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Vol.341 『キム・ジョンウク探し』を探して [韓国カルチャー]

 韓国のミュージカル『김종욱 찾기』は2006年に初演されて以来、いまも公演が行われている作品だ。
 いわば、2000年代における韓国の定番ミュージカルのひとつ、といえるかもしれない。
 戯曲を書いた舞台演出家のチャン・ユジョンと作曲を担当したキム・ヘジョンはまだ、結構若い人だ。

 そして、2010年には、チャン・ユジョン自身が監督&脚色というふれこみで、コン・ユとイム・スジョン主演の映画版が公開された。
 この映画が公開された当時、ソウル市内にある劇場では、日本人観光客向けツアー興行がされていたから、観た方も多いだろう。

 そんな訳で、原点である舞台を観に行こうと思い立つが、考えは甘かった。
 既に上演は終了しており、どこでもやっておらず、まさに「しまったぁ~」状態。
 韓国では「やっている時に観る」「ある時に買う」が、やっぱり今でも鉄則なのだった。

 それからしばらく経った頃、ソウル近郊で一日だけ上演されるという情報を見つける。
 聞いたこともないような場所だったが、そこそこ近いので、早速チケットを購入する。
 上演される場所は京畿道ハナム市にある『ハナム文化芸術館・大劇場』。
 地図で観ると、「なんでまた、こんなところに劇場が?」という感じ。

 最寄りの駅の一つは地下鉄5号線「カンドン駅」だから、ソウル市内からはそれほど行くことが大変そうに見えないのだけど、実際は、駅からかなり遠いのである。

 当日。
 生まれて初めて「カンドン駅」で降り立ち、劇場のHPからプリントアウトした道行情報でバス停を探すが、全然違う!
 実はこれ、駅周辺が再整備される前の情報らしく、更新されていないのだった。
 仕方ないのでタクシーをつかまえて劇場に向かうが、その運転手はあまり道を知らない人だった(最近、韓国ではこの手のタクシーが多い)。

 劇場は想像以上にヘンな場所にあり、郊外に作られた住宅地の一角に建てられた文化施設といった趣き。
 あんまりお手軽にミュージカルを観に行くようなところではない。
 土砂降りの中で傘は壊れるし、タクシー代はかさむしで、ほうほうの体で大劇場に入る。

 劇場施設はそこそこ立派で、鑑賞マナーを喚起するアニメーションが中々面白い。
 KTX(韓国高速鉄道)内で流されているアニメーションもそうだったけど、こういう作品を日本で観る機会がないのは、大変残念な事だ。
 日本で行われる韓国アニメーションの上映イベントでも、なんとか、こういうパブリシティ物を紹介して欲しいな。

 大体7割くらいの入り。
 幕が開くと、イム・ギホンの派手なパフォーマンスで舞台が始まった。

 キャストはたったの三人、美術も抽象的で簡潔だ。
 イム・ギホンはMCから老若男女まで複数の役を演じわけ、ロマンスの狂言回しとして八面六臂の大活躍だが、他の二人が異常に地味で盛り上がらない。
 結局、彼のワンマンショーみたいな舞台だった。

 ヒロイン役のチョン・ウンジョンも、相手役のイ・チャンユンも、トレーニングを積んだ良い俳優だとは思うが、とにかくイム・ギホンが目立ちすぎ。
 元々そういう戯曲なんだろうけど、どこか本末転倒だ。

 物語も、好みではない。
 女性演出家の手による作品だから、毛色の変わった視点を期待していたんだけど、なにやら学芸会みたい。

 肝心のミュージカルぶりも、最初はそれなりに面白いのだが、なにせミニマムな舞台なので、一時間くらいならなんとかもつが、それを越えて観客を引っ張ってゆくにはかなり辛い感じだ。

 ちなみに映画版はオリジナルに結構忠実だったと思うのだけど、それゆえ「だから映画もイマサンだったのねぇ~」と納得してしまう有様だ。

 上演が終わり、外に出る。
 雨が降る夜のハナム市を歩きながら、ソウルの裾野が東西南北に拡がっていることを実感する。
 何も無いつまらない街だが、こういう機会でも無い限り、こんなところに来ることもないだろう。

 「カンドン駅」まで韓国名物「弾丸特急ジェットバス」一本で行けた。
 かつてソウルのカンドン区方面といえば、遠くて出向くには、えらく面倒くさい印象があったけど、今は江北からもすぐだ。

 でも、肝心の『キム・ジョンウク探し』には、ちょっとガックリさせられた夜だった。

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