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Vol.476 助けあう心 [韓国生活]

 日本嫌いの韓国人であっても、日本のあるものは褒めることがある。
 医療や老人介護、障害者への支援といった社会福祉制度だ。
 実際に年金や保険料を支払っている身からすると、どの程度まで「日本が福祉先進国」なのか分からないが、韓国は福祉の面で日本以上にシンドいのは事実かもしれない。
 近年顕著になっている格差の問題もまた、その印象を強めている。

 では、韓国の人々自身に助け合う精神が全くないかと問えば、決してそういうことはないだろう。
 一方的に賞賛するのは危険だが、巷を観察していれば、昔ならではの互助的なものが、日本よりもまだまだ残っていたりする。

 私がソウルで遭遇したものだと、次のようなことがあった。
 それは、あるシネコンで開場待ちをしていた時だ。
 目の前には中学生だか高校生だか、制服を着た普通の学生たちが数人たむろっており、その中に一人、車椅子に乗った女の子がいた。

 これが日本の映画館だと、スクリーン前方などに設定された専用エリアにお越しいただく、ということになるのだが、韓国の映画館にそういうものはない。
 どうするのかな?と観ていたら、方法論としては当たり前すぎて、逆に意表を突かれてしまった。

 劇場内に入ると、車椅子を出入口付近に置いたまま、男子生徒が女の子を「サッ」とお姫様抱っこして、座席まで上がって行き、「サッ」と座らせたのである。
 帰りも同じ男子学生が彼女を「サッ」と抱え上げると、下に降りて車椅子にこれまた「サッ」と戻し、みんな何事もなかったように仲良く劇場から出て行ったのであった。

 抱える男の子にも、抱えられる女の子にも、彼らを待っている友人たちにも、なんの躊躇も迷いもない。
 ここまでのなにげなさを日本で見たことがなかったので、ちょっと感動してしまった。

 結局は家庭における躾や学校で受ける教育に依存する部分が大きいのかもしれないけど、福祉制度に問題の多い韓国だからこそ、本来あるべき互助の精神が、まだまだ見えない部分で生きているのかな、とも考えてしまうのだった。

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Vol.474 トイレ事情の謎 [韓国生活]

 今だに「韓国のトイレは紙が流せない。使った紙はゴミ箱に捨てるから韓国は汚い」など、日本のブログなどでそれらしく書かれている記事を目にするが、一体これはいつ、韓国のどこでのことなのだろうか?と不思議に思う。

 なぜなら私はそういうトイレを韓国で一度も見たことがないからだ。
 これらの話が二十年前、三十年前のことであるとか、インフラ不備の特定地域の話なら分からないでもないが、そういう情報がいつも書かれていない。

 確かにソウルのど真ん中であっても一部区域は水道事情が今もよろしくなく、「紙を流せないトイレ」が絶対無いとは言わないが、観光客の出入りが多いような場所では、「使った紙をゴミ箱に捨てさせる」トイレの方が逆に希少なのではないだろうか?

 私が初めて韓国を訪れたのは軍事政権の終わり頃、お世辞にもインフラが良いとは言えなかったが、その時ですら、紙が流せない水洗トイレを都市部で見た記憶が無い。
 地方の周辺部はなんとも言えないけど、市庁所在はちゃんと紙が流せる水洗式だったし、そうでなければ汲み取り式だった。
 
 当時、私は京畿道某所にある知人のアパートで世話になったことがあったが(昔はかなりの田舎、今はセレブな住宅街)、風呂は無くてもトイレはちゃんと紙を流すことが出来る水洗式だった。
 そこで何故か「ゴミ箱が便器の横にあるけど、そこに使った紙は捨てないでね」と言われたことがある。
 なぜかと問えば「田舎から来た親戚が泊まった時、ゴミ箱に捨てちゃうので困ったんだよ」

 つまり当時はそういうトイレもあったということなのだが、韓国における「紙を流せない水洗トイレ」絡みの実話は後にも先にもこれっきりである。

 一昔前、韓国におけるトイレ様式は、出入口辺りに大きなロールホルダーが設置され、使用するだけの紙を先に巻き取って、使い残した分は捨てる手順になっており、そのため個室にやたらと大きなゴミ箱があることが多かった。

