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Vol.451 ソルロンタンの味 [韓国の食]

 今から二十数年前、日本の文藝春秋から発行された『B級グルメが見た韓国』という本は、当時貴重な存在だった。
 「B級」と書いてあるが、内容は至極真面目で、韓国の伝統的だけど日常的な食事を多角的に紹介した内容だ。
 ヘタなガイドブックなんかより遥かに役に立つので、私も随分、参考にしたものである。

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 泰天洞や瑞草区のお店を紹介しているところからして、今思うとぶっ飛んでいた。
 既にない店も多々あるが、相変わらず名店として生き残っている店もある。
 その一つが、鍾閣駅近くにあるソルロンタンの老舗『里門』だ。

 このお店が、今のマクドナルド近くに移転してから数年が経つが、かつては鍾閣にある古い建物を補強しながら使っていたので、その異形は昔から日本でもよく知られていた。
 今でも鍾閣界隈の定番有名店だから、相変わらず日本人観光客がよく来ているが、新しいお店は風情がないので物足りない。
 旧店舗はその雰囲気も味わいの一つでもあった。

文中.jpg

 私は「湯」と呼ばれるスープ類の食べ歩きを積極にしている訳ではないので、あまりどうのこうのと言えないが、『里門』のスープ料理は他のお店に比べると、あっさりしていて薄めということらしい。
 確かに妙な匂いもなく、味も安定していて、訪れるたびに味が変わるようなこともない。
 豚骨ラーメンの方が遥かに臭いくらいだ。
 だが、盛り付けはあくまでもワイルド。
 チョンゴルやプルコギもあるので、団体客にも対応しているが、元々そういう雰囲気のお店ではないと思う。

 『里門』の「湯」には「特」があり、結構値段は高いが、具がどっさり入っている。
 ちなみに私はモリコギタンの方をよく注文する。
 客層は単独客が多く、概して平均年令は高い。

 この手の料理を「臭い」「脂っこい」といって韓国の若者が敬遠するようになって久しいが、より臭う豚骨ラーメンを逆に食べたがるのは妙な話でもある。
 真面目に動物系スープを出す専門店は、化学調味料の味があまりしないから、ファスト・フードで育った今の世代にはダメなのかもしれない。

 『里門』は、移転した今でもソウルらしい「レトロ・モダン」な味を引き継ぐお店ではあるが、今後その味がどうなるか全く分からない。
 韓国の老舗食堂が店舗を新築して移転すると、味の面で碌なことがないのは、いわばジンクスだからだ。

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