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Vol.414 いまさら『エヴァQ』ですが [映画]

 長らく韓国でアニメーション映画は「まんが映画」という蔑称で大人たちに呼ばれていたが、ここ五、六年、その状況が変化し始めている。

 特に2011年の『돼지의 왕』や『마당을 나온 암탉』のヒットは、韓国製アニメーション作品にとっては特筆すべき出来事であった…と思いつつ、過去にヒットしている作品はあったわけだから、やっぱり韓国では自国の映画史から偏見を持ってアニメーション作品が外されていたことを皮肉にも証明した気がしなくもない。

 日本の作品については「海賊版の視聴」というアンダーグランドから開放されつつあり、劇場作品として『名探偵コナン』や『クレヨンしんちゃん』、St.ジブリ系作品群は定番だし(マンネリだけど)、その他作品もやたらとかかるようになった。
 最近では『おおかみこども雨と雪/늑대아이』がロングラン上映され、DVDが異例とも言える売れ行きを見せている。

 そんな風向きの中で、昨年11月17日、日本で公開されて旋風を巻き起こした『エヴァンゲリオン 新劇場版: Q/에반게리온: Q』が、4月25日にCINES系列(=MEGA BOX)独占で韓国一般公開されることが決まった。
 上映館数は現段階では不明だが、前作、前々作を超える規模の公開が行われる可能性もある。

 『エヴァンゲリオン 新劇場版: Q/에반게리온: Q』は、TVを含む全シリーズの「踏み絵」的存在だと思うので、韓国における『エヴァ』人気をより明解にするという意味で、結果が大コケ、酷評であってもどうなるか興味津々だ。

 1995年、TVシリーズから始まった『エヴァ』の韓国における具体的な反応が見え始めたのは1998年前後くらいではないかと思う。
 当時、日本のアニメーション作品は一般市場に出回っておらず、海賊版VCDか違法ダビングされたVTRで観るしかなかったが、トンガリモノ好きや日本文化マニアは違法コピーでこぞって観ていたし、バンダイのHGやPGはすぐ模型店に並んだ。
 ある人は日本における『エヴァ』の存在と人気を韓国の仕事で初めて知った、なんて話もある。

 私がいた韓国の会社では、女性スタッフが机の上にバンダイHGシリーズの零号機を二機も並べていたので「へぇー、バンダイの零号機じゃないか」と話しかけたところ、彼女は「私はいつも“逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ”と自分に言い聞かせているんです!」と拙い日本語で力説していたことは鮮烈な思い出だし、1999年に公開された韓国製デジタルアニメーション『철인사천왕』が、どことなく『エヴァ』によく似ていたことは、韓流以前の韓国ウォッチャーの間では割と有名な事実である(この作品がTVシリーズ化に至らなかったことはとても残念!)。

 結局、当時の韓国において『エヴァ』に価値を見出していた大人たちとは、アウトサイダーに位置する人たちであり、逆に最も価値を理解できていなかったのが、韓国の業界ヒエラルキー上位でふんぞり返っている連中だった気がする。

 『エヴァンゲリオン 新劇場版』の前回、前々回における韓国内動員数と上映館数を調べてみたところ、次の通り。
・『エヴァンゲリオン新劇場版:序/에반게리온: 서』
→観客動員数7万4千564人、公開館数19館
・『エヴァンゲリオン新劇場版:破/에반게리온: 파』
→観客動員数6万4千955人、公開館数34館
※数字は韓国映画振興委員会のデータベースより抜粋。
 「ありゃ??」
 意外(というか想定内というか)にも、公開当時報道されていたほど大入りという印象の数字ではない。

 しかも『エヴァンゲリオン新劇場版:破/에반게리온: 파』については上映館数が増えた上に、権利価格も前作の二倍だったらしいから、1万人減は厳しかったと思われるが、早々に『エヴァンゲリオン 新劇場版: Q/에반게리온: Q』が公開されるということは、韓国内での興行について何らかの勝算がある、ということなんだろう。
 なにせ、日本映画の続編なんて、いくら話題作でも簡単に公開しないお国柄だからである。

 ちなみに、『エヴァンゲリオン新劇場版:破/에반게리온: 파』で動員数が減った理由として考えられるのは、DVDその他で先に観たファンが多かったこと、『エヴァンゲリオン新劇場版:序/에반게리온: 서』を観て『新劇場版』の内容がTVシリーズと同じと勘違いした客が少なからずいたこともあったと思う。

 数字だけ観れば大した事無いように見えるが、『エヴァ』が元々、韓国において一般的とはいえない内容であり、公開された劇場もCGV系列マイナー枠内公開だったことを考えると、この数字は決して低いものではない、ということなのかもしれない。

 そして、そこからは韓国におけるアニメーションのコアな市場が、大体7万人くらいかな?という見方もできる。
 おそらく、劇場版『エヴァ』シリーズを支えた観客は、熱心な固定ファンや口コミ客が中心だったのではないだろうか。

 日本のアニメーション作品が注目されるたびに湧き起こる「アニメーションはカッコイイ、ススんでいる」そして「やっぱりカネになるかも」というムーブメント。

 この安易な現象に抵抗を感じる人は多いと思うけど、何はともあれ「大人たちが子供たちを差し置いてアニメーションを観に行く」、これが韓国におけるアニメーション市場で必要なことではないかと思うのである。

 だから、今回の『エヴァQ』にしても次の完結編にしても、大学街にあるアート系劇場でロングラン出来ればなぁ~と願うのであった。

EVAQ.jpg

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