 韓国のトイレ事情をなじる話は、おそらく古いビルでたまたま、そういったトイレでゴミ箱に誤って捨てられた汚れた紙に遭遇し、「韓国ではケツ拭いたら紙はゴミ箱に捨てるんだぜ、汚ねぇなぁ~」なんて言っているのが元になっているような気がする。

 確かにそういう汚れた紙を目撃することは今も稀にあるが、おそらく年配者か僻地から来た人の勘違いである可能性が高いと思う。

 韓国のトイレ、特に共同で使用するトイレに問題があるとすれば、「汚い」「紙が常備されていない」「洋式が意外と少ない」「男女兼用」などを上げることができるが、いくつかは日本のそれと同じだし、「男女兼用」にしても主に古い施設に見られる現象であって最近はさすがに減っている。

 それよりも韓国で意外と要注意なのは、シャワー式トイレだろう。
 日本製に比べ性能が劣り、あまりメンテナンスをやっていないことがあったりする。
 水漏れを起こしてもほったらかし、壊れていて水もお湯も出ない、なんてまだいい方で、洗浄水が危険なくらい高温だったり、乾燥機をONにすると凄まじい悪臭が吹き出したりと、こっちの方がよほど問題だ。

 ここ十年あまり激増したインテリジェントビルではこうしたシャワートイレに遭遇するが、仕事などで初めて行く方は負傷しないように気をつけて欲しい。

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これは凝り過ぎなトイレの一例。

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Vol.473 便利なスーパーマーケット [韓国生活]

 韓国の生活で日本と少々異なるのは、俗にいう「スーパー」を街場であまり見かけないことだろう。

 もちろん、こういった形態の店舗は韓国にもあるが、昔から一般的にはごく小規模な個人商店(昔の食料品店に近い)か大型ショッピングセンターに二分されている傾向が強い。

 以前は韓国で「スーパー」といえば、この個人の雑貨商店を指したが、最近姿をどんどん消しつつあり、その代わり、爆発的に増殖しているのがコンビニなのだが、日本のそれより「帯に短し襷に長し」で使えないことが多く、近所にコンビニがいかに軒を連ねようと、日本式スーパーに近いお店が無いと不便だったりするのである。

 今の定宿がある場所は江北の古い一角だが、大きめの古いスーパーが近くに二軒あり、さらに2、3キロ程度離れたところにも現代的なスーパーが五、六軒もあるので便利だが、あくまでもこれは偶然、普通はこんなにない。

 ソウルに到着すると、まずはトートバッグを抱えてそれらスーパーに赴き、食料品をまとめ買いすることになるのだけど、大手のマートとは違い、お店の品揃えにはそれなりに特色があるので、好みの商品が欲しい場合はおのずとハシゴすることになる。
 食料品はA店だとか、お酒ならB店、キムチはC店、といった感じだ。

 そんな中、最近ちょっとお気に入りなのが「●●ME plus」というチェーンが展開している「●●ME plus Express」という店舗である。
 店舗数はそれほど多くなく、一等地にあっても微妙な脇道だとか奥の方にあったりするので目立たないが、コンビニとスーパーの長所を合わせたお店になっていて、近くにあるとすこぶる便利だ。
 おそらく、韓国で展開しているスーパーとしては日本のスタイルに一番近く、現代人の生活様式、特に独身者や共稼ぎの人たちを重視、対象としたコンセプトの経営がなされているのではないかと思う。

 この店舗がどこにあるかは、ひとまず同チェーンのホームページを見ていただくしかないが、ソウルに行かれる方は事前に情報を押さえておく価値は十分ある。

 ただし、観光土産を買い揃える目的には向いていないから、そういった場合は某マートなどに行ったほうがいいのは言うまでもない。

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Vol.453 貧乏飯作戦 [韓国生活]

 かつて韓国は食の面において、逆説的な意味で恵まれていた部分もあったと思う。
 料理の種類は少なく、味もワンパターン、朴訥過ぎて、すぐ食べ飽きてしまう反面、価格の割に肉も野菜も良質のものが揃っていたから、外食は概して安くて、そこそこ美味しく、コストパフォーマンスの点ではなかなか優れていたのである。

 だが、法律が改正され、流通が整備され、街の再開発が進み、社会が大量消費時代へと変わり、人々の嗜好が多様性を増した今、食に関してはかなりつまらない国になってしまったようだ。
 しかも、日本では不衛生さや食品の安全性に対する批判が、コピペで山のように出回る始末。

