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Vol.286 明洞の大みそかは静かに更けて [韓国生活]

 2009年の大晦日をソウルの明洞で過ごす。
 そういえば、1999年の大晦日もソウルにいたけど、あの時の江北はメチャクチャ大パニック。   
 まるで戦争が始まったようだった。

 いつもなら、韓国での年越しは、友人たちと一緒なんだけど、皆、歳をとって家庭を持つようになると、それがどんどん難しくなる。
 特に女性はそうだから、残念しごく。

 12月31日、2009年の締めくくりとして往十里にあるCGVへ『アバター』を観に行く。
 今ではIMAXやDLP上映に関しては、東京よりソウルの方が恵まれている。
 10年前のソウルにおける映画館の酷い状況からは、想像も出来ない。
 チケットが一週間前でぎりぎり取れたほどの大人気ぶりで、韓国でもマスコミを騒がせている。

 『アバター』については、あえて触れないが、やっぱり映画の語りは単純であるべき事を痛感。
 その分、映像に力を注ぐことが、結局、全体の向上につながるんじゃなかろうか。
 話や世界観が『もののけ姫』や『風の谷のナウシカ』、『ミッション』にそっくりだって、それを凌駕しうるものが、ちゃんとある。

 だけど、根っこが現代SFの申し子のようなジェームズ・キャメロン作品だけあって、韓国の一部観客にはまだまだ早すぎる内容らしく、映画に集中できない挙動不審な若い観客がチラホラ(彼らのお子様ぶりは毎度のことだけど…日本の若者は、ホント落ち着いています)。

 映画を観終わって、ソウル在中の日本人から、年越し蕎麦を誘われるが、場所が永登浦なので、終わってから江北の宿に帰るのが一苦労、泣く泣く断る。
 しょーがないので、Eマートでヒラメ尽くしの贅沢な寿司を買う(でも安い)。
 いつの間にやら、韓国の寿司は、日常レベルでも随分向上したことを痛感。 

 一旦宿に戻ってから、忠務路の飲み屋に向かう。
 時間的に閉店直前だったが、事情を説明し、快く注文を受け付けてもらえた。
 前から気になっていたワカサギの踊り食いに挑戦するが、活きが良すぎて上手く食べられない!
 割りばしが折れてしまうくらいワカサギは力強く抵抗し、ヘタすると赤い刺身酢が一面に飛び散って大変なことになりそうだ。

 そして、小さな器に入れられても必死になって生きようとする彼らのつぶらな瞳が気になって、なんだか食べることが辛くなってくる。
 『アバター』を観た後だから、なおさら。

 情けないけど、お願いして、てんぷらにしてもらう。
 でも、味は絶品。
 日本の居酒屋で出てくるような生臭いワカサギの天ぷらとは雲泥の差だ。

 女将に「最近、日本人のオバサンが増えたでしょう」と尋ねてみる。
 近所に某ホテルがあるので、多くなった、という返事が返って来る。
 なにせ、以前、ここら辺は日本人観光客なんて誰もいなかった場所。
 日本人が来ると目立ってしょーがなかった。
 でも今じゃ、近所の某老舗焼き肉店が日本人専用のお店と化してしまったくらい、その手の観光客がうろうろしている。

 飲み屋を出て、衝動的に年越しを明洞にある聖堂で過ごそうと考える。
 残念ながら、道行途中で日は変わり、聖堂から荘厳な鐘の音が鳴り響く。
 でも、これはこれで感動的、いわば除夜の鐘の代わりだ。

 2010年1月1日を少し越えて、聖堂に入る。
 中は信者でいっぱい、欧米系の人々もたくさん来ていて、米軍基地関係者らしき姿もちらほら。

 古い宗教の場には、どこでも厳粛で感動的な空気が渦巻いている。
 仏教であっても、イスラム教であっても、それは同じこと。
 そして、それは個人の偏見を超えるものでもある。

 明洞の聖堂は立派な建物で、素晴らしいものだ。
 重々しい扉は信者以外を拒絶しているようだが、出入りは自由。
 本来、宗教とはこういうものであろう。

 中は厳粛な空気に包まれて…といいたいが、そこは年末のソウルらしく、落ち着かない人々が激しく出入りを繰り返す、カジュアルな場でもあった。
 義理でちょっと祈ってもいいし、最後まで真面目に祈り続けてもいい。

 ソウルの年越しは、昔からどこかの飲み屋で大騒ぎというのが定番だったけど、こういう過ごし方もいいものだ。
 若いうちは、狎鴎亭や弘大前で飲んだ後、クラブで「Happy New Year」というパターンだったけど、それは内心、とても疲れることでもあった。

 ソウルには古い聖堂や教会があるし、モスクだってあるし、禅寺だってある。
 祈りの場という独特な空気の中で、ちょっぴり幸福を感じた年末年始だった。

 来年もまた、ここで年を越そうかな…

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