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Vol.447 大スターになる予定かも? 『투모로우 모닝』 [韓国カルチャー]

 地下鉄二号線「三成駅」から歩いて数分のところにある「KT&G상상아트홀」で2013年6月1日から9月1日まで上演された『투모로우 모닝』はアメリカのミュージカル『Tomorrow Monning』の韓国版だ。
 戯曲自体は日本でも『トゥモローモーニング』として時折上演されている。

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 内容は至って小粒で地味だが都会的なお話なので、キャストや演出がハマれば、なかなか小粋な舞台、映画ならばニューヨーク派が好みそうな物語である。

 結婚式を控え、不安と希望におののく初婚のカップルと、離婚する中年カップルの心模様を一つの舞台でほぼ同時に描いてゆく。
 ポイントは登場人物たちがきちんとした職業人かつ、それほど若くない、ということであり、結婚や恋愛を妙に理想化したファンタジーで描いていないことである。

 「KT&G」といえば大田市に本拠地にする韓国のタバコメーカー、タバコ業界世界ランクでも上位に入る韓国の有力企業だが、ちょっと前から文化事業に力を注ぐようになって来ていて、ここ7~8年くらい、色々なところで名前を目にするようになった。
 関連施設では弘益大前にある「상상마당」が有名で、ここはインディーズ系映画の製作や配給、ポストプロダクション事業も行っている。

 「KT&G상상아트홀」もまた、そういった文化事業施設の一つだが、ここで上演される演目は興味深いものが多く、最近人気を集めていた演目では、안내상主演、三谷幸喜・作の『너와 함께라면』がある。
 劇場内部は適度な広さで非常に見やすく、チケットもそれほど高くない。
 一部の有名な大劇場よりボッタクリ感は少なく、スターの仕事ぶりを目の前で観ることが出来る。

 主演の一人잭役のダブルキャストとして박상면が起用されており、これはこれで非常に観たかったのだが、今回の目的は若手女優김슬기にあった。
 彼女は1991年生まれ、まだ大学を卒業したばかりだが、在学中の舞台で注目を浴び、장진にスカウトされたことから一躍名を知られるようになった。
 映画はあまり出ておらずメジャー作品としては『무서운 이야기 2』の1エピソードくらい、世間一般の認知度は低いものの、映画業界ではチェックされているようである。

 今回の『투모로우 모닝』は小粒なミュージカルとして熟れており観やすく、歌曲も非常にいい。
 巷では聞かない歌ばかりだが、分かりやすい音律で構成されていて、CDがあったら買ってもいいかな?という感じだ。

 美術もコンパクトで適切であり、地味だがいい仕事をしている。
 黒板を模した壁一面に描かれたチョーク絵が印象的、妙に凝るよりも想像力を促してくれる。
 以前、梨大の삼성홀で観た『뮤지컬 벽을 뚫는 남자』より、総じて親しみやすいミュージカルだった。

 出演する四人も的確な仕事ぶりを見せる。
 歌が上手いのは当たり前、年齢相応の落ち着きがあって戯曲にマッチしたキャスティングだ。
 존演じる이창용がなかなかイイ男だが、演じた役柄が下品な軽いキャラだったので、ちょっと違和感があった。

 肝心の김슬기は존と結婚する캣役として登場するが、その第一印象は「とにかく、歌が上手い!」ということ。
 ややフラットだが高音の伸びが非常にいい上、全然息切れしない。
 パワーで押しまくるような歌い方ではないので、物足りない向きもあるかもしれないが、今回の戯曲にはよく似合うキャラであり歌声だ。
 
 特に美人でもなく背も高くなくで、「普通」のルックスだが、逆にそれが武器になりそうな気がする。
 「韓流女優」という阿呆な特別扱いをしなければ、日本でもいい仕事ができそうな素質を感じた。

 今後、彼女は장진演出の舞台や映画へ出演することになるのだろうけど、機会があれば장진演出ではない作品で是非観たいと思う。

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