 外国で食事をする以上、日本と同じ安全性を求めること自体が妙な話だし、日本だって、すべからず問題ないということでもないだろう、とは思うのだが、そんなことより一番イヤなのは、個人経営の食堂が激減してチェーン店ばかりになり味が画一化されてしまった上、価格がべらぼうに高くなったことである。

 かつて韓国にいる時、食費と交通費は予算の蚊帳の外といえるくらい安かったわけだが、今ではそうも行かなくなった。
 特に外食費の高騰は、一貧乏訪問者の懐を大きく強打する。

 そんな訳で、最近私が訪韓時に実践しているのが、宿での自炊である。
 自炊といっても、泊まる場所はオフィステルやヴィラではないので、それ用の設備は無い。
 共用スペースに電子レンジ一台、廊下にお湯の出るウォーターサーバーが一台、部屋に冷蔵庫があるだけだ。

 この限られたインフラで、安く済ませるにはどうすべきか?
 そこで思いついたのが韓国における貧乏人の食事を模倣すればよい、ということである。

 やること自体は大したことがない。
 単に、
・レトルトのご飯
・パック入りチョンガクキムチ(총각김치)
・缶詰の牛肉佃煮(장조림)
 をコンビニではなくて街場のスーパーから大量に買い込んで、少しづつ食べるだけのこと。
 キムチは賞味期限切れを狙えば安くなるし、レトルトご飯は、どこのスーパーでもお買い得の定番商品だ。
 チャンチョリムは高いけど、味が濃いので減らない。
 チョンガクキムチは安くないが量が多く、質量があるので食べた気になるし、小分け時の面倒が少ない。

 これらをまとめてW30000-分くらい買い込めば、独り分なら一週間くらい保ったりする。
 そして、韓国のおかずや漬物類は酒のつまみに向いているので、パフォーマンスもいい。
 それらの貧乏食に飽きたらたまに外食、ということになるが、一点豪華主義で予算が廻せるし、それもまた楽しみになるので一石二鳥である。

 人間の成人は案外食べないもので、一日二食、韓国式貧乏メニューでも案外、お腹が空かないものだ。
 また、韓国の外食は元々、量が過剰ということもあるから、少食の方が体は楽だったりする。
 数日もすれば食欲も湧かなくなり、夜はいらない、になったりする。

 韓国に来て、異常に焼肉や参鶏湯を食べたがり、トッポギや屋台料理に病的にこだわる人には向かない節約方法だが、無駄な外食を避けたい人には、オススメなのではないだろうか?
 でも、それだけ韓国の食文化の価値が、私の中で下がって久しい、ということなのかもしれないけど…

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見た目は不気味…


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Vol.450 謹賀新年 [韓国生活]

あけましておめでとうございます。

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某所おでん屋にて。


 蒼色吐息ながら、2013年もなんとかブログを続けることができました。
 読んで頂いている方々に感謝申し上げます。

 今回、ソウルは生暖かい冬で、ちょっとガッカリといったところ。
 いつものように舞台を見終え、恵化洞から宿まで歩いていると、陸橋の下に今までなかったダンボールハウスがあり、鍾路に行けば、小金持ちの若者たちが、呆けたように大騒ぎ。
 そして、そのまわりでは、彼らと年の変わらない兵役中の若者たちが腕を組んでバリケード。
 TVをつければ安倍首相靖国参拝のニュースが、「悪の日帝復活」を象徴するような演出で、執拗に何度も流れています。

 見慣れた韓国的な光景ではあるのですが、改めて、この国が抱える暗い現実をあからさまに見せつけられる、ちょっと陰鬱な年越しでした。


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Vol.448 趣味は身を助ける [韓国生活]

 知り合いのA氏は100%、興味も関心も無かった韓国・ソウルで独り暮らすようになって十数年が経つ。
 時折韓国らしいトラブルに遭遇することもあるが、多忙な職務の他に、地元スポーツ系サークルにも複数所属していて、結構充実した生活を送っているらしい。

