわされる。
やがて彼も監獄の呑気な生活に慣れた頃、今度は女性の「囚人3」が突然、やって来た。
しかも、彼女は臨月間近。
彼女の罪状を聞き出そうとする「囚人1」と「囚人2」だったが、「囚人3」は精神を病んでおり、その身に何があったのか、判然としない。
かいがいしく彼女の世話を始める「囚人2」だったが、一時的に正気を取り戻した「囚人3」は、自分の身に起こった恐ろしい出来事を語り始める。
衝撃を受けた「囚人2」がとった行動とは?
 三人だけの出演者による、一種の不条理劇であり、ミステリーであり、韓国人なら「SF」と言い訳しそうなお話。

 だが、舞台に力は無く、空虚で重みがない。
 上演時間が短いこともあるのだろうけど、国籍不明の不条理劇にしてしまったことが、タイトル通り、作品を物足りない印象にしてしまったような気がする。

 それが演出家장진の計算だったら大したものだが、面白いか、どうかは別問題だし、思い通りの戯曲にならなかったので、お遊び程度の気持ちで『허탕』という題名を付けたんじゃないのか?などと勘ぐってしまうような、あまりにもパッとしない舞台であった。
 そこら辺が、いつも人を喰った장진らしい演劇といえばその通りなのだけど、最後は「え!?それだけ?」感は、やっぱり否めない。

 でも、出演者のレベルは高く、毎度のごとく、実力者が顔を揃えている。
 どの役もダブルキャスティングだが、私が観た時は、「囚人1」に이철민、「囚人2」に이진오、「囚人3」に송유현という配役だった。

 彼らの中で一番有名なのは、おそらく이철민だろう。
 ここ数年、韓国映画にも、悪役でよく出ている人から、顔だけならご存知の方も多いと思う。
 顔立ちが日本の長塚京三の若かりし頃によく似ている俳優だ。
 日本で公開された作品だと『哀しき獣/황해』のヤクザや、『黒く濁った村/이끼』の宗教団体幹部などがあり、コワモテ悪役系が多いが、舞台では全く違う顔を見せる。
 コミカルかつ、表現豊かな演技が印象的で、映画出演では分からないパフォーマンスの高さを持った俳優であった。

 彼と対峙する이진오は若い人だが、基本はきちんと出来ていて、余計なことはやらない。
 やや力みすぎて動作が固く、表現に幅はないが、ほどほどカワユイ系二枚目だから、日本のTVドラマなんかに向いていそうだ。
 本当なら、こういう俳優こそ、日本はチャンスを与えるべきなんじゃないのか?

 劇中後半に登場する臨月の「囚人3」演じた송유현も、舞台でかなり活躍している若手女優。
 気が触れた役なので、本来の個性が、ちょっと見えてこないのが残念だったが、かなりシンドい役柄だったと思う。
 出番が短いので、残念ながら、あまり記憶に残らなかった。

 今回の『허탕』は、どうも煮え切らない。
 장진らしい内容と言われれば、それまでなのだが、最後は観客をほっぽり出して終わってしまうので、悪い意味での韓国式似非SFな雰囲気と共に、実験的な演出が、肩透かしな効果を上げただけのような気がする。

 でも、장진の原点とは、こういうアングラ系なんだろうな、と改めて認識されられた舞台でもあった。

HOTAN.jpg
alt="HOTAN.jpg" />
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。