 A氏がソウルに住む前は今と違って、日本における韓国の具体的な情報がとにかく少なかった。
 日本の大型書店でも韓国語の学習書なんてロクに並んでいなかったし(チェコ語のテキストと同じくらいしかなかった)、街場の韓国語教室も限られていて、一般の観光情報ですら、いい加減なものばかりだった。
 生の情報を得るには、韓国の知人や韓国滞在経験者に、直接ヒアリングしなければならなかったのである。

 これが例の不自然な「韓流ブーム」を境に一変したのはご承知の通りだが、今は無駄な情報と嘘デタラメが増えすぎて、何がなんだか分からないカオス状態だ。

 A氏自身が今だ韓国語を上達することに消極的なのは、「韓国語が上達しちゃうとこっちの人間関係がいたたまれなくなっちゃう」。
 うーん、韓国に住む日本人ならではのリアルな言葉であるけど、もったいない気もする。
 でも、日本人的視点で眺めると、他者への悪口、陰口、中傷誹謗に恫喝と、無責任な言動ぶりが日常茶飯事に横行する韓国は、確かに繊細な日本人にとって、かなりキツイ社会かもしれない。

 今、ネットで色々見ていると、ちょっと興味深い傾向を見せているものに、在韓日本人による情報発信がある。
 中でも、仕事や学術目的ではない、結婚やら憧れやらで韓国に来た日本人がアップしているものからは、作為的な「韓流ブーム」が遺した負の一端も見えてくる。

 ブーム当初、この手のブログやHPで目立って増えたのは、「カレシが韓国人」とか「韓国人と結婚します」といった、おのろけ自慢系だった。
 それから少し経つと、おのろけは相手(とその家族や親戚)に対する愚痴や不満に変わってゆき、そこから更に時間が経過すると、「離婚しました」「別れました」で始まる、彼や彼女たちの「反韓・嫌韓宣言」だ。

 彼らが親韓的な立場を180°変えた理由としてよくあるのが、毎度おなじみの歴史観の相違に、親戚縁者による反日の嫌がらせ、金銭のたかり、パートナーが暴力を振るう、働かなくて困る、といった黄金パターンである。

 その嘆きや悲しみを読んでいると、韓国についての「リアル」が得にくかったかつての日本において、突然湧きだして蔓延した正体不明の「韓流」というものが、どれだけ多くの日本人を不幸にしたのだろうか、などとも考えてしまう。

 だが、それらとは逆に、ブームと関係なしで韓国に移住した日本人のブログは、もっと前向きで共感できるものが多かったりする。
 本当は辛いことも色々あるのだろうけど、韓国という「異国」の生活を楽しもうという姿勢がある。

 こちら側の人たちは、韓国側の伴侶とその家族が「大アタリ」だったことが一番大きいのだろうけど、安易なブームに惑わされない精神性と知性もあったんだろう。
 韓国に対して、時には皮肉で辛辣な視線になりがちなのはご愛嬌といったところかもしれないが、そこら辺は海外で暮らす異邦人に共通することでもある。

 先のA氏は韓国において良好な人間関係を構築することに成功した人なので、何かあっても所属する組織や友人たちが韓国特有のトラブルから守ってくれる。
 だが、これは真似をしようと思ってできることではない。
 ひとえに本人の適性と才覚もあるが、韓国における「偶然の出会い」という不確定な要素がかなりあるからだ。

 そして、「韓国に憧れて」「韓国にうっとり」ではなくて、「韓国なんかに興味はないけど、普遍的な趣味があった」という事である。
 それが異国で暮らし、人間関係を作る上で大いに役に立っている。

 A氏は、職務経歴とスポーツ、博識雑学がその方便になった訳だが、結局、「趣味は身を助ける」ということなのではないだろうか。

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Vol.435 謎の巨大な“歴史文化公園” [韓国生活]

 오세훈元ソウル市長時代に東大門運動場の撤去が公約、やがて実施され、その跡地に「歴史文化公園」なる謎の施設の建築が始まり、今も続行中であることは日本でも多くの方が目撃、ご存知のことと思う。
 これに伴って地下鉄『東大門運動場』駅は『東大門歴史文化公園』駅へと名前が変わり改装工事も行われて、かつて残っていた数少ないソウルオリンピックの残滓は、ほぼ姿を消した。

 公共施設の取り壊しと建て直しは時代の趨勢だから仕方ないが、どうも気持ち悪いのは「東大門歴史文化公園」というものが、果たして必然性がある施設なのか、ということであり、その目的があやむやでも確実にゼネコン周辺にはお金が沢山入る、ということだろう。
 それは外国人でも明らかに「無駄じゃないの?」と指摘せざるをえないものだ…

…というわけで東大門近辺に行ったついでに前から気になっていた、この謎の施設を覗いてみた。
 まだまだ建設中なのでその全貌は明らかではないが、公園と博物館、そしておそらく何らかのホールを兼ねた建築物らしい。

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 向かいビルの上から観るとそれほど大きく感じなかったが、実際に敷地に足を踏み入れるとかなり広く巨大な施設群で、完成の暁には周りにランニングコースでも設ければ?と思うくらいである。
 だが、その大きさこそ、この施設の怪しさを助長させている。

 中は文字通り公園になっていて、かつて旧・漢陽を囲っていた城壁やら水門やらが掘り起こされ修復されて、歴史的遺構として見学できるようになっているが、歩道の配置が複雑で移動効率が悪い上、無用な昇り降りばかり、気軽に休めるところも少ない。
 これでは疲れた人やお年寄り、体があまり自由でない人にとっては「憩いの場」というよりも「疲れるだけ場所」である。

 福祉の充実がより叫ばれる今の韓国、広大なだけで休むことがロクにできず疲れをもたらすばかりの公園が建設されていることに訪れた多くの人々は不可解さを感じるのではないか。
 どうせ「公園」ならば、全部広場にしてしまった方が良かったのではないだろうか。
 それとも、この微妙に疲れる構造は「韓国が世界に誇る李氏朝鮮の遺構を見学しながら体力増進に努めましょう」という巧妙かつ高尚な韓国エリートたちの企みなのだろうか?

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 建物の幾つかはすでに開館していて定期展示を行なっているが、残念ながらまだまだ仮の展示なので大したことはない。
 現在展示してあるのは写真やパネルを使ったものと、城壁周辺から出土した陶器や道具(正確にいうと生活ゴミのようなもの)であるが、イマイチ貴重な感がないので後生大事に展示している様子には無理があった。

 これまた韓国が世界に誇るデジタル機器を使った展示もあるが(でもプロジェクターにはEPSONと書いてあったりする)、見学者の操作する機材はデカくて重いだけだし、そこから映し出されるものは「別に紙のパネルでいいじゃないか」。
 ショボすぎる展示物に施設案内所のお姉さんもやるせなし、という感じだが、世界に名だたる大都会ソウルでも就業が困難な今、業務に贅沢は言えないからお気の毒である。

 せっかく入れ物は巨大に作ってしまった訳だから、どうせならソウルのあっちこっちに散らばっている博物館と称するものをここにある程度集約すれば、まだマシかもしれないが、龍山のグレートな国立博物館からすれば「こっちに併合しろよ」ということかもしれない。

 敷地内には取り壊された東大門運動場記念館と共にカクテルライトタワーが1基だけ「ちょこん」と残されているが、もう一つ面白いものが野外に展示されていた。
 巨大なカイチ(해태)像である。

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 よく見ると廃棄されたペットボトルで作られており非常に良く出来ている。
 日本でも一時期一部で大人気だったマッコルリのボトルが沢山使われており、こういうのを見ると優れたクリエイターがまだまだ韓国には隠れているんだな、なんてちょっと得した気分になるが、外国のマスコミなんかがこれを取り上げるようになると「我が民族は~」なんていう宣伝をやり始めるんでしょうね。

 だけど、このカイチ像は完全な野ざらし状態。
 「元はゴミなんだから早々に灰塵に帰すべきである」という、これまた高尚な思想の元に企画されたのかもしれないけど、もし環境問題の象徴でもあるのなら、ちゃんと美術館の中とか光化門大通り広場とか、市庁辺りに置いた方がいいんじゃないの?とも思う。
 それの方がより社会的なテーマを汲み取れるというものだ(外国人にも注目されるし)。

 この「東大門歴史文化公園」、完成まで当分掛かりそうなのでいくらフラフラ歩いてみてもその実像をレポート、評価することは現時点ではまだまだ無理だが、それでもやっぱり「他に作るものはなかったの?」という感想にたどり着く。

 選択肢として東大門運動場を立て直すことだって「アリ」だったはずだ。
 なにせ江北の一等地、外国人は沢山来るし、よく知られたソウルの著名な街角でもあるから韓国の行政や企業が大好きな国際的イベント会場に持ってこいだろう。
 江南なんかでやるよりも対外的にはウケそうだし。
 そうすれば国策に沿った、より良いアピールが出来たと思うんですけどね。
(案の定、民間団体がこの『東大門歴史文化公園』を無駄遣いであると最近騒ぎ出しているそうです)

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Vol.433 いつの間にやら大工事中 [韓国生活]

 ソウル、江南の三成駅にある「Coex Mall」。
 ここはおそらく2000年以降もっとも成功した複合商業施設であり、ソウル・江南におけるトレンドでもあった。
 日本で紹介されることも多いので、訪れたことがある方も沢山いると思う。
 手入れが非常に行き届いていていつもピカピカなのは、平壌にそびえ立つ金日成像のように、夜中や早朝に補修・清掃隊が作業をしているからだ。

 この「Coex Mall」は昔からどこかでなにがしの工事が行われていたが、とうとう2013年から大規模な改修工事に入った。
 もっとも、昨年から工事自体は始まっていたので何かあるなとは思っていたのだが、今年になって想像以上の大工事だったことを知り、ちょっと感傷的な気持ちになった。

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地下鉄出入り口付近
向かって左にあった“不動のKFC”も遂に消滅…

 なにせ、「Coex Mall」は私にとり、ソウルにおけるもっとも馴染みの場所であり、十年以上ここのMEGA-BOXに通い詰め、一体何本韓国映画を観たか分からない思い出の場所でもあるからだ。

 「Coex Mall」は「過不足無くなんでも揃うけど物足りない」という大型複合商業施設らしい場所でもあったが、もう一つの特色はやたらと人が集まって来る、ということだろう。
 周辺は基本的に小金持ち以上が住まう街なので、訪れる人の身なりは綺麗だし、変な人もいないので安心して家族で来ることが出来ることもあるが、土日祝日はいやになるくらい人が集中する場所でもあった。

 ここのMEGA-BOXは今では設備の面で新興のシネコンよりかなり見劣りするようになって来ているが、相変わらず休日は凄い人出だったりするので、かつてSKテレコムとCGVが「ここのMEGA-BOXだけ」を買収するとかしないとかやっていたのには、それなりの大きな理由があったわけである。

 今回、江南が縁遠くなったこともあって、本当に久しぶりにやって来たわけだが、工事のスレートが至るところに立てつけられ、今までの面影は無い。
 既に至るところからドッカン、ドッカンという工事音が轟いていたが、完成予想図を見ると生半可な改装どころの騒ぎではなく、今まで天井で覆われていた部分をぶち抜いて、地下から空へと爽やかに吹き抜けた新しい空間構造になるらしい。
 新道林のD-CUBE cityを思わせるデザインだが、ここもあんな風になるのだろうか?

 オープンから13年程度しか経たないにも関わらずこの大工事、そこには色々な思惑と事情があるだろうけど、腰の据わった落ち着く街づくりを目指して欲しいと切に願うのだった。

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MEGA-BOX出入り口正面から前を臨む
右側にCRAZE Burger 、左側奥にマクドナルドがありました

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Vol.432 漢江のほとりにて [韓国生活]

 春の終わり頃。
 新沙洞での用事を終えた帰り、ちょっと時間があったので狎鴎亭で下車し、漢江のほとりに行って見ることにした。

 すでに夜に近い時間帯だったが、この時期の韓国はまだまだ明るく、日本でいえば午後3時くらいの感覚だ。
 韓国語でいうところの「저녁」とは、このことを指すのかもしれない。

 漢江は大きな河なので、昔からソウルの一風景としておなじみではあるが、考えてみれば、川べりまで来たことは殆ど無かった。

 お馴染みの東湖大橋からの風景を歩行者目線で体験したかったので、やや遠回りになるが、論峴路をまっすぐ進んでみた。
 左手側にあるアパート群を横目にしばらく歩くと、東湖大橋を経て河原に至る長く急な階段が現れる。
 それをえっちら、こっちらと登ると橋の上に出るわけだが、そこから河原までがまた遠い。
 ちょっとお年寄りには無理な感じもするが、猛者は自転車担いて橋を渡ったりする。

 東湖大橋の上では車が行き交い、地下鉄三号線が並走している。
 いつもその車両の中から漢江を見ていたわけだが、それが逆なのはとても新鮮な気がした。

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 ながーい道のりを経て、下に降りるとサイクリングロードが広がっている。
 ジョギングしている人も多く、多摩川べりなんかと変わらないが、河幅が広いので印象が全く違う。
 真冬になれば厚い氷が張るので、その時また来ようかな、などと思ったりする。

 サイクリングロードから河面までも結構な高さがある。
 増水するとかなり深くなりそうだ。
 水は意外と澄んでいて、臭くもなく、どういう魚が生息しているんだろうか、と想いをはせる。

 河下へ進むと遊覧船が二隻係留されていて、その先にはレストラン・バー「ON(오엔 레스토랑)」が佇んでいた。
 夜は派手に輝いている「ON」だが、明るい時間帯に来ると、しょぼい艀にすぎない。

 やたらとカチガラスがいるが、住宅地側の原っぱに何十羽もいたので驚いた。
 カチガラスが群生しているのを初めて見た。

 さらに進むと、駐車場と売店がある。
 夏休みでもない平日の夕方にも関わらず、若者たちの群れがいることには驚いた。
 学校や仕事はどうしたのだろう。
 近所の裕福な子弟なので働かなくていいのだろうか。

 植え込みのところにはロバが二頭繋がれていて、草を喰んでいる。
 毛が生え変わる時期なのか、大量の毛玉が点々と転がっていた。

 駐車場の出入り口を潜れば、河原を外れて狎鴎亭から高速ターミナル寄りにある住宅街に出る。
 駅まで10分もかからない。
 以前、知人の車で来た時は随分遠かったような記憶があるが、ニキロもないだろう。
 でも、考えてみればここら辺に来るのは久しぶりだ。

 さあて、ちょっとブラついてみようか…

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Vol.419 四代目はNOKIAだったんだけど… [韓国生活]

 昨年、韓国で使おうと新しい携帯電話機を日本で購入する。
 できれば日本語と韓国語を混在して利用できる機種を探していたので、必然的に今風のスマートフォンとなった。

 でも、Android機は使いたくないしiPhoneも嫌、SamsungやLGであることも嫌だったので選定に困る。
 しかもどの機種も高いので、韓国で契約し直しも考えてたところだった。
 そんな折、NOKIA製SIMフリーのWindows Phoneが日本のお店で捨て値で売られているのを見つけ、早速購入した。

 OS的には一昔前の機種になるが、機能に極端な差はないし、今回の機種はストラップホールド付き、かつバッテリーを自分で交換できるという点が決め手になった。
 デザインが微妙な台形で構成されているのも気に入った。

 早速、余計なパケット通信が発生しないように設定を変更し、Access Point Nameは通常の携帯電話機のものに変更する。
 私は通話とメールしか使わないのでこれで十分だし、あとは必要に応じてWi-Fiに切り替えて使えばいいだけの話。
 韓国の通信会社はAPNを公開しているので日本のように裏技でやる必要もない。

 私はAndroid機やiPhoneばかりに偏重した昨今のスマホブームはイヤだったので、利用を避けていたのだが、替えてみるとやっぱり操作性の点で便利である。
 Windows Phoneは後発OSだけあって、Androidの欠点を補うような仕様になっており使いやすい。
 バッテリーの持ちもよく、日本でほとんど提供されないことは実に勿体無い気がした。

 さっそくショートメールを使ってみるが、日本語と韓国語、英語の切り替えがボタン一つでできる上、複数言語を混在して使えるのは目からウロコである。
 それまで使っていた携帯電話機は韓国語か英語に切り替えるしかなかったので、雲泥の差だ。

 韓国の端末から日本語文章を送ってもらうとトーフ化することもあるのだが、ハングルで送ってもらえばいいだけの話だし、文字化けしない機種は全くしないので、通信会社のシステムか携帯電話機端末の仕様に依るものだろうと思う。

 という訳で、日本でも兼用しようかな、と考えているのだけど、この端末の裏蓋を開けてぎょっとする。
「made in korea」
 いまのご時世仕方ないが、これだけは「イヤァァァ~!」と叫びたい瞬間なのだった